遊郭日記
とある動画共有サイトのとあるコメント欄にあったものをもとに自分なりの超短編小説を書いてみました。
私の記憶の中ではその人はずっと吉原にいるようだった。若い衆のまだ血色のいい顔に紅をさすその人の横顔を、私は自分の番がくるまでいつも眺めていた。口数こそ少ないが化粧中に話をすることもしばしばあった。彼の落ち着いた調子の声は私の口からするすると言葉を取り出していく。そのうち言ってしまいそうになる。
「私、もう自分でお化粧できるようになったのよ」
今日もどうにか言わずに済むだろう。
小窓の外には場違いな赤ネオンの風車が見えるが、電球が一つ消えかかっているようだった。そのすぐ下にある門を一度くぐれば、広がるのは興と梅毒の街だ。ここで職を得た者は今の仕事を失えば漏れなく露頭に迷うことになる。ろくに力、知識をつけていない女体一つでできることは限られるだろう。そのためにも身請け人を一刻も早く探さなければならない。しかし、その性急なはずの気持ちに足枷をかけるような想いができてしまった。いったいいつからだろうか。きっとあの化粧師に出会った頃からだろう。
いろいろとわかりずらい描写が続いたと思いますがご容赦ください。簡単にまとめておきます。主人公は遊郭に務める遊女の一人で、新米からギリギリ脱却したくらいのキャリアという設定です。彼女は自分の将来を案じて身請け人(大金を払って特定の遊女を自分の妻等の立場におく人)を探そうと焦り始めます。しかし、遊郭の化粧師に淡い恋心を抱いており、後ろ髪を引かれている。といった内容になっていました。