56回目 情け容赦のなくつけられ・つけていく始末
「そろそろ来るぞ。
覚悟を決めておけ」
魔力を使った探知。
それに反応が来る。
怪物の接近を告げている。
「それとも地雷に向かって走るか?
それでも構わんぞ」
どちらを選ぶかは相手次第。
その自由を奪うつもりはヒロトシにはなかった。
ただ、今回の連中はかなり運が悪いようだった。
迫って来る怪物の反応は大きい。
数は一体だけなのだが。
ぶつかればどうなるかは明白だ。
それでも気にせずヒロトシは成り行きを伺う。
目の前の連中がどういう最後を遂げるか。
それを知る為に。
彼等の人生に奇跡が起こるのを見届けたいのではない。
取り逃しがあると面倒というだけだ。
ここで始末が出来なかったら、相応の対処をせねばならない。
だから、結果をしっかりと見る必要がある。
その結果であるが、それは程なくしてあらわれた。
姿形は、二足歩行をする巨大なトカゲ。
前世の記憶に照らし合わせれば、恐竜と言うべきもの。
それが盗人達の前にあらわれた。
そいつは前肢に比べれば大きく長い後ろ肢で走ってくる。
そのまま盗人達に向かっていき、大きな口で一番前にいたものの頭をくわえた。
それが最初の犠牲者になった。
恐竜はそのまま他の者も倒していく。
体の大きさに比べれば比較的短い。
しかし、人を吹き飛ばすには十分な長さと力強さを持つ前肢。
それの先端についた鉤爪で盗人達を引き裂く。
横を通り過ぎようとする者は、尻尾ではね飛ばす。
人が簡単に壁まではね飛ばされていく。
残り9人になってた盗人達は、そうやって壊滅していった。
抵抗らしい抵抗など全く出来ないままに。
逃げ出す事すらも成功せずに。
そして盗人を片付けた怪物だが。
それは次にヒロトシに向かって来た。
怪物からすれば、ヒロトシも盗人もなんの違いもない。
どちらも等しく餌でしかないのだろう。
当然途中にある地雷によって吹き飛ばされる。
だが、怪物が受けてる傷はそれほど大した事は無い。
人間ならば肉片に変える威力があるのだが。
怪物相手には少々貧弱なようだった。
表面は吹き飛んでいるのだが。
怪物にとっては擦り傷程度でしかないようだった。
そんな怪物を相手に、ヒロトシも躊躇はしない。
持ってる魔力を一気に解放する。
相手の強さは事前に計っている。
出し惜しみをするような相手で無いのは把握していた。
だから、魔力を一気に使っていく。
怪物を上回る強さを得られる程に。
その時点で勝負はついていた。
相手の強さを上回る魔力を使ってるのだ。
勝てないわけがない。
増幅した能力で怪物を粉砕していける。
9人の盗人を瞬時に蹴散らした怪物。
それは呆気ないほど簡単にヒロトシに片付けられていった。
そして、一番の懸念であった盗人達。
その処分も終わり、その場を後にする。
念のために警報などを設置して。
今回の作業はこのあたりで行う事にしている。
ついでに必要なものを作っていく。
今回の迷宮での作業はこれから始まるのだから。
そういった作業が最初にあった。
いつもと違うのはそれだけ。
それが終わってからは、今まで通りにヒロトシは作業をしていた。
ミナホも盗人達については特に尋ねない。
何があったのかは察していたが。
しかし、ヒロトシから説明があるまでは黙っていようと思った。
やるべき作業は他にもあるのだから。
そして作業があらかた終わり。
ヒロトシはそこで説明を始めていった。
盗人達の始末と、そうしている理由を。




