4回目 居心地の悪い町
久しぶりに戻って来た町。
その雰囲気は、相変わらず最悪だった。
まず、怪物への対策として設置されてる、迷宮入り口の監視所。
砦の機能を持つここに駐留してる見張り。
その中でヒロトシを知る輩が、露骨に敵意のこもった顔をしていく。
悪態を直接ぶつけてくる事はないが。
事実無根の悪評を信じてるのは間違いない。
同じような態度をとる者は、町中でも見かける。
いずれも迷宮探索の関係者がほとんどだ。
同業者だけに、同期の流した悪評を直接聞いた者も多い。
それを信じた者もだ。
そして、ここは迷宮探索者が集まって作られた町である。
全てが迷宮探索を中心に動いてると言ってもよい。
ほぼ全てが同業者と言える。
そうでなくても、関連する事業の従事者ばかりだ。
悪評はそういった者達にも伝わっている。
つまりは、町全体にヒロトシの悪評は伝わっている。
都市と言えるほどの規模を持つこの場所の。
それはもう、生活が不可能と言えるような状態だった。
それが分かってるからこそ、ヒロトシは町に戻ってくるのを躊躇う。
可能な限り迷宮内で活動を続けようとする。
その方がまだしも居心地がいいからだ。
少なくとも、根拠のない悪意にさらされる事はない。
怪物と言う脅威があってもだ。
少なくとも精神的な圧迫はない。
「相変わらずだな……」
毎度の事とはいえ呆れるしかない。
よくぞまあ、嘘八百の出鱈目を信じるものだと。
とはいえ、そんなものを信じて他人をいびって楽しむのが人間である。
ここの連中は、実に人間らしい行動をしてると言える。
とはいえ、ヒロトシも黙ってるわけではない。
やられればそれなりにやり返す。
さすがに最初の頃は我慢をしていたが。
程よく力を備えた頃に、一気に反撃に出た。
以来、直接的な危害はなくなった。
せいぜい、嫌悪感の籠もった顔や目を向けられるくらいだ。
それはそれで腹が立つので、時折やり返してるが。
ただ、それでも以前よりは過ごしやすくはなった。
そんな町の中を進んで、戦利品の売却場所まで向かう。
欲しいものは特にないが、人類の文明の中では金銭が必要だ。
それを手に入れる為に、魔石を売却せねばならない。
もっとも、たいていの場合、足元を見られる。
買い取り額は、他の探索者よりも少なく見積もられる。
それも悪評のせいだ。
それでも、何も手に入らないよりは良い。
換金率は悪くても、何も手に入らないわけではない。
数日ほど町であれこれするくらいの軍資金は手に入る。
どうせ町の中で長く過ごすつもりはない。
何日か骨を休める事が出来ればそれで良い。
それだけなら、金銭もそれほど必要は無い。
そう考えれば、分の悪い買い取り査定の結果もこらえられる。
接客態度の悪さはどうにかしてもらいたいが。
そんな調子で、今日も理由のある不平不満を抱えていく。
こんなはずじゃなかったんだけどと思いながら。