80回目 その日あった事 2
近所の人間で構成されてる探索者集団。
そんなのがあるのも、探索都市ならではなのだろう。
そんな集団だけに、構成員の結束は固い。
家族的といっても良いかもしれない。
だが、これがヒロトシには苦痛でしかなかった。
一人でいるのが好きな者がいる。
そう多くはないが、他の誰かと一緒が嫌いというものが。
苦手なのではない。
嫌いなのだ。
ヒロトシもそういう人間だった。
最低限の挨拶や事務連絡などまで否定はしない。
だが、集団でいるよりは、一人で行動した方がいい。
集団行動が必要なら、出来るだけ効率良く動きたい。
余計な事はせずに。
そういう性質の人間というのは確かにいる。
しかし、それとは真逆の、集団行動こそ最高という連中もいる。
生きていく為に必要な協力。
それを誤解し曲解し、ねじ曲げてる連中だ。
えてしてこういう連中が集団の中核を担ってる。
無駄に一緒にいるのが好きなのだから当然かもしれないが。
そして、たいていの所がそうであるように。
戦略もない、戦術もない。
効率や効果も考えない。
全員一緒に行動して、それで満足する。
成果をあげる事よりも、同じ動きをする事に満足をおぼえる。
そういう連中というのが存在する。
根性論が合い言葉。
ただひたすらに力の限りに行動する。
結果がどうなろうと気にしない。
全滅したって構わない。
全力を出したならそれで良し。
だいたい、そういう考えでいるのがほとんどだ。
だから損害が出る。
それもやたらと多い。
損害の穴埋めに出費が増えるから、利益も確保出来ない。
回避出来たはずの問題や事故が多発していく。
死傷者も多い。
それをどうにかする気もない。
そもそも、智慧がないのかもしれない。
ヒロトシの近所で構成された探索者集団。
それがまさにこういう連中だった。
無駄に暑苦しく、体を動かす事しか考えない。
利益の確保はともかく、せめて損害を出さない事を考えて欲しいのだが。
話に聞く限りではそういうわけでもなさそうだ。
そんな所に入るとなったのだ。
顔をしかめたくもなる。
それもこれも、親のせいである。
なんでもヒロトシの事を頼んできたのだとか。
「どうせ迷宮に入るんだろ。
だったら近所の所に行け」
「他の集団に入れるわけでもないんだろ。
なら、近所のみんなでいいじゃないの」
そんな事を言う父と母を叩きのめしてやりたいと思った。




