91回目 悪習は常識に非ず
迷宮探索者やこの世にはびこる常識。
それをぶっ壊す。
……ヒロトシが新人を連れて迷宮に入った理由がこれだ。
気合いや根性などで乗り切ろうとする風潮。
それをぶっ壊す。
その為の実例を作っていく。
だから新人を連れていった。
新人達が可哀相だとか、ならば俺がという義務感があったわけではない。
何の事は無い、ヒロトシ自身の野望が理由である。
世間に蔓延る風潮は根強い。
悪いものであればあるほど根強く残る。
そのくせ、良いものは長く続かない。
新たにあらわれても、すぐに破壊されてしまう。
悪い風潮を続けてる連中に。
良い手法などは、悪い手法を使ってる連中にとっては目障りだ。
効率の悪い手段をとってる連中にとって最悪の競争相手だからだ。
効果的な成果をあげるから、利益が高くなる。
結果として、悪い手法を使ってる連中が衰退していく。
それを避ける為に、より良い手段や手法を使ってる連中を潰そうとする。
より良いやり方を壊滅させようとする。
より良い手段を排斥し、効率の悪いものを保護しようとする。
今の探索都市、探索者達がまさにこの状況だった。
より良いやり方の模索すらしない。
効果的な手段など全く考えない。
その為に、魔石の収拾効率が悪く、損害も大きい。
そんな状況を、ヒロトシは実例を作って否定してやろうと思った。
その為の第一陣が、今回迷宮に連れていった連中である。
役立たず、無能の烙印を押された連中だ。
そんなのが稼いで帰ってくる。
そうなれば周りの連中も何らかの反応を示すだろう。
それがどういったものになるのかは分からない。
どの程度の規模になるのかも。
しかし、完全な無視は出来ないはずだ。
当然そういった事は発生した。
新人への猜疑などといったものとして。




