表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/104

49回目 なにをやってるのか分からない

「親爺、いつも通りにやっておいたぞ」

「おう」

 町の外れにある場末の宿。

 迷宮探索にも、町の出入りにしても不便なので利用者は少ない。

 そのはずなのだが。

 その分安いという事で、食い詰めた連中が流れてくる。

 そんな宿屋だけに、望んでない連中だって流れてくる。

 その対策も必要になる。



 対策を施した事を親爺に告げる。

 設置したヒロトシは、それで仕事が終わりと広間に腰を落ち着ける。

 部屋に戻っても良かったのだが。

 その前に軽く何かを腹にいれたかった。

 対策を設置するためにそれなりに体を動かしたのだ。

 腹を軽くふくらませたくなる。

 そんなヒロトシに親爺は、報酬代わりで適当なものを出していく。



「そんで、どうなの?」

「仕掛けは上手く動いてる。

 成果は地下に放り込んである」

「はいよ」

 目の前におにぎりと厚焼き卵焼きと味噌汁が並ぶ。

 それを持ってきた親爺とのやりとりだ。

 なかなかに不穏な言葉が出てくる。



「どうするんだ?」

「いつも通りに」

「分かった」

 それだけ言葉を交わすと、ヒロトシは飯に手を伸ばしていく。

 必要なやりとりは終わった。

 あとは少しだけ空いてる腹を満たしたい。

 そんなヒロトシに、隣にいるミナホが尋ねる。



「あの、あれって……」

「はいはい、後でね」

「はあ……」

 食事中という事もあり、ヒロトシはミナホの言葉を遮る。

 聞きたい事があるのは分かるが、今は先に飯を片付けたかった。

 ミナホも自分の方が少し不躾だったと思って大人しくする。

(まあ、後でって言ってるし)

 それでミナホは納得していく。



 そして、ヒロトシの腹が膨れて。

 食器も片付いてから、改めてミナホは尋ねる。

「それで、さっきの事ですけど……」

「ああ、分かってる」

 ヒロトシも忘れてはいない。

「まあ、それについてはまた後で。

 迷宮に今度行く時に」

「ええ……」

 なんだかはぐらかされた気がする。

 だが、ミナホはそれでも追求はしなかった。

 ヒロトシがそう言うなら下手に追求出来ない。



 迷宮での指導などを通して何となく分かって来た事だが。

 ヒロトシは何も説明しない事がある。

 それは、まだそれが必要ではないと判断してるからだ。



 教育の際にそうしてるのだが、とりあえずやらせる。

 事前にある程度説明や、やり方を見せてからだが。

 それから実際にやらせ、それから助言を加えていく。

 駄目だしという事ではなく、

「もう少し力抜いて」

「そこはこうして」

というように。



 どちらかというと、説明は後でする。

 必要最低限は最初にやるが。



 それが分かってきたので、ミナホは一旦そこで引いた。

 ヒロトシが後でと言うなら、本当に後で説明がある。

 少なくとも教育においてはそうしてる。

 それ以外の部分でもだ。

 なんだかんだで、行動を共にしてるとそういう場面をよく見る。

 今回もそういうものなのだろうと思った。



(それが分かるくらい、一緒にいるようになったな)

 そんな事を思いながらヒロトシの向かいに座っている。

 そうしてるのが当たり前になって、だいたい一ヶ月になろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 活動、および生活支援をしてくれるとありがたい。
 書くのに専念出来るようになる↓
『執筆時間を与えてくれ/BOOTHでのダウンロード販売』
https://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/483314244.html

【短編】小説ならぬ小話集
https://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/484786823.html
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ