第1話 最初の日 大地創世
始祖神は、集まった塵をかき回す。
次第に圧縮された塵は、球形となる。
塵は次第に固まり始める。ドロドロに溶けた魔素と物質の混合体が、中央と地表を循環する粘度のある星となる。
地表面は、混合体がうねる高温の海。
神は、髯の一本を抜き地表へと・・熱により燃え霧となってしまう。
霧は、いく体もの『地の精霊』へとその身を変える。
地の精霊が、地表に降りると熱により再度消滅してしまう。精霊により熱を奪われた地表は、次第に冷めていき大地が生まれ始めた。燃えて霧となった精霊は、吹き上がりながら精霊へと戻り地表へと舞い戻っていった。
神は、手を星にかざす。暖炉で手を温めるように・・そこから生まれた汗が大地に落ち、最初の池が出来る。流石に高温の地表では、池のままというわけにはいかない。
蒸発した汗は、霧となり新たな精霊となる。この精霊は、のちに大気を創る精霊と水の精霊となっていく。
それぞれの精霊は、地表に近づくと地表の熱を奪い、霧となり幾度となく霧散する。次第に温度が下がる地表面。
温度がある程度下がると精霊達は、神の力を使い星の周囲の魔素と物質の塵を水滴に変える。
高温の大地に降り注ぐ雨。大量の雨は、蒸発し雲となる。精霊は、雲を誘導し大地を覆いつくす。
雲に覆われた大地は、大量の雨を降らせ急激にその温度を下げてゆく。雨は集まり、大海、海、湖、池となりこの世界の大地が出来て来た。
この頃から精霊は、大気を好む精霊と水を好む精霊に別れ、最初に生まれた地の精霊達と共にそれぞれ思い思いに大地を作っていく事になる。
冷えた地表の内部では、まだ高温であり地の精霊達が活発に動き回っていた。マグマの様に蠢く魔素と物質の混合体は、地表の薄い場所を突き破って火山となって吹き出す。火山は、地表でも海底でも荒れ狂い、星の表面の姿を幾度なく変更していく。
この時の大地は、ホットプレートのパンケーキと同じ状態になっていた。高温の内部、ある程度温度の下がった地表、沸騰した水、ブヨブヨと不定形な地表に浮かぶ平坦な島がいくつも出来ていた。
神の手は、北極の地に向かい広げた掌を軽く握る。すると、プレートに浮かんだ島々が集まってきた。
北極に集まった島は、緩やかにつながり、その接合部は大小様々な川となっていった。接合部は、極にあっては密になって運河状の川に・・外周部は、緩やかにつながり大河となっていた。
神の手は、次に南極に向かう。
極付近にあった大きな島を三つ、南極に寄せて繋いでいく。
中央を摘み軽く引き上げ離す・・次に指を島の中央に押し当てサラダボール状に成形する。押し当てられた島は、プレートにめり込むと島と島の接合部から内部に水が流れ込んできた。
周りの島より淵の突き出たカルデラ状の湖?いや、それより規模は遥かに大きい・・のちの人は、この湖を『内海』と呼ぶことになる。
神が気がかりだったのは、水不足による信者の減少。豊かな水資源があれば、大きな穀倉地帯と町が出来るだろうと考えていた。
そこで、不在時でも十分に水が蓄えられる様に、水底に魔石を創り貼り付けしまった。すると、一旦貯まった水がみるみる魔石に吸い込まれていった。再度貯まる水・・貯まっている水が流れだして水位が減った時には、魔石が排水するだろうし。逆に水が入り込んで来たなら、吸水するだろう。
次に、この溜池(神から見れば)の周りに島を接合させていき『広大な穀倉地帯』『適度な密度の森林地帯』『多種多様な群島地帯』を創っていく。
『広大な穀倉地帯』は、主に人類を想定した、平坦で水資源からの恩恵を受けた大陸。
その周囲は、険しい山岳で取り囲み 他種族からの侵略が起きにくくしている。
『適度な密度の森林地帯』は、森の恵で生息する住人。獣や獣人が住みやすい場所になっている。
『多種多様な群島地帯』は、大小さまざまで、そこに生息する植物も生物もいずれも同じ物は無いという島々の集まりとした。
『穀倉地帯』と隣接する『森林地帯』と境界中心には、死火山がそびえ立ち その山頂には永遠に溶けないであろう万年雪に覆われている。
『穀倉地帯』と隣接する『群島地帯』には、常時噴煙を出している活火山がその脅威を示している。反対にある死火山より低い火山だが、危険なガスや陥没した地下を流れる溶岩を所々に見ることが出来た。
『内海』を中心に広がる大陸は、三様の成育環境を揃えていた。更にその大陸の外洋にも大小の島を配置してあるので、南極から北極まで、航路で行き来することもできる。
こうして、大陸が出来上がる頃には、大地も水も熱を奪われて冷えていた。