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笑っていいかな?

 ある朝、母と私に別れを告げて父は出て行った。


「いってきます」


「はい。いってらっしゃい」


 平城よりお触れが手紙で家に届いた。源氏が目覚めたと。生き残りをみつけたものは、生死にかかわらず報酬をだすという。父はじっと手紙を真剣に見つめていたが、思えばあれは父が源氏と深いかかわりがあったのだなっとあとからわかった。


「ちょっと旅にでてくる。しばらく帰ってこれない」


「またお仕事?」


「うん。終わったら絶対に帰ってくるから」


「おおげさね。まるでもう会えないみたい」


「ははは」


「ふふふ」


「カナ。いい子で待ってるんだよ」


 父はそういって、私たちの前からいなくなった。




「ええ、諸君。知っての通り、源氏が目覚めた。そこで、この中で源の記憶がおるものはおるか?」


 体育の先生が朝礼代の上でマイクから声をかけていた。


 でかい声で正直頭に響いていい迷惑だ。


「先生! 僕源氏です!」


「ほんとか! だが、源治。お前、姓がゲンジだからとかないよな? ははは」


「そんなことあるに決まってるじゃないですか先生。ははは」


「「はははははは」」


 そのあとゲンジくんは生徒指導室に呼ばれ、こっぴどく怒られることになるとは、このとき彼はつゆほども考えていなかった。


「実はみんなには黙っていたことがある。メグさん。こちらにきてくれないか」


 体育の先生の言われたとおりメグは朝礼台に上った。


 どうしてメグがそこに立つの?


「メグさんはわが校きってのスポーツ界の超エリートの娘さんだ。みなもそれはしっているだろう。そして、メグさんは学校では運動に力を特に力をいれてきた。それはなぜか。今がその時だからだ」


「源頼朝。それが私。メグよ。みんなで一緒に日本を取り返しましょう」


「「「ええええええええええええええええええええ」」」


 校庭中の生徒たちはどよめき湧きたった。


 そんな。メグがどうして源頼朝なんかになってるのよ。


 朝礼は騒然の中、打ち切るように終わった。


 私はメグが校舎に入ったところで声をかけた。


 玄関にはまだ生徒たちはやってきていない。全校生徒は外で話し合っていた。


「メグ。源頼朝ってほんとうなの?」


「いままで黙っててごめんね。カナちゃん」


 どうしよう。私は復讐をするべきなの?


 そのときだった。ピーっと音が鳴り、しゃがれた老人の声が拡声器から聞こえてきた。校長先生だ


「ええ、みなさん。全校生徒は教室に戻らずに校庭に再集結してください。他行の生徒たちも本校に集まります。いいですか。教室ににげないでくださいね」


 私は逃げたい気持ちでいっぱいだった。


「カナちゃん」


 メグは私の手を握り、校庭へと連れていった。




 校庭にでると、他行の生徒たちが神姫バスからおりて、ぞくぞくと校庭内にやってきた。


「みなさん立ち上がって、詰めてください。先生の指示には従いましょう」


 各教室の担任がクラスの先頭に立ち、みんなを並ばせた。


「総勢3000名の大隊になると思われます。東京湾の方では他県の学校も集まる予定です。校長先生」


「よろしい。体育の先生は先に出発して、海を渡る準備をしてください」


「了解しました」


 校長先生はきりっと目を鋭くし、長い白髪をかきあげてオールバックにしてみせた。剣を腰に下げていて、とても嫌な予感がした。


「これより、最終決戦に向かう! みなさんで平家を一緒に滅ぼしましょう!」


 そういって、校長先生は刀を腰から抜いた。


「うおおおおおおおおお……お?」


「東京警察だ。刀を抜刀することは日本国において許されない」


「ちょ、ちょっとまて! お前たたち! 同じ日本人だろ! 平家の味方をするつもりか!」


「元首は血の革命をお望みではない。よって、貴様は直ちに署へとつれていく」


「ばか! はなせ! ちょっと! あ、待って……さるぐつわはやめて、声が出せなくなるから、ふがああふがああ! 何もしゃべれない!」


 校長先生は警察官二人に伴われて、パトカーで護送されたのだった。


「こほん。みんな。ここからは私の指示に従ってもらうけどいいかな?」


「「「いいかなぁあああああああああああ!!」」」


 メグの掛け声にみんなが鼓舞し、校庭内は熱気に包まれた。


 間違ってる。メグを止めなくちゃ。



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