54回目 してきた者達にやらせる事
何だそれは、と連れてこられた者達は思った。
しかし、異を唱える事は出来なかった。
麻痺させられててそれどころではない。
更に、ヒロトシもそれなりの措置をしていく。
逃げ道になる方向。
町に戻る道。
そちらにヒロトシは地雷などを設置していく。
戻れば即座に爆発するように。
人間ならば確実に死ぬくらいの威力に設定していく。
続いて怪物寄せ。
少しでも多くの怪物を引き込むようにしていく。
こちらも効果が大きくなるようにしていく。
「頑張らないと死ぬぞ」
警告をしていく。
とはいえ、応援というわけではない。
助けようという気はこれっぽっちもないからだ。
それが証拠にやり方などを教える事もない。
武器なども渡してない。
そうなるような物は取り上げてある。
盗人としてやってきた連中は徒手空拳でどうにかするしかない。
魔力があればそれでもどうにかなっただろう。
しかし、もちろんそんな便利なものを持ってるわけもない。
10人の盗人達は、対抗手段を全く持ってない。
そんな状態で戦えと言われてる。
死ねと言ってるのに等しい。
そしてヒロトシは死ねばいいと思ってる。
「普通に働いて稼げばいいのに。
わざわざ盗みを働こうってんだから。
しかも、魔力まで持ち出して」
そこまでするなら、迷宮に入ればいい。
それなりに稼げもしただろう。
だが、それをしない。
何を考えてるんだか、と思ってしまう。
「でも、折角だ。
うちにまでやってきたんだ。
是非、迷宮を体験して欲しい。
そして、頑張ってほしい。
迷宮で頑張るってのがどういう事なのか知ってくれ」
言いながら必要な措置を終えていく。
逃げ出す事はほぼ不可能となった。
「そして、命がけで手にしたものを奪おうってのが、どれだけふざけた事なのか。
そんな事をしたらどうなるのか。
身をもって知ってくれ。
そして今後に生かしてくれ」
そう言うのがせめてもの慈悲だった。
哀れみなのかもしれない。
「今後も生きていられるなら」
もし生きていられるなら、次に進める可能性がある。
現実的に考えれば無理だろう。
死ぬ可能性の方が高い。
確実と言って良い。
それでも、生き延びる可能性は皆無ではない。
運良く怪物を一体でも倒し、魔力を得られればだ。
そうなれば、生き残れる可能性はある。
だが、それを達成した者は今まで一人もいない。
先ず間違いなく死ぬ。
例え相手が最弱の昆虫型怪物であってもだ。
強さそのものはともかく、数で圧倒されるのが常だった。
そこから逃げだそうにも、地雷で吹き飛ばされる。
まともな防御手段を用意しておかねば、助かる見込みはない。
当然、そんなもの持ち合わせてる者はいない。
逃げようとすれば確実に吹き飛ぶ。
盗人達にそれを確かめる術は無い。
本当にそんなもんを作ってるのかを。
それでも警戒はする。
もしかしたらという可能性を考えて。
しかし、世の中には何事も例外というものが出て来る。
この時もヒロトシの言葉を無視して逃げだそうという者が出た。
そいつは地雷が設置された方向に向かって走っていった。
そんな事はしてない、はったりだと思って。
どうしてそんな楽天的な事を考えたのかは分からないが。
そいつは絶対にそんなものはないという確信を抱いていた。
全く何の根拠もなく。
こういった者達に限ったものではないだろうが。
とかく自分に都合良く考える傾向が強い。
盗人のような悪事を働く者に接してきたヒロトシが得た感想だ。
何故か知らないが、自分の思った通りに世の中は出来ていると考えている。
それも、自分の都合の良い形に。
なので、危険などは一切考えない。
悪い意味で楽天的なのだ。
だからどんな事をやっても成功すると考える。
そんな不思議な考え方に則って今回も行動したのだろう。
結果は悲惨なものになる。
走って逃げだそうとした者が最初の地雷の感知範囲に入った瞬間。
地雷は当然爆発した。
人間を感知した瞬間に、設置されていた魔術が発動。
魔力の塊が対象の方向に向けて爆発。
一定の方向に向いたそれは、容赦なく走り込んできた者を吹き飛ばした。
一瞬にして盗人の一人は細かな破片になって散らばった。
それを見て盗人達は察した。
本当に逃げ道が塞がれてる事に。
逃げ出せば死ぬようになってる事に。
それに気付いた盗人達は、即座に次の手段に出る。
こういう連中がよくやる手段。
自分に都合の良い事を押しつける脅迫を。




