表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/17

05 けんちゃん


 けんちゃんはこの世界の管理者的ポジションの方だそうで、あまり人前には姿を表さないようにしているそうです。


 そんな凄い人が僕なんかにかかりっきりなのはマズいんじゃないのかなと思っていたのですが、


 実は重大な理由があったのです。



 けんちゃんが、僕のお世話をしてくれる理由。


 もちろん、突然異世界召喚されちゃった僕の手助け、でもあったのですが、


 召喚者、というか、僕個人に関する特別な事情がありました。



 この世界に召喚された人は、いくつか特別な力を授かります。


 まず、基本的な能力が三つ。



『収納』:特殊な『空間』に荷物を出し入れすることが出来る能力。


『翻訳』:さまざまな言語を読み書き出来るようになる能力。


『鑑定』:調べたい事柄を深く知ることが出来る能力。



 この三つは召喚者なら誰でも必ず持っているそうですが、能力の強さには個人差があるみたいです。


 そしてそれ以外に、個人によってそれぞれ異なる固有スキルという特別な能力を授かるのです。



「それで、サイリさんの固有スキルについてですが……」


 けんちゃんが、とても真剣な表情をしております。




 固有スキル『鑑定修正』:『鑑定』に成功した事柄を修正することが出来る能力。




「このティーカップを『鑑定』してもらえますか」


『鑑定』すると、目の前にカップの『鑑定』内容が表示されました。


 えーと、特に変わったところのない陶器のティーカップみたいです。



「鑑定した名称に『割れた』と付け加えてみてください」


 ……割れちゃいましたね。



「『割れた』を消してもらえますか」


 元通りです……



「つまり『鑑定』に成功すると、それらのステータスにサイリさんが思い通りに干渉出来ちゃう能力なんです」


 もしかして、モノだけじゃなくてヒトにも影響を与えてしまう能力なのでしょうか。



「ほぼ、無制限みたいです」


 ほぼ?



「僕だけは、この世界の管理者権限があるので影響を受けません」


 ……これってものすごく危ない能力ですよね。



「ひとりで世界征服出来ちゃうくらいの、とんでもない能力だと思います」


 正直、困っちゃいますよ、こんなの。


 なんでも出来ちゃうってことですよね。



「今までにない固有スキルなので能力の限界を正確に把握出来てはいませんが、なんでも出来るってわけでは無いようです」

「例えば、ネズミをドラゴンに変えたりは出来ないけど、ネズミにとんでもない能力を付与出来ちゃうって感じみたいですね」


 えーと、『鑑定』内容の無茶苦茶な改変ではなくて、制限のある修正や付与ってことなのかな。



「正直、僕も完全には理解出来ていないのです」

「とにかく、制限はあるようですが世界征服くらいなら余裕でしょうね」


 やりませんよ、そんな大変そうなこと。



「サイリさんは、なにかやりたいこととかは」


 えーと、この世界でのんびり暮らせれば、他には何もいらないです。



「この世界をあちこち冒険したいとか」


 むしろこの家から出たくないです。


 っていうか、こんなヤバい能力を持った危ない引きこもり男は、迂闊に世の中に関わっちゃ駄目ですよね。



「すてきなお嫁さんがほしいな、とかは」


 人に迷惑をかけたくないので、可能な限り人と関わりたくないです。


 スキルうんぬんじゃなくて、それ以前に僕個人の問題でもあるのですが。



「分かりました」

「この能力の所有者がサイリさんのような穏やかな方で良かったです」

「この世界で静かな暮らしが続けられるよう、僕も出来るだけお手伝いします」


 ありがとうございます。


 この能力は僕なんかの手には余るものなので、極力使わないようにしますね。



「出来れば、能力把握のために練習した方が良いかもしれません」


 ……がんばります。



「ちなみに、サイリさんはパソコンやスマホは得意ですか」


 そこそこ使えます。



 おや、けんちゃんが真っ黒な板みたいなものをどこからか取り出しましたよ。


「これは『Gふなずし』という魔導具で、通信機としても使えます」

「なにか相談ごとがあるときに僕と連絡が取れるよう置いていきますので、いつでも気軽に連絡してくださいね」

「ヘルプメニューがとても充実していますし、いろんなことに使える便利な魔導具ですよ」


 なんだかタブレットみたいですね。



 まずは『Gふなずし』の基本的な操作をけんちゃんから教わりました。


 現在登録されている連絡先は、けんちゃんと、魔導急便のミスキさんという方の2件のみ。



「これからは配達関係は魔導急便のミスキさんにお願いしますね」


 そのミスキさんという方は、僕と関わっても大丈夫なのでしょうか。



「信頼出来る優しい方ですので、配達だけじゃなくて相談相手としてもとても頼りになるお姉さんですよ」


 けんちゃんのお墨付きなら大丈夫みたいですね。



「ミスキさんの他にも紹介したい人たちが大勢いますので、サイリさんさえよろしければ」


 えーと、こちらの世界の人たちに極力迷惑をかけたくないので、能力の制御に慣れるまでは出来るだけ引きこもる方向でいきたいです。



「分かりました」

「相談ごとがありましたら、遠慮なく、ですよ」


 よろしくお願いします。



「それでは、良い異世界生活を」


 ありがとうございます。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ