61回目 危険を承知で挑戦した結果
邪魔をする連中はいない。
いても直接関わってこない。
間接的にも関わってこない。
物資の売買などの取引以外での接点はほとんどない。
この理想的な環境を手に入れて、ヒロトシは本当に幸せになれた。
(人間関係ほど邪魔なものはないんだな)
つくづくそう思った。
実際、人間関係がなくなって、わずらわしさが消えた。
仕事上がりの飲み会に付き合う必要がない。
仕事と関係がない交流会などに引きずりこまれる事がない。
やる気が無い遊び(チェスやら運動やら)に巻き込まれることがない。
休みごとになぜか行う野外料理会もない。
とにかく全く必要のない、不要極まりないこれらが消えた。
それだけでもありがたい。
一番ありがたいのは、こういう場で仕事の連絡などをしてくる連中。
これらと絶縁状態になったことだ。
仕事で必要な連絡は、遊びの場でやるものではない。
労働時間中にやるものである。
しかし、そういった考えのない連中ばかりが蔓延っている。
なぜ、仕事の打ち合わせで必要事項の通達をしないのか。
なぜ、趣味や遊びの時間にしか必要事項の通達をしないのか。
それが人間づきあいだ、などとほざいての正当化。
それによってどれだけ損をしたか。
それが嫌でヒロトシは自分での行動を始めた。
どうせ必要事項を伝えてこない。
それでは仕事にならない。
なら、自分で独立してやってしまおうと考えた。
それが上手くいって、今に至る。
当初は単独で迷宮入りしていたので危険も大きかったが。
魔力がある程度溜まってからは問題は消えた。
魔力が新たな魔力を呼び込む。
そんな状態になっていった。
弾みがつくというのだろうか。
ある一定のところまでは力を込める必要があるが。
しかし、勢いがついてくると、労力はそれほど必要なくなる。
自動的に事が動いていく。
実際に全てが自動的になってるわけではないが。
必要な労力は大分減っていった。
そうなると、逆に多人数で行動する必要があるのか、と思えるようになった。
何か有った場合に、援護を頼める人間がいないのは怖い。
しかし、単純に儲けだけを考えれば、少人数での作業の方が効率が良い。
危険も跳ね上がるが、それを抑える工夫があれば、少数の方が都合がいい。
それを考えて、単独での行動を増やしていった。
また、最悪の事態を想定しての、少人数編成も。
それを考えるにあたり、前世で見聞きした知識や経験が役立った。
全てを利用出来たわけではない。
そもそも、ヒロトシはそれほど優れた人物だったわけではない。
知識や経験もそれほど大したものではない。
だが、この世界にはないものがたくさんある。
良きにつけ悪しきにつけ、この異世界よりは進んでいた。
科学知識や技術だけの事では無い。
ものの考え方などもだ。
それらがこの世界に効率的で効果的な手法をもたらした。
それらを用いて新たなやり方を提示していった。
ただ、ヒロトシの所にやってくるような物好きはまずいない。
様々な接触を誰もが避けるようになったからだ。
そんなヒロトシが目を付けたのが、追放をくらうような連中だった。




