42回目 義務ではない好意、それを活用できるかどうか
「あの、大丈夫なんですか?」
ヒロトシについてくるミナホが尋ねてくる。
そんな彼女の後ろについてくる少年達。
探索者と呼ぶのも躊躇われるような、経験不足の連中。
それらを引き連れて迷宮に入ってもやっていけるのかどうか。
ヒロトシの手腕について、ミナホは疑いをもってない。
既に自分が教えを受けたことで、その恩恵を受けている。
なので、ヒロトシがしくじるとは思えない。
なのだが、それでも不安はある。
今回は人数が多い。
一人一人ならともかく、これだけ大量に教える事が出来るのかどうか。
人数が増えるというのは、手間が増える事にもなる。
それでも上手くやれるのか心配になる。
「何とかやるよ」
ヒロトシの返事は淡々としたものだった。
「駄目なら駄目でかまわないし。
上手くいったら儲けもんだ」
それくらい割り切っている。
そもそもとして、ヒロトシには義務はない。
ものを教えたり、面倒を見てるのは、基本的に好意による。
悪評をたてられ、町の隅においやされてるのがヒロトシだ。
その為、同じように不当な不遇をかこってるものへの同情がある。
行き場を無くしそうな者を助けてるのは、それが理由である。
それで利益があるというわけではない。
むしろ、手間を考えれば持ち出しが多いと言える。
そうして時間を費やしてるのだ。
たしかに新人と共に行動して得た利益はある。
だが、それもヒロトシが単独で行動した場合ほどには稼げてない。
ヒロトシ単独なら、もっと奥へ向かって荒稼ぎする事も出来るのだ。
やり方を教えるという手間をかけるだけ損をしてるとも言える。
そうやって仲間を作っていくというならともかく。
ヒロトシは育てた者達と共に迷宮に向かうわけではない。
育てた者は、同じ場末の宿を拠点にしてる他の探索者に紹介している。
仲介料はそれなりにもらってるが。
それとて、迷宮で稼ぐほどの金額になってるわけではない。
それでも新人にやり方を教えたりしているは、完全な好意だ。
慈善事業と言って良いかもしれない。
そんなヒロトシに、新人をしっかり育てる義務などというものはない。
教えはするが、それを活かすかどうか。
有効活用できるかどうか。
上手くやっていけるかどうかまでは気にしてない。
そのあたりは、教わる側の責任だ。
ヒロトシとてどうしようもない。
駄目なら駄目で、そこまでだったと諦めるしかない。
そういう冷淡な割り切りもヒロトシはしている。
「まあ、あいつらが頑張れるならどうにかなるだろ。
駄目ならそのまま駄目になるだけだ」
「それはそうかもしれないですけど……」
言いたい事は分かる。
だが、ミナホは釈然としなかった。
色々な事が割り切れないでいた。
それでも彼らは迷宮に辿りつき。
乗合馬車に乗り込んでいく。
そのまま迷宮の奥へ。
そうやって先へと進むごとに、新人達は顔を更に青ざめさせていった。
彼らが潜った所を遙かに超えたのだから当然だろう。
早くも彼らは、ついてきた事を後悔しそうになった。




