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77回目 チートなしでも存在する転生の利点

 転生によって前世の記憶や経験を受け継ぐ可能性がある。

 そうでなくても、大きな力に目覚める可能性がある。

 その場合、ヒロトシのように大きな脅威になる可能性がある。

 巨大な特殊能力を持ち合わせてなくてもだ。



 ヒロトシがそうであるように、前世の記憶がある。

 それだけでも大きな力になる。

 学んだり体験せねば身につかないもの。

 それを持って生まれてくる。

 これほど大きな利点はない。



 学習や体験・経験。

 これらにどれくらいの時間を費やすものだろうか?

 単に知識や技術を身につけるだけでも、5年や10年といった時間はかかる。

 それだけの時間を短縮出来る。



 ましてこの異世界は前世の日本と違う。

 義務教育機関のようなものはない。

 学習する機会そのものが少ない。

 義務教育にも問題はあるが、それにしたって全く無いよりは良い。



 その機会がこの世界にはない。

 読み書きや計算を学ぶ場所はあるが。

 学ぶのはせいぜいそれくらいだ。



 そこから社会人としての様々な体験や経験。

 ヒロトシも成功したとはいいがたいものがあるが。

 だが、底辺であっても社会の中で生きてきた。

 人生数十年の経験というのは大きい。



 何より考え方。

 哲学や思想…………といったら大げさになるが。

 教養というのも、まだもったいぶり過ぎになる。

 せいぜい、生活の知恵といったところだろう。

 何をやれば効果的か。

 どうすれば上手くやれるか。

 そういった手ほどきのようなものがある。



 それのおかげで、迷宮探索を効果的に行う事が出来た。

 単純な人数や力押しではない。

 得られる魔力とそれを用いた効果的な怪物狩り。

 その方法を考える事が出来た。



 もちろん、怪物の倒し方を前世で身につけたわけではない。

 だが、何をどうすれば効果が大きくなるか。

 それを考えるきっかけは与えてくれた。

 それこそゲームであっても大きな気づきや学びを与えてくれた。



 この世界、当然ながらコンピューターゲームなど存在しない。

 ボードゲームだってほとんど無い。

 あっても、将棋やチェス、双六のようなものだ。

 戦術や戦略を考えるようなものはほとんどない。



 それらを教える書籍もない。

 そもそも、一般庶民が本を読む機会はほとんどない。

 せいぜい、統治者からの御布令を読むくらいだ。

 あとは、偶に出て来る瓦版のようなものに目を通すくらい。

 日本のように、孫子の兵法やら孔子の教えをまとめた本が一般に出回ってるわけではない。



 その為、戦い方や人の動かし方などについての知識がない。

 それらは実際にやってみて体得していくしかない。



 ヒロトシはそれを先んじて知っていた。

 それが大きな差になる。

 この異世界ではそれだけで10年や20年分の体験や経験を先取りする事を意味する。

 特段ヒロトシが優れた才能や素質を持ってるわけではない。

 だが、この知識や体験の先取りは大きな優位性を発揮した。



 同じような事を死んだ連中にもたらすわけにはいかない。

 いずれこの世界に再び転生してきたら厄介だ。

 その時にヒロトシへの報復などに来られたらたまらない。

(冗談じゃない)

 噴飯ものである。

 ヒロトシにはそんな事をされるおぼえは全く無い。



 不当な扱いをしてきた者。

 そうする可能性がある者。

 それを排除してる。

 ただそれだけである。

 それなのにヒロトシに更に報復しようとする。

(逆恨みじゃねえか)

 そうとしか思えない。



 そんな可能性は可能な限り減らしていく。

 その為にヒロトシは転生の可能性を極力潰していった。

 霊魂の消滅という形で。



 吸収して消化していった霊魂は復活しない。

 栄養やエネルギーとして、消化吸収したものに使われる。

 それだけだ。

 復活や転生なども出来やしない。

 転生を阻む手段は、現在これだけしかない。

 他にも何かあるかもしれないが、まだ見つけられてない。



 だからヒロトシは、処分した連中を次々に消化吸収していった。

 そうする事で、今後の危険を減らす為に。

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