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12 イベント


 朝、身支度を済ませて、旅の準備は万端。


 なのですが、さて、今日はこれからどうしようかな。



 街道を南に進めば、ミスキさんたちが暮らしているエルサニア王都。


 北に進むと、アネスという町。


 ミスキさんたちのお宅へご挨拶に伺うなら南に向かうべきなのですが、


 なぜか今は、北の方が妙に気になるのです。



 うーん、どうしよう。


 せっかくだから、野生の勘ならぬ引きこもりの勘を信じて、北へ向かってみましょうか。


 僕の"気配隠蔽"なら、厄介ごとは総スルー出来ますし。


 それでは、今日も楽しく異世界散歩、行きますよ。



 ……



 あー、我ながら甘かったです。


 結局、"盗賊に襲われている馬車"という異世界モノ定番イベントに遭遇しちゃいました。


 もちろん、これを無視してイベントスルーは可能なのですが、心情的に見て見ぬふりが出来るかどうかは別問題だったのです。


 うん、いま僕に問題解決能力があって人助けが出来ちゃうなら、やってみましょうか。



 現状を、ざっくり『鑑定』


 盗賊団は全部で五名、リーダーは"かなり強い"で、その他四名は"そこそこ強い"みたいです。


 四名の中にひとり"御者"っていう人がいますので、御者に化けて馬車で獲物を運んできたってことかも。


 ちなみに、盗賊団は"烈血団"だそうです。


 流血沙汰は嫌だな……



 襲われているのはふたり。


 盗賊団を牽制している騎士さまがひとり。


 立派な箱馬車の中にひとり。


 騎士さまは"かなり強い"なのですが、多勢に無勢で牽制の睨み合いが精一杯のようです。



 それでは、助太刀開始。



"気配隠蔽"したまま近付きまして、と。


 まずは"烈血団"に状態異常を付与、なんですけど、


 えーと、"麻痺"と"睡眠"のどちらにしようかな。


 初めての戦闘ですし、せっかくだから派手にやっちゃいましょうか。



"烈血団"に"目覚めぬ睡眠"を付与!



 よし、五名さま、爆睡にご案内です。


 では"気配隠蔽"を少々緩めて、騎士さまにご挨拶。



「何者!」


 こんにちは、騎士さま。


 サイリという旅の冒険者です。


 盗賊団は眠らせましたけど、騎士さまは大丈夫ですか。



「対象選択可能な、瞬時に効果を発揮する全体睡眠魔法?」

「信じられん……」


 えーと、僕が怪しげな小僧なのは重々承知してますが、まずはこの寝っ転がってるおじさんたちをなんとかしませんか。



「……すまん、恩人に対して無礼千万であったな」

「私はイリーシャ」

「訳あって旅する身の上の騎士」

「では、この者たちの処分は任せてほしい」


 うわっ、ちょっと待ってください、イリーシャさんっ。


 剣で何する気なんですかっ。


 出来れば流血沙汰は勘弁してくださいっ。


 せっかく眠らせたんですから、ここはぜひとも穏便に。



「しかし、このままではまた人を襲うぞ」


 えーと、根性無しでも偽善でも、どう呼ばれても構わないですが、目の前で荒事されちゃうと気絶しちゃいますよ、僕。



「……分かった」

「では、放置して行こう」


 ありがとうございます。



 それでは、"怪力"を付与して、おじさんたちを道の脇に寄せて、と。


 えーと"半日後に目覚める睡眠"を上書きして、


 ついでに時限式の魔物避け結界でも張っておきましょうか。


 あとは盗賊団を回収してくれるよう一筆書いて、あの仮設冒険者ギルドのカウンターにメモを『転送』っと。



 はい、終わりです。


 お待たせしました、イリーシャさん。


 それでは、僕はこれで。



「待ってくれ、サイリ殿」

「まだ何も礼が出来ていない」


 お礼は結構です。


 それでは、良い旅を。



「待て待て、このまま帰しては騎士の名折れ」

「どうしてもと言うのなら腕ずくでも」


 ひどいですよ、恩を仇で返すなんて。



「いや、まだ恩を返していないからこうなる」

「つまりは、大人しく恩返しされるべきなのだ」


 分かりましたよぅ。



 なんだか乱暴な騎士さまです。


 やっぱりこっちの世界って、基本的にはバイオレンスでヒャッハーなノリなんですかね。



 えーと、つまりは、イベント継続中なのです……



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