66回目 統治者への「ざまあ」
ただ、さすがに大げさにやったおかげで、統治者も動き出してきた。
治安機関が動き、事を起こした者を捕らえようとする。
どちらが悪いかどうかなど問題ではない。
揉め事がおこれば面倒、だから起こした者を捕らえる。
理由の如何に問わず。
それに対してヒロトシは、とりあえず今まで通りに自発的な納税を行った。
お目こぼしを貰えるように。
だが、今回はそれが受け入れられる事はなかった。
統治者は治安機関による取り締まりを続行した。
対象にヒロトシを加えたまま。
提供した金が返ってくる事もなかったのに。
なのでヒロトシは統治者の所に殴り込んだ。
それまでの稼いだ魔力を全部持って。
まず治安機関から、という周り道はしない。
統治者の所に直接殴り込んだ方が早いからだ。
治安機関は、それを見れば嫌でもやってくる。
その時に対応すれば良い。
統治者は殴り込みにきたヒロトシに泡を食った。
そんな事してくるはずがないと思っていたからだ。
地位や身分、権威。
そういったものに楯突くとは思わなかった。
ヒロトシからすれば「なんのこっちゃ?」というものだ。
地位や身分や権威や名誉なんぞ、それで動く人間がいるから意味がある。
統治者の場合、それに従う者達という力があるから意味がある。
それを上回る力があらわれれば途端に意味を無くす。
その程度のものだ。
むしろ、今まで不当に金を奪われていた。
面倒が起こる度に金を支払っていた。
治安機関などの動きを封じるためだ。
それがそもそもおかしい。
ヒロトシは不当な扱いに抵抗しただけだ。
原因は全てヒロトシの相手にある。
にも関わらずそれを抑え込もうとする。
理不尽というしかない。
それでも今までは金でおさめていたが。
それが通用しなくなったのだ。
もう我慢する必要も無い。
殴り込むのは手間だ。
魔力も時間も使う。
それが面倒なので今までは避けていた。
しかし、それの効果はもう無いのだ。
なら、支払うという無駄な行為を取り除く。
殴り込んで黙らせる。
黙らなくてもいい。
別にそれで構わない。
その時は統治者とその関係者を皆殺しにでもすれば良い。
少なくとも、わずらわしい事をしてくる輩は消える。
ヒロトシとしてはその方が面倒が無くて良い。
もちろん、統治者の背後にいる国は面倒だが。
それもどうにかする自信はあった。
「────というわけだ」
ここまでの考えを統治者に告げる。
すでに統治者は手足の骨を粉砕されている。
持っていた魔力も奪われている。
警護の者達は全員周囲で屍となっている。
そうした、話し合いがようやく出来る状態の中でヒロトシは宣告していく。
「もうお前を尊重している理由が無い」




