71回目 迷宮奥の自動工場、そこから持ち出した魔力で行うなにか
そして今回は、いつもと違って魔力を大量に持ち出す。
普段は工場の拡張などに使っているのだが。
それらに使ってなお大量に余る魔力はそのまま貯蔵していた。
その魔力の一部を今回は持ち出す。
一部といっても、何億点とあるが。
それを集約して強力な魔石にしたものを幾つか持ち出す。
探索者になって数年。
その間に、怪物退治のやり方を確立した。
追放された者達を確保した。
喧嘩を売ってくる他の探索者を潰してまわった。
介入してきた統治者を叩き潰した。
統治者の女房と娘を奪い、それに種付けを行い、統治者の継承者として育てさせた。
それだけの事をしてなお、ヒロトシは安心などしてなかった。
むしろ、この程度で安全が確保出来るとは思わなかった。
(もっと大きな力で制圧しないと)
常にそう思っていた。
今、その思いをようやく成就する。
迷宮から出るにあたり、ヒロトシは他の探索者も探していった。
魔力を使った探知で居場所を割り出し、そのまま外にむけて転移させる。
探索者達は何が起こったのか分からないまま、強制的に追い出されていった。
そして迷宮の入り口。
そこが物理的に塞がれていく。
それ自体は岩などの普通に存在する物質だ。
特段珍しい材質で出来てるわけではない。
だが、いきなりふさがった事に誰もが驚いた。
その前に強制的に転移させられた、内部に潜っていた探索者も含めて。
「どうなってんだ?」
「俺達、迷宮にいたよな」
「なんだよこれ」
そんな声があちこちから上がる。
だが、彼等が目にする異変はそこに留まらない。
町のそこかしこから地面が隆起した。
地面だけではない、建物も突然壊れていった。
そうした場所で何が起こってるのか。
探索者達は即座に察知した。
「魔力だ!」
どこからともなく溢れてきた魔力。
それらが作用してるのだと。
そして、盛り上がった地面。
正確に言うならば、地面を覆っていた石畳。
舗装に使われていたそれらが形を変えていく。
破壊された建物の瓦礫もだ。
それらは魔力によって形作られていく。
それらは人型をしていた。
地球の知識を持つ者がいたら、それをこう呼んだだろう。
ゴーレムと。
あるいは、人型ロボットだろうか。
人間の形を一応は保ったそれらは、形成が終わると即座に動き出す。
周囲の人間に向けて。
周辺の建物に向けて。
当然それが穏やかなものであるわけがない。
あらわれた人型の異形は、その周辺への破壊活動を開始していった。
突然あらわれた人型の異形。
それらによる破壊や殺人。
それらに合わせるように、都市の出入り口も突然あらわれた岩石で塞がれる。
城壁で取り囲まれた探索都市は、一転して逃げ場のない障壁に覆われてしまった。
その中で、怒号と悲鳴と破壊音が鳴り響き出す。
ヒロトシによる本格的な報復の始まり。
それはこのように始まっていった。




