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31回目 流れ着いた場末の宿

 分け前をもらったミナホは、その足で町の外れへと向かっていく。

 それは、集団を抜ける最後の瞬間にリーダーから教えてもらった事だった。

「噂でしかないけど」

 そう前置きをして教えてくれたのは、この都市にあるとある宿だった。

「行き場の無かった連中が頑張ってるって聞いた事がある。

 もしこの先のあてがないなら、そこに行ってみたらどうだ」

 彼の最後の温情であり、餞別だった。



 他に行き場のないミナホは、疑いながらもその話にしたがった。

 場所を聞いて、そちらに向かっていく。

 迷宮からも町の出入り口からも遠い所にある宿。

 場末という言葉がふさわしいそこには、様々な人間が集まってるという。



 嘘か本当か分からないが、今のミナホはそれを信じるしかなかった。

 帰る場所などないのだから。



 ミナホは孤児というわけではない。

 生まれはこの都市から離れたとある農村だ。

 そこで生まれて育ってきた。

 ただ、そこに何時までもいられるわけでもなかった。



 嫁のもらい手も、奉公先も見つからない4女である。

 家で冷や飯くらいになれるならまだ良いが。

 色町に放り込まれる可能性の方が高かった。

 この世界、持てあまし気味の娘の扱いなどそういったものである。

 あるいは、迷宮都市に行って探索者になるか。

 それくらいしか選択肢がない。



 そんな中でミナホは探索者になる事を選んだ。

 自分で稼げる可能性に賭けた。

 奉公先を見つけても、食い扶持だけ与えられて終わる。

 自分の容姿では色町も難しい。

 それよりは、探索者の方がまだ未来があるように思えた。



 しかし、現実は無情である。

 迷宮都市までは何とかこれたのだが。

 そこから先は上手くいかなかった。

 動きの悪さやのろさが足を引っ張る。

 幾つかの集団に拾ってもらったが、長続きはしなかった。



 そして今、またも解雇・追放を食らった。

 新人を募集してる集団の中で、最後に残っていたところだ。

 そこを逃せば、しばらくは募集もかからない。

 そういう時期はもう終わってる。

 あとはどこかで欠員が出るのを待つしかない。

 それでも果たして採用されるかどうか。



 ミナホにとって、リーダーが最後に教えてくれた場末の宿。

 それは最後の可能性だった。

 単なる噂かもしれない。

 あるいは、もっと酷い目にあうかもしれない。

 胡乱な人間の巣窟で、そこで悲惨な目にあうかもしれない。

 そういう不安はある。

 それでも、もう他にすがれる者もない。

 あとは物乞いになるくらいしか道はないのだ。



 そんな追い込まれたミナホにとって、そこは最後の希望だった。

 嘘かも知れない情報を信じるしかない。



 幸いにして、その宿は確かにあった。

 本当に場末で、外から来たミナホですら疑問を抱くほどだ。

 迷宮には遠くて通うのに不便。

 町に出入りする商人などが寝泊まりするのもだ。

 そんな場所にある宿屋。

 いったい誰が使うのかと疑問を抱く。

 それでも、

(もうここしか……)

 頼れるものはない。



 大きく息を吸って、それから扉へと向かう。

 大きくて重いが、意外としっかりと動くそれを開いて中に。

 すぐそこにある受付には誰もおらず。

 入り口からすぐに入れる広間の方から人が出て来た。

 無愛想な、そこそこ歳の行ってる男だ。



「あの……」

 どう声をかけたものか悩む。

 そうしてる間に男は近寄って来て、

「なんだ?」

 無愛想な声を出してくる。



 それがこの宿の主である親爺なのを知るのはもう少しあと。

 今はドスのきいた声にただ身を震わせてしまっていた。

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