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33回目 鈍くささの理由

「さて」

「はい!」

「これから出発するわけだが」

「はい!」

「その前に確認だ」

「はい!」



 早朝の場末の宿。

 その広間。

 うっすらと朝日が入ってきてるそこで、ヒロトシは確認作業をしていく。

 目の前にいる、ミナホの問題について。



 ミナホは今、ヒロトシの対面に座っている。

 そのミナホの顔を見つめていく。

 下心によるものではない。

 若干そういった気持ちもあるが、それよりももっと重要な理由による。



(とはいえ)

 あらためてまっすぐに見つめると、やはりそれほど優れた容姿でもないなと思ってしまう。

 言い方は悪いが、特に美人という事は無い。

 幸い(というのも失礼だが)、すんごいブスというわけでもない。

 並よりは劣るといったところか。

 その原因は一つ。

(目つきがなあ……)

 それがとにかく気になった。



 上げれば他にも気になるものはある。

 たとえば、鼻を中心に広がるソバカスとか。

 これも見る人によっては減点対象だろう。

 ヒロトシは何とも思わないが。

 ただ、ぱっと見の印象でとにかく大きな減点になるのはそこではない。



 とにかく目つき。

 これが悪い。

 三白眼というのではないのだが。

 にらむように見つめてくる。

 それがとにかく印象を悪くしている。

 加えて、眉間に酔ってる皺。

 それも合わせて、顔立ちの印象が悪くなっている。



 ただ、性格などは悪くはない。

 礼儀はわきまえてる。

 きちんとした作法は知らないようだが、相手を思いやる気持ちを表そうとしている。

 それが言葉や態度にあらわれている。



 言葉の受け答えなども、そう悪いものではない。

 時々反応が遅れる事はあるが、話を無視したりはしない。

 相手の話を聞こうという姿勢は見える。



 ただ、目つきの悪さで損をしている。

 そのせいで第一印象が悪い。

 人によっては、それで交渉などを打ち切る事もあるだろう。

 話してみれば悪い子でないのは分かるのだが。

 それが判明するまでには時間が必要になる。

 その時間や機会を与えられない事もあっただろう。



(もったいない)

 心からそう思う。

 本人の人格や性格、能力以外の部分で損をしてしまってる。



 何よりも、そうした目つきの原因。

 その事が気になった。

(もしかしたら……)

 一つ思い浮かぶ事がある。

 それを解消すれば、連鎖的に他の事も解決するかもしれない。

 そう思って、魔力を使っていく。



「まず、お前の状態を確かめる。

 だから、じっとしていてくれ」

「はい!」

 返事を聞きながらヒロトシは、魔力を使っていく。

 体の健康状態を確かめるものだ。

 識別・鑑定の一種である。

 ただ、診断というほど大げさなものではない。

 もっと分かりやすい部分の調査だ。



 その結果はすぐに出た。

 思った通りである。

「やっぱり……」

 思わず呟いてしまったほどだ。

 その声にミナホも反応する。

 不安そうに、

「あの、なにか……?」

と尋ねてくる。



「うん、ちょっとね」

 曖昧に答えながらヒロトシは、更に魔力を使っていく。

 今度は治療の為に。

 とはいえこれも大げさなものではない。

 ただ、診断結果で出て来た異常をなおすため。

 それに必要な措置をしていく。



 そう思ったヒロトシの意思に反応して、魔力が動いていく。

 願いや思いに沿って、魔力が作用していく。

 それはミナホに向かっていき、問題の部分に修正を施していく。

 体に効果があらわれていく。

 それが終わった途端に、ミナホが目を大きく見開いた。



「あ……あれ?」

 驚きの声。

 それと同時に、顔を左右に振る。

 周りを見渡すように。

 実際、彼女は明るくなっていく宿の中を見ていた。

 驚きながら。

「あれ、あれ……あれ?」

 いったい何がどうなったのか自分でも分かってないようだ。

 そんな彼女にヒロトシが声をかける。



「どう、前より周りがよく見えるかな?」

「はい!」

 元気よく返事をするミナホ。

 それを聞いてヒロトシも笑みを浮かべていく。

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