映画鑑賞して、お昼の体育の時間は竹槍訓練
進大高校は桜ヶ丘の上にある。学校に行くには、ちょっとした急こう配で昇るが、けっこういい汗をかく。
「ふぅ」
運動場や体育会館が隣接しており、校門から敷地内に入ることができる。
校舎はえんじ色の時計の建物を中心にして、白い壁の校舎が連なっている。
今日は朝から、体育会館で映画をみることになっていて、みんな楽しみにしていた。
「ええ。それでは本日は誠に大変忙しい中、足を運んでいただいて、ご足労をかけますが、映画鑑賞をはじめようと思います。そして、映画をみたら、感想をあとで提出してもらいます。映画は日本のもののふというものです。みなさんにはなじみのないものでしょうが、第二次世界大戦で日本はそれはもう……」
黒いカーテンで窓を閉めると、映写機が舞台の白いスクリーンに画面を移した。
日本のもののふ。いかにして日本が勝ったか。映画の内容は日本人の強さを勇ましい姿で表していた。みんな目をキラキラして、興奮した感じだった。
映画が終わると窓のカーテンが開いて、日本がいかに素晴らしかったか校長先生が語りだした。
「日本はアジア解放のために戦ったのです」と、
「日本のおかげでアジア諸国も独立できたのですよ」と、
「日本のおかげで世界平和が訪れたのですよ」と、
「日本の教育方針に間違いはないのですよ」と、 延々と聞かされた。
最後に、「奇襲してきた平家の子孫が内閣府を攻め落とした。彼らは過去の栄光にすぎない。あれは落日の武士であり、真の武士たる日本人を汚す存在なのですよ」
そういって、今日の朝の映画鑑賞は終わった。
私は無駄な朝だったなっと思った。
「さあ、お昼ご飯食べよう」
私はメグ達の待つ屋上へとやってきた。
「おっそいじゃんカナちゃん」
「ごめん。感想どうやって書こうか悩んでたら遅れちゃった」
「姉御と俺らでほとんど食べちまったけど、ちゃんと皿にカナの分もとってあるぜ」
「ありがとうマサル」
マサルは茶髪で黒い学ランをきて、首元だけ開けてた。
マサルはかつて私をいじめた主犯的なやつだけど、今ではメグのおかげで友達になれた。最初はあまりにも態度が変わりすぎて怪しんだものだけど、マサルのやさしさは本当なんだと友達付き合いをしていくうちにわかった。だったら、最初なんで私をいじめたんだろうかっと考えてみたけど、よくわからなかった。
「お昼からは体育だから、ちゃんと食べな」
「うん!」
私はメグに元気よくうなずくともぐもぐと食べた。
真上の太陽は少し傾いて、運動をするにはちょうどいい時間だ。
私は真っ白な運動服と黒いスパッツを履いて、竹槍を両手で持っていた。
「ええ、これより一心同心竹槍訓練をはじめるとする。各自槍を構えよ」
「「「はい!」」」
私は先生の掛け声と共に槍を天に突いた。
「準備運動はこれくらいでいいだろう。では、各自二組のペアとなって試合を行う。戦いたいものを皆探すのだ」
私は誰と対戦しようかと悩んでいたら、「俺と勝負してくれよ」とマサルが声をかけてきた。私は、「うん!」と頷いた。
こうして、対戦するのは初めてではないだろうか。私はいつも迷っていたら、メグが対戦してくれたんだけど、今日はメグは男の子と対戦するようだ。
マサルはやる気がないのか。他の子もみんな両手で槍をもっているのに、片手でもっていた。
なめられてる?
私は手に汗握って、槍を構え、一突きした。勝はその攻撃を歩いて避けた。様子をみながら、何度か槍を突いてみたが、一向にマサルは攻撃する気配がなかった。
「遠慮はいらないよ勝! 武士なら本気でかかってきなよ!」
私はいつにもまして熱くなっていた。
「へぇ。カナちゃんが本気になるなんて珍しい」
メグの言うとおりだ。いまの私はどうかしている。これも源の義経の記憶があるせいだろうか。体がすごく熱くなる。さあ、はやくかかってきなよ。マサル。そっちがその気じゃないならその気にさせてあげる。
私は槍を大振りで振り回して、力強く勝の槍を打ち付けた。
ビュンビュンと竹がしなり、乾いた音が槍同士で打ち合った。勝は片目をつぶって辛そうな顔をしていた。
「とどめ!」
私は空中に、槍を軸にして棒高跳びのように飛びあがると、槍を下から一回転させて頭上に構えると、槍を振り下ろした。
「は!」
マサルの竹槍は砂場まで飛んでいって、地面に刺さった。
「勝者! 優気叶!」
先生の掛け声とともに勝負は終わった。
「カナちゃん、今度私と対戦するときは、本気で相手してよ」
「うん! 約束だよ!」
私とメグは固い握手をして、マサルはぽかんと口をあけて私たちを見上げていた。
ごめねマサル。ちょっと弱すぎ。
屋上の昼食では、メグのほかにマサルとあと二人いるんですが、どこで登場させようかと考えたら、何も思い浮かびませんでした(汗)
1/31 マサルの特徴を追加しました。