78回目 この町が終わって次へ
処分が終わり、ヒロトシは町を見渡す。
あらかた更地にしたので、見晴らしは良い。
「こんなに広かったんだ」
そんな風にも思う。
そんな中で残ってるのは、場末の宿を中心とした一部分。
そこだけが、ここが都市だった頃の名残を留めている。
それ以外には、女を収容した施設だけが存在し。
あとは、建物やら何やらを材料にしたゴーレムがうごめくだけ。
そのゴーレムにも新たな指示を出している。
近くの探索都市へと向かうようにと。
「そこを制圧して、探索者を叩き出していけ」
それだけの単純な指示を出して解き放つ。
この都市の迷宮は制圧した。
今も奥地で魔石確保の為に自動工場が稼働している。
それをヒロトシは他の迷宮にも拡大するつもりだった。
魔石の供給を絶つために。
それがあると、他の者達に対抗手段を与える事になる。
そうならないように、迷宮を封鎖するつもりだった。
その為にゴーレムの軍勢を送り込んだ。
ただ、到着するまで時間がかかるだろう。
迷宮は世界中のあちこちに出現したのだが。
それらは密集してるわけではない。
お隣の迷宮まではそれなりの距離がある。
なので、結果が出るまでは暫く待たねばならない。
もちろん、他の都市を攻略するだけではない。
迷宮の中には、周辺の国を滅ぼした所もある。
そういう所は人が近づけない無人地帯になっている。
そういった所にもゴーレムを向かわせ、制圧にとりかからせていく。
こちらは人がいない分だけまだ楽ではある。
ただし、迷宮からあふれ出した怪物がそこかしこをうろついている。
それが人の接近を阻む原因になっていた。
当然ヒロトシも、それらをかき分けて進む事になる。
そういった様々な方面にゴーレムを投入して、魔石を確保していく。
それで戦力を確保していく。
その他の労働力も。
魔力で様々な機具を作り、それを魔力で動かしている。
おかげで様々な産業を肩代わりさせられる。
それらを作って動かす魔石は、必要不可欠な戦略物資だった。
「ここまで来たんだな」
移動していくゴーレムを見送り。
広々とした町の跡地を見て。
そこに新たな生産機具を設置して、迷宮の中から外に工場を移していく。
そんな作業をこなしながら、ヒロトシは思いだす。
こんな事をしてやろうと決めた日を。
その時ヒロトシは、ごく普通の探索者見習いだった。
家を出て自活と自立を目指すにあたり、当然のように探索者になった。
他に選べる仕事もないので仕方が無い。
それでもヒロトシはそれなりにがんばり、それなりの成果を出していた。
そのつもりでいた。
しかし、周りはそうは思ってなかったようだ。
その日、ヒロトシは仲間と共に迷宮に潜っていた。
そして行ける所まで進み、そこで怪物と遭遇し。
怪物を押しつけられて置いていかれた。
いわゆる捨て駒。
そうされた事でヒロトシは、色々な事を吹っ切った。




