17 ゆらぎ
異世界のんびり引きこもり暮らし、ゆるりと継続中。
けんちゃんのお知り合いのお宅に、挨拶回りに行ったり。
皆さんとても優しい方々でしたが、ハグはご勘弁なのです。
自分で『転送』で買い出しをするようになってからミスキさんへの注文は減りましたが、時々訪れてくれます。
そして、配達に余裕がある時は、うちでまったりお茶会したり。
はしゃぎすぎた三人娘を圧倒的ハグでおとなしくさせちゃうミスキさんは、実にお母さんなのです。
ツァイシャ女王様にひと言言いたくて、エルサニア城に行ったり。
えーと、結果はご想像通りですよ。
あんな"ザ・女王様"みたいな人に、引きこもり小僧がどうこう出来ませんって。
あと、ハグはご勘弁です、女王様。
それと『七人の戦乙女』って何ですか。
あんな風に美女七人から代わる代わるハグされたら、引きこもり小僧なんてショックで社会復帰出来なくなっちゃいますよ。
本当、ハグだけはご勘弁。
スーミャルシア様との文通は続いております。
女王様ではなくて、まだ王女さまなのです。
言葉は悪いですが王宮内は掃除済みなので、今は王女さまをいじめる不届き者はおりません。
女王への即位は、もっと経験を積んでから、だそうです。
それでも、手紙から察するに、なんと言いますか、王女さまって大変なんだな、と。
そしてなぜか、イリーシャさんとも文通しております。
スーミャルシア様には内緒で、ですって。
手紙に書かれている王宮内での出来事、なぜかおふたりからの報告の内容が微妙に違うのが、面白いのです。
同じお話しでも視点が異なると切り口も変わるのですね。
どちらが真実か、ではなく、どちらも真実なのです。
いずれにしても、僕なんかには王宮暮らしは絶対に無理ですね。
……
「ご無沙汰です、サイリさん」
お久しぶりです、けんちゃん。
「大変でしたね、タリシュネイア王国の件」
……僕のやり方って、間違っていたのでしょうか。
「僕からはひと言だけ」
……
「あれは『鏡の賢者』としてはNG案件ですが、けんちゃんとしてはグッジョブ、です」
……ありがとうございます。
「異世界暮らし、楽しんでくださいね」
根っからの引きこもり気質なので努力とかはしないと思いますが、自分なりに楽しく生きようかな、と。
「やっぱり、お世話してくれる方、探しましょうか」
ご縁があれば、そのうち出会えると思います。
なんたって、初めてのお出かけで王女さまが文通相手になっちゃうくらいですから。
「アランさんやカミスさんと、奥さまの数を競い合う日も近いかも、ですね」
勘弁してくださいよぅ。
……
こんな感じで呑気に暮らしておりますが、僕なりに少しは考えることもあったり。
仕事とお金について、なのです。
カレルさんの遺産、僕の生活パターンだと、ほとんど減りません。
えーと、自慢とかゆとりとかではなく、独り者とはいえ一家の主人がこのままで良いのかなって。
いえ、冒険者のお仕事はちゃんとした仕事じゃないなんて思ってません。
ただ、討伐も採取も、僕の能力を使っちゃうと苦労知らずの単純作業になっちゃうのです。
今更ですが、いわゆるチートですよね、これって。
遺産ありのお気楽境遇とか、チート能力で楽々お仕事とか、
なんだかスッキリしないなって。
つまりは、ちゃんとしたお仕事が出来るよういろいろ足掻くことまでも含めて、引きこもり生活者のお約束なんじゃないのかな、と。
なんだか上手く考えがまとまりません。
やっぱり僕って、おつむがアレなんですかね。
うん、しょうがないよね。
元々アレな僕が異世界ではっちゃけたって、所詮こんなもんですって。
うん、もしかしたら僕には、メイドさんじゃなくて、看護士さんが必要なのかも。
真面目に探してみようかな、アレな僕がコワれないよう見守ってくれる看護士気質な人。
もし僕がこれ以上おかしくなるようなら、暴発して世界をめちゃくちゃにする前にトドメを刺してくれますよね、けんちゃん。
あとがき
おかげさまでナンバリングタイトルも50作目となりました。
世界観の説明や増えすぎた登場人物の紹介などの、まとめ的なお話しとなるはずだったのですが、
登場させた新人さんが、さらに新しい登場人物を増やすような冒険をしちゃうという、
結局いつも通りのアレな感じのお話しとなりました。
つまりは、これからもこんな感じでよろしくお願いします。




