第2話 二日目 太陽と月
大地の熱が奪われ、大気(水蒸気)との温度差が小さくなっていくと分厚い雲も次第に消えていった。
神は、杖を一振り・・世界の周囲の魔素から生物に必要な大気を創り出す。空中に浮かぶ水蒸気に潜んでいた『大気の精霊』は、そこから飛び出し新たな大気と共に同化しつつ星の隅々まで巡っていく。
更に神は、この世界の為の『太陽』を創り出すが・・さすがに巨大な恒星を創る『神力』は残っていない。そこで、小型の太陽を創りだすと、この世界を周回させた。
北極と南極を基準にしこの世界をめぐる太陽は、周回軌道を0.5°偏心させることで、赤道付近で四季が生み出される。
のちに人族により暦が生み出されるが、太陽の1周を1日、王都の上空を太陽が通過する日を7月1日とした。これから、1年を12等分して1月~12月と決め、1月を30日とした。
当初人族では、7月1日ではなく1月1日とするつもりであったが、エルフ族より・・日(光)の聖地が『群島地帯』にあるので、そこを基準にすべきだと・・神を守護すると言われているエルフ族を無下に出来る訳もなく、忠告を受け入れて半年ずらす事で双方納得した。
これにより、王都では、12月・1月・2月は冬、3月・4月・5月は春、6月・7月・8月は夏、9月・10月・11月は秋となった。
太陽が世界を周回し始めると、最初の一周で異常が現れる。小さな太陽を意識して地表に近づけてしまったようだ。南極点からの周回し始めると、太陽の自転と共に引力の影響が増大し始める。
すぐに引力を無効化したのだが、『穀倉地帯』と『森林地帯』の境界を通過していたため まだ固まりきれていなかった大地は、切り立った山脈とそれにより両側に陥没して出来た巨大湖を出現させてしまう。
山脈の峰は、初期からあった死火山の影響から万年雪を抱き、そこを通行させようとはしなかった。
最初に創世した世界が崩壊したことで、改めて『世界樹』の必要性を実感した神だが・・。
始祖神となる前、従軍した戦争毎に活躍した功績により順調に階級を上げていった。戦争も終わりに近づいてきた頃、軍の頂点と辿り着くと国中の者から『英雄』と称えられ神格化していった。
そして、終戦の日・・勝利を目にしながら何者かに暗殺されてしまう。このまま英雄として国民に崇めれれば、近い将来政敵となる・・政府の首脳はそう考えたらしい。
あっという間に国葬は終わったが・・・国民はそれで納得しなかった。『国の英雄』として新たな宗教が出来、英雄を模した偶像を崇め始めた。
この祈りが死して魂となった『英雄』を『神』へと昇華させ、新たな始祖神の資格である『世界樹』の若木を得る事が出来た。
それで、知性ある生物(主に人族)は前世の知識より争い奪い合う抗争を起こすだろと・・世界樹から生物を生み出さないで・・それでは駄目なのだと、今回は『世界樹』から生物を生み出すつもりのだが・・・
死後、自分の魂はその場をさまよい・・世俗の風に魂を劣化させていた。それでも正気でいられたのは、自分への祈りだったのだが・・・
『そうだ、月を創ってみよう。それを『天界』として魂の管理をさせてみよう。それなら、地表で魂を蝕まれる事も無くなるだろう。』
それでも、もう残存する素材になる物質も魔素もほとんど残っていなかった。仕方ないと、豆粒のような月を創るよりと、張りぼてで内部はスカスカな衛星を作り上げる。
一見まともそうに見える月だが・・赤道周回から始まり、徐々に偏心していくと・・毎日1度傾くと安定して周回していく。月に1度、北極と南極で太陽と交わる時・・太陽の引力が作用を始める。まるで、月が神の意思を理解している様に 水が南極大陸の内海に集められ 北極大陸の地下に水が吸い寄せられた。
太陽と月の動きにより、より広範囲で流れるような大気の流れが 穏やかに世界を快適な物へと変えていった。