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32回目 戻ってきたら、また新人

「ただいまー」

 気のない帰宅の挨拶。

 戸をくぐったから一応口にしてるだけ。

 そんな気持ちが良く伝わってくる口調と態度。

 いつも通りにそんな調子で、ヒロトシは場末の宿に戻ってきた。



 そこに親爺が出て来て、広間の方を示される。

 なんだと思って見ると、知らない顔がそこに座っていた。

「新顔?」

「見りゃわかるだろ」

 そう言うと親爺は何も言わずに奥へと引っ込んでいった。

 受付などもすっぽかして。

 そんな親爺の背中を見て、一言漏らす。

「……いや、分からないんだけど、何にも」



 新顔なのは、おそらくそうなのだろう。

 だが、その新顔をどうしろというのか?

 無口で無愛想なのは分かるが、もう少し説明が欲しいものだった。

 もっとも、そこそこ付き合いも長いので、何をどうすればいいのかも大体わかってしまう。

(しょうがねえな)

 ため息を軽く吐いて、広間の方に向かう。



 何時の頃からか、新顔の相手はヒロトシがする事になっている。

 今回もそれを求められてるのだろうと考えて。



 予想通りだったのは、新顔に声をかけてすぐに分かった。

 どういう訳かヒロトシが手助けをするという事になっていた。

 そういう風に話を聞いたと新顔の娘は口にした。

(どんな話をしたのやら)

 謎が色々と増えていく。



 ただ、断るつもりはない。

 どこまで出来るか分からないが協力はするつもりだった。

 今までそうしてきたように。

 そうする理由は特にないのだが。

 しかし、見捨てるのも気が引ける。

 ヒロトシ自身が悪評で不当な扱いを受けてる。

 それと同じような境遇の者なら、見捨てるのも気が引けた。



 まずはそこを確かめていく。

 言ってる事に嘘がないか、魔力を使って確かめながら。

 あとは、親爺の人物鑑定眼を信じるしかない。

 どうやってるのか知らないが、なかなか人を見る目は確かだ。

 少なくとも、どうしょうもないクズをよこしてきた事は無い。

 そんな人間を宿に置いておく事もない。

 そのあたり、実に上手くさばいている。

 今回もそんな親爺の腕前を信じた。



 もう少し理由を付けるなら、目の前にいるのが女だから。

 下心を刺激するその要素があるのも大きい。

(美人ってわけじゃないけど)

 下劣な判断をしつつもだ。



 ただ、話してみて分かったが、性格は悪そうではなかった。

 多少のどんくささというか、引っ込み思案なところは感じるが。

 それも話を聞くうちになるほどと思った。

 あまり仕事を上手くこなせない。

 それで失敗が続いてるせいで自信がなくなった。

 そんな事が予想できた。



(まあ、悪い奴じゃなさそうだし)

 話を聞き、魔術で真偽を確かめてそう思えた。

 それだけで十分である。

 能力などは、それこそ後付でどうとでもなるのだから。

 必要なのは本人の性格・人格と、やる気である。

 これが揃ってるなら、どうにかなる可能性はあった。



「やる気があるなら、明日の朝出発だ」

 いつも通りに声をかける。

「どうする?」

「……お願いします!」

 その声にヒロトシはやる気を感じた。



「それなら、明日出発。

 荷物は今から言うのだけ用意しろ。

 無いなら無いでかまわん」

「はい!」

 元気の良い返事を聞いてから、ヒロトシは必要なものを口にしていった。



 必死になって言ってる事を書き取る宇都木ミナホ。

 そんな彼女に、ヒロトシは最低限必要なものだけ伝えていく。

 そうしながら、彼女の問題について考えていく。

(まあ、だいたい……)

 おおよその当たりは既に付けていた。


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