59回目 平穏な生活を手に入れるためのただの努力
皆の努力で成り立つ、場末の宿の快適さ。
周辺で発生する問題を皆で解決し、助け合って生きていく。
そんな美談を作り出しながら、日々は過ぎていく。
とはいえ、そんな努力を認めない者達もいる。
それは、快適さを破壊する連中であったり。
やる事なす事全てにケチをつけねば気が済まない連中であったり。
そうした脅威に常にされされているのも場末の宿だ。
正確には、その住人達である。
理不尽な話である。
一般住民には何もしない。
むしろ、極力接触を避けている。
それどころか、問題を起こす連中を率先して片付けている。
それなのに白眼視される事もあるのだからやるせない。
ヒロトシは向けられた敵意や害意を排除しただけである。
実際、盗人や物乞いなどで迷惑かけてくる連中の撃退。
これらをしているだけだ。
加えていうなら、根拠のない悪評を理由に不当な行いを仕掛けてくる連中。
それらへの仕返しをしている。
それらが不当な事扱いされてるのが解せない。
どこが悪いのかサッパリ分からなかった。
(やらなきゃいいのに)
そう思うのだが、理解される事は無い。
ましてそれで町の治安を守ってるのにだ。
ヤクザやマフィアなどを排除し、過ごしやすい場所を作ってるというのに。
それを非難されるのはたまらない。
そんな理不尽な仕打ちが、この日も行われる。
それはヒロトシがミナホと一緒に帰ってから。
そこから更に数日後。
町を歩いてる時である。
いつもの白い目を向けられる。
(あいつらか)
視線を感じて目を向ける。
見知った顔だった。
とはいえ接点はほとんどない。
同業の探索者で、そこそこ売れてる連中…………のはずである。
さほど興味がないので詳しい事は分からないが。
ただ、以前絡んできた事があり。
その時に徹底的に叩き潰した。
町中だったので、さすがに殺しはしなかったが。
以来、なぜか敵対視されている。
(絡んできたのはそっちだろうが)
ヒロトシとしてはそう言うしかない。
ただ、そいつらからすれば、ヒロトシの方に非があるという事なのだろう。
おそらく、悪評を信じてそう思い込んでしまっている。
なぜ信じるのか理解出来ないが。
その思考回路の不可解さはいまもって謎である。
とはいえ、謎であろうがなかろうが、ヒロトシにとって害になる事をした。
ならば相応の報いを受けてもらうしかない。
その時は、町中で突っかかってきた連中を、問答無用で叩きのめした。
骨を砕いて内蔵が破裂したが、回復魔法をかけたので、命を落とす事は無かった。
もっとも、最低限の治療しかしてないので、その後再起不能になったようだが。
それ以上の治療が出来ないように、持ってた魔力も取り上げた。
おかげでそれ以上の治療は出来なかったからだ。
周りにいた者達にも、こいつらを助けるなと言っておいた。
悪さをしてきた連中である。
助けた者も同罪として処分すると。
おかげで、他の者による魔力治療もできなかったようだ。
結果、日常生活もままならなくなったとか。
身から出た錆である。
同情の余地は無い。
その後に、その連中の本部に乗り込んだ。
こういう連中は自分の非を棚上げして喧嘩を売ってくる。
それが分かってるので、仲間を全て叩きのめした。
もちろん、可能な限り魔力を回収し、治療が出来ないようにしていった。
それでも幾らか魔力は蓄えていたようで、大半が社会復帰出来たようだ。
こればかりは仕方ない。
どうしたって抜けや漏れは出て来る。
幸いな事に、その時に告げた警告は耳に残っていたようだ。
ふざけた事をしたら、全員潰すという。
それを受け入れたのか、それからは直接絡んでくる事は無い。
憎しみを込めた目を向けてくるに留まってる。
それはそれで鬱陶しいので、やめさせようかどうか考えている。
今は直接喧嘩を売ってくる者がいないので助かってるが。
しかし、不当な評価というのはそれだけで害になる。
そろそろその対応もしようかと考えてるところだ。




