3回目 生き残る為に大切なこと
前世でも、小学校や中学校では、体力が優れてる者が人気があった。
また、不良っぽい行動や態度がモテた。
人間に残る野生の本能なのだろう。
乱暴者でもいい、むしろその方がいい、強い方が良い。
振り返ってみると、そういう考えがどこかにあったように思える。
そんな日本よりも更に肉体的な強さが意味を持つ世界だ。
乱暴なバンカラがモテる。
それが尊重される。
慎重さがバカにされるくらいに。
そんな世界において、ヒロトシの考えは異質なものだった。
世間の常識に真っ向から反していた。
無理や無茶な事をするよりは、退くことを旨とする。
勇気を出して一歩出るくらいなら、回れ右してひたすら逃げる。
知らない所やあぶない所には立ち寄らない。
出向くにしても、細心の注意をはらって行動する。
ヒロトシからすれば常識と思える事だった。
だが、これらが全く理解されなかった。
むしろ、無駄で無意味とすら言われた。
更には部活的な集団行動。
意味も理由もなく、ただひたすらに一緒に行動する。
役割分担もなく、たた一丸になって突っ込む。
意味もないのに、ただ一緒に飲み食いをする。
それらがヒロトシには理解が出来なかった。
こういった事が他の者達からの顰蹙につながり。
そのまま離反という形をとった。
ただ、それはヒロトシにとっては幸いだった。
同期の連中はその後、仲良く迷宮に突撃し。
仲良く全員で致命的な状況に陥った。
詳しい事はヒロトシも分からないが。
どうやら大量の怪物の群の中に飛び込んでしまったらしい。
その結果、同期の連中は見事に壊滅。
大半が死亡し、生き残りも致命傷を負った。
町にたどりついて暫くして生き残りも死亡。
残った者も、再起不能な重傷を負ってしまった。
まともに活動出来るのは、ほんの一握りでしかないという。
その話を聞いたとき、ヒロトシは安堵をおぼえた。
もし同期の連中と行動を共にし続けていたらどうなったか。
間違いなくヒロトシも死傷者の中に入っていただろう。
再起不能だったかもしれない。
まともに活動を続けられてた可能性は低い。
そうならずに安心した。
しかし、残念ながら事はそれでは終わらない。
生き残った連中はなぜかヒロトシに恨みを抱くようになった。
死傷者などの親兄弟なども。
彼等に言わせれば、
「あいつらが死んだり苦しんだりしてるのに、なんでヒロトシなんかがピンピンしてるんだ」
という事なのだそうだ。
理不尽極まる話だ。
そんなわけでヒロトシは都市の者達とそんなに仲が良くない。
はっきりと言えば悪い。
もちろん、都市の全員とではないが。
しかし、顔を合わせる多くの者達からの印象は悪い。
どうも、同期の連中の関係者が有ること無いこと言いふらしてるらしい。
実際にはそうではない。
無い事無い事を言いふらしている。
ヒロトシが実際にしでかした事など一切言ってない。
何の問題もないヒロトシが、しでかすような何かを起こせるわけがない。
なので、根も葉もない悪評だけが吹聴されていた
困った事に、人間というのは悪評を信じるものである。
更に、それを理由に人を痛め付けるのが大好きな生き物だ。
そんな経緯もあり、ヒロトシの現状はかなり悪くなっている。
町にいたくない理由になるほどに。