39回目 救えない、救ってはいけないもの
例外ももちろんいる。
生まれついて性格が悪い、人間性が最悪といった者達だ。
そういう者達は例外だ。
厳しくやっていく…………という事もない。
迷宮内で処分する。
生かしておいても、大きな問題を起こすだけだ。
具体例をあげるなら。
犯罪はいうに及ばず。
様々な迷惑行為。
そして、ハラスメント行為。
これらを平気で行うような連中。
そんなのを野放しにするわけにはいかない。
まして、迷宮探索者なのだ。
魔力という万能の効果をもたらす力を手に入れやすい。
それを使って悪さを始める可能性がある。
だから、そうなる前に処分していった。
駄目な奴はどこまで駄目なものだ。
仕事が出来ないとか、物覚えが悪いとかではなく。
人間性や性格、人格の悪さはどうしようもない。
事前に魔力を使って、相手の思考などを読み取るとそこがよく分かる。
それを魔力で修正できないものかと思ったが。
どうにもならなかった。
さすがに魔力もそこまでは万能ではないらしい。
それはもう、霊魂の段階での問題なのではないかと思えるほどだった。
体の問題ではなく、もっと根源的な部分の。
脳みそや神経系という、いってみれば体の一部、肉体の修正ではどうにもならないような。
もっとおく深いところにある、人がまだ手を出せない部分にある問題。
やり方はあるかもしれないが、ヒロトシはそれをどうにかする術を持ち合わせていない。
そういったものは、救いたくても救えなかった。
もとより、救う価値があるのかも分からないが。
なので、大きな問題になる前に処分していった。
幸い、迷宮の中での出来事が外に漏れる事は無い。
それ故に様々な問題も発生するが。
こういう時にはありがたいものだった。
だいたい、そういう輩は今までにも何かしら問題をおこしてるものだ。
その被害を今後も増やさないためにも、今の時点で処分した方がよい。
改心や更正なんてありえない事を求めるよりも効果的だ。
そういった人間性なども含めて、新人教育中で見ていく。
今回はどうだろうと思ったのだが。
幸い、ミナホはそういう人間ではない。
仕事はしっかりこなそうとする。
言いつけは守ろうとする。
やり方をとにかくおぼえようとする。
言ってる事には素直に応じようとする。
分からないところでは考え込んで手が止まるが。
それは当たり前の事だ。
分からないから何も出来ないのだ。
だったら、やり方を伝えればいい。
もっとも、相性というものがある。
何故か苦手とするもの。
やり方をおぼえるのも難しいと感じるもの。
なにがそれなのかは人それぞれだが。
どうしても難なくこなすものと、簡単なのに出来ないものがある。
そういったものにぶつかれば、どうしたって後手に回る。
こればかりは仕方がない事だった。
そういう時は、時間をかけて出来るまでやらせる。
出来るようになるまで待つ。
途中、何度も休みを挟むことになるが。
それでもかまわないと気長に待つ。
また、理解力を上げるための方法もある。
ここでもまた魔力を使わせる。
そうして理解力をあげさせて、やり方を身につけさせる。
ゲーム的にいうなら、経験値を消費して技術や知識を得る、といったところか。
そうした事をさせて、出来る事を増やしていく。
ミナホはそれらを確実にこなしていった。
能力そのものは結構高い。
今までは視力の悪さでそれが発揮できなかったのだろう。
だが、その問題を解消した事で、もてる力を使えるようになってる。
天才や秀才には及ばないが、平均以上の才能を持ってるように思えた。
また、能力を活かす人間性も持ち合わせている。
考え方や性格といった部分だ。
そこの素直さが、能力を上手く活かす事に繋がっている。
その後、5日ほど迷宮内で仕事をして。
そこで二人は町へと戻った。




