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75回目 生き残った者達

「どうなってんのかな」

 全てが終わっていく探索都市。

 その中で唯一の安全を保つ場末。

 そこにある宿と周辺の店などは、襲撃の対象外になっていた。



 事前にヒロトシも通知はしていた。

 暴れるから宿にいろと。

 そこから出たら安全は保障しない。

 そう聞いた場末の宿の常連達はその日に合わせて集合していた。



 また、知り合いで助けたいと思う奴は集めておけ。

 声をかけてもやってこないなら諦めろ…………とも言われている。

 それに従い、場末の宿の常連達は、知人などに声をかけていた。



 彼等もこの町で良い扱いを受けてるわけではない。

 それでも、懇意にしてくれる者はいる。

 それらに声をかけ、念のために集まってもらった。

 これから何かが起こるだろうと思って。

 何があるのかは分からなかったが。



 そして迎えた当日。

 場末の地区を囲むように地面がせり上がった。

 それは壁のように盛り上がり、場末の宿一帯を囲んだ。

 いったい何が、と思った。

 それからすぐに喧噪が聞こえてきた。

 何事かと魔術を使って周辺の様子を伺った。



 見えたのは、そこかしこからあらわれるゴーレム。

 それらが蹂躙する町の者達。

 一切の容赦なくすり潰されていく人々。

 それを見て場末の宿の常連達は理解した。

 これをヒロトシがやってるのを。



 不思議と違和感などはない。

 むしろ、なるほどと納得した。

「やっぱりな」

 誰もがそう思った。



 何があったのかは知らない。

 だが、町の者達への恨みを抱いていた。

 だから反撃に出て、町の連中を黙らせた。

 下手に接触してこないように距離を置くようにさせた。



 だが、それだけで終わるとは思えなかった。

 まだ何かある。

 これだけで終わるわけがない。

 そうも思っていた。

 理由は特にない。

 だが、どうしてもそう思えてならなかった。



 その答え合わせがやってきた。

 今、町で行われてる蹂躙。

 それらはヒロトシがやってる事なのだろう。

 誰もがそう思った。

 他にこんな事をする者が思いつかない。



 もちろん、他の誰かがやらかしてるのかもしれない。

 その可能性だってある。

 ただ、場末の宿にいる者達が思いつくのはヒロトシだけ。

 知ってる範囲でここまでの事をしでかしそうなのはそれだけだ。

 他に思いつかない。



「何時頃終わるんだろ」

 皆の関心はそこにある。

 おそらく徹底的にやる。

 何となくそうだと思えた。

 だとすれば、この町が壊滅するまで続けるだろう。

 それは何時になるのか?



 事が長引くとのも面倒だ。

 食料はある程度備蓄してるが、それほど保つわけではない。

 声をかけた商人や職人も長引けば仕事に響く。

 最悪、生命維持だけなら魔力で食いつなぐ事は出来る。

 それでも、不穏な事はなるべく早く終わってもらいたかった。



 そんな彼等の心配は三日目に終わった。

 周囲を囲んでいた壁が崩れた。

 境目があった部分だけ、道や家が壊れて跡が残る。

 そんな境界線の向こうと再び繋がった。

 そして声を失った。



 建物のほとんどは崩壊していた。

 石畳の道路も。

 代わりにゴーレムが並んでいる。

 勘の良い者は、無くなったものはゴーレムの材料になったと察した。



 そこに町があったという痕跡はほとんどない。

 あるとすれば、探索都市を囲んでいた城壁だけ。

 それが、ほとんど更地になったこの場所に、何かがあった事を示している。



 そんな彼等に前にヒロトシがあらわれる。

 魔力を使って転移してきたのだろう。

 突然あらわれた彼に、誰もが驚く。

「よう」

 短く声をかけるヒロトシに、この町のまともな生き残りの目が集まる。

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