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16 逢瀬


 穏やかに解決って、要するになんとかしてふたりっきりになって、スキルを使わずに誠心誠意説得しなさいってことだよね。


 引きこもりのコミュ障に、無茶振りしすぎでしょ。


 間に人が入るのはこじれるもとだし、そもそもギャラリーいっぱいな場所での話し合いなんて絶対に嫌だよ。


 そのためには……



 まずは、僕の『転送』能力を強化しなきゃ。


 今は、行き先がマーキングした場所のみの『特定転送』だけど、今まで出会った人のイメージをたどっての『自在転送』も、僕なら出来るはず。


 こんなこともあろうかと、『転送』の達人のメイジさんから、いろいろとお話しを聞いてたのですよ。



 イメージ……


 スーミャルシア様の、イメージ……


 ……見えた!



 えーと、豪華な机に向かって、何やら書きものをなさってますね。


 着替え中とかじゃなくて、本当に良かったです。


 おひとりみたいなので、今がチャンス。



 それでは、『転送』!



 こんにちは、スーミャルシア様。


「サイリ様!」


 シーッ、お静かにっ。


 せっかく忍んで来たのに、もし誰か来ちゃったら即『転送』で逃げますからね。



「ごめんなさい……」


 えーと、謝らないでください。


 突然の訪問になっちゃってすみません。


 今日は大事なお話しがあるのです。



「何なりと!」


 まず、王位継承について、です。


 継承なさるかどうかは、スーミャルシア様が御自身で決めること。


 僕だけじゃなく、他の誰にだって口出しする権利はないと思います。


 えーと、誰にも相談するなってことじゃないですよ。


 とにかく、よく考えた上で結論を出してくださいね。



「それでは」


 そう、それなんです。


 頼むから、僕をダシにしないでください。



「だって……」


 だってもあさってもありません。


 だいたいなんですか、命の恩人だから即結婚だなんて。


 僕みたいなヨワヨワ冒険者だと、冒険中に助けられるたびに結婚しなきゃいけなくなっちゃうじゃないですか。



「……」


 今回の解呪の件は、たまたま僕に出来ることをやってみただけなんです。


 この先、国をどうこうなんて、絶対に無理です。



「では、サイリ様はお出来になることならやってくださる、と」


 えーと、出来ないことはちゃんと断りますからね。



「……お友達になってください」


 ……それくらいなら。



「文通しても……」


 僕の家は、たぶん速達鳥は届く、はず……



 ……



 スーミャルシア様と、ゆっくりお話し出来ました。


 いかに解呪のためとはいえ、たくさんの死者を出したのは、僕。


「この罪はふたりで背負いましょう」


 ありがとう、スーミャルシア様。


 優しさと責任感、やっぱり王女さまなのです。


 見た目は愛くるしいやんちゃ娘なんですけどね。



「……」


 ごめんなさい……


 って、人の考えを読まないでくださいよぅ。



「サイリ様は、とっても分かりやすいですよ」


 うわっ、歳下の女の子からイジられちゃってるよ、僕。


 えーと、それじゃ、そろそろ帰りますね。



「……お手紙のお返事、ちゃんとくださいね」


 はい、がんばります。


 もし、手紙が届かない時は、エルサニアのツァイシャ女王様へ連絡願います。


 うん、今回の件は、ダメ押しした女王様にも責任の一端はあると思うのです。



 それでは、さようなら、お姫さま。


「さようなら、サイリ様……」




 ……異世界冒険者サイリの冒険は続く。


 でも、基本的には引きこもりますからね、僕は。



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