37回目 いつもの新人教育における、疲労・休憩・睡眠・怪我・治療対策
新人への教育そのものは変わらない。
基礎的な事から一つずつ教える。
同じ事を何度も繰り返す。
何も言わなくても出来るようになるのを待つ。
そうなってから次の事を教える。
それを迷宮に入りっぱなしで行っていく。
その間の食料は、魔力で賄う。
疲労回復だけでなく、栄養も魔力で得る事が出来るのだ。
念のために一日二日分の食料は持ってくるが。
長期間の滞在を持ち込んだ食料で賄う事は難しい。
そこは割り切って、魔力を使って生きていく。
風呂や洗濯などの衛生状態も同じように処理していく。
魔力を使って汚れなどを洗浄していく。
もちろん、疲労回復も魔力で行う。
これにより、休憩や休息、睡眠をとる必要を無くす。
いつも通りに24時間戦える状態を作り上げる。
それからとにかく戦い続ける。
怪物をおびき寄せ、こちらから探して周り。
見つけ次第殲滅していく。
戦ってないのは、探して歩き回ってる時くらいだ。
かなり厳しい強行軍である。
ブラック企業もかくやというところではないだろうか?
ただ、肉体・精神に負担はない。
疲労は魔力で解消してるので、疲れるという事がない。
連続した行動も、これで可能となっている。
そして、人間は疲れを感じなければ、意外とがんばれる。
その事をヒロトシはこの世界で実感した。
今まで行ってきた幾つもの新人教育でも感じた。
どの新人も基本的には、疲労が抜ければ活動を続けられた。
つまり、魔力で回復を続ければいくらでも活動出来る。
体力・気力といった持久力面の問題をどうにかすれば良い。
あとは、怪我ややる気の問題だ。
体や心が破壊されたらどうにもならない。
そこも注意はしていく。
体の方は、戦闘前に魔力を体にまとわせる。
分かりやすく言えば、バリアとでもなろうか。
防護膜をはりめぐらせる事で、衝撃を吸収する。
受けたダメージを魔力で相殺していく。
外付けのHPのようなものだ。
これを使って、攻撃から体を守らせていく。
肉体が傷ついても、それを治療する事は出来る。
しかし、肉体の治療にはかなりの魔力が必要になる。
急がなければ命に関わるという問題もある。
何よりも、痛い。
当たり前だが、傷を負うと痛いのだ。
その痛みが、やる気の減退につながる。
恐怖感が出るようになる。
慎重さに繋がるなら良いのだが、残念ながらそうはならない。
無駄に引っ込み思案になる可能性の方が高い。
それならば、傷を負わないようにした方が良い。
体の怪我という、命の危険に直結するような事は避ける。
それよりも、事前に魔力でHPを外付けしておいた方が良い。
無駄な消費になる事もあるが、それでも怪我を負うよりは良い。
それに、どんな雑魚相手でも、何十匹も相手にすれば、かすり傷程度の負傷はするものだ。
そんな傷をおうくらいなら、肩代わりする魔力の壁があった方が良い。
実際、何回かに一回くらいで、大きな怪我をする。
その都度大がかりな治療をするのも手間だ。
治療が成功する保障もない。
たいていはどうにかなるが、万が一もある。
ならば、事前に魔力を使っておいた方が良い。
それでも、使った分以上の利益をあげられるのだから。
むずかしいのはやる気の方が。
こちらは魔力による治療もままならない。
最悪、組織崩壊に陥る。
いや、それでもまだマシな方だ。
一番酷い時は、他の者達に殺されかねない。
その可能性が出てきてしまう。
この可能性を考えない者も世の中にはいる。
だが、ヒロトシこの部分にはとにかく気を遣っていた。
これは前世の経験や知識による。
いわゆるブラック企業のようなものは、絶対に避けていた。




