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30回目 追放された者

「すまないが、君とはここまでだ。

 拒否はきかない、受け入れてもらうぞ」

「はい……」

 迷宮の出入り口付近。

 探索者達が出入りするその場所で、それなりによくある事が起こってる。

 仲間の解雇、追放。

 それが、とある探索者集団で行われていた。



 しているのは、それなりに長続きしてる探索者集団。

 規模は10人くらいで、比較的大きな方ではある。

 迷宮最深部到達を競うほどの能力はないが。

 それでも、そこそこの深さまで進み、相応の成果をあげている。



 そのリーダーが、所属していた一人に宣言をする。

 そのどちらもが辛そうな顔をしている。

 実際、どちらも良い気分ではない。



 追放宣言をされてる方は、望んでそうしてるわけではない。

 出来ればこのまま留まりたい。

 そう考えている。



 追放する方もそれは同じだ。

 出来れば自分の所で頑張ってもらいたい。

 今後も上手くやっていきたい。

 そう考えている。



 だが、そうしていく為に必要なものが決定的に欠けていた。

 能力である。

 これまでの探索で、追放される方はあまり活躍が出来なかった。

 やり方は教えてもらったし、それをこなそうとはしていたのだが。

 どうしても上手く出来ない。

 何かが一歩劣ってしまう。



 それは反応であったり、動きであったり。

 様々だ。

 返事や行動が一歩遅れる。

 動きが何かしら遅れる。

 それが常につきまとう。



 日常生活ではそれほど困る事は無いだろう。

 だが、命がけの迷宮では問題になる。

 そういった事が、最悪の事態を引き起こすきっかけになりかねない。

 それが追放の理由となった。



 可哀想とはこの場にいる誰もが思っていた。

 しかし、それを理由に彼女を留めたらどうなるか。

 最悪の事態になりかねない。



 一人のちょっとしたシクジリ。

 それが最悪の結果になる事もある。

 迷宮では、これが考えすぎの懸念では終わらない。

 本当にちょっとした失敗で全滅・壊滅に陥った者達もいる。

 そうならないように、失敗の可能性を少しでも減らす。

 そうした事も必要だった。



 それでも追放で済ませるのはまだ良い方だ。

 最悪の場合、迷宮の中で処分。

 あるいは慰み物。

 そんな事をする者達だっているのだ。

 それに比べれば、町に戻ってきてから追放というのは、まだしも温情がある方である。



 その事は追放される方も聞いていた。

 だから、追い出される事に不満はない。

 それで済んでるだけでもありがたいと思えた。

 それでも辛くはあるのだが。



「すまないが、聞き入れてもらうぞ。

 今回の探索で得た報酬はもちろん渡す。

 それで俺達と君は最後だ」

「…………はい」

 辛い表情でリーダーは告げる。

 それを消え入りそうな声で、追放される者も受け入れる。



「じゃあな、ミナホ」

「はい、今までありがとうございました」

 リーダーの声に頭を下げる。

 そして、分け前をもらう。

 宇都木ミナホのこの探索集団の活動は、それで終わった。


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