25回目 割にあわない、強力な怪物との戦い
「どうだ?」
巨人を倒した直後。
ヒロトシは新人に声をかける。
「魔力はどんだけ残ってる?」
「まだ大丈夫です。
でも、かなり使いました」
そう言って新人は肩をすくめる。
ボス級怪物の強さにあわせて、使う魔力の量はあらかじめ指示されていた。
いつも相手してる敵の時よりも多く。
10倍は使えと。
実際、10倍くらい強い相手だ。
能力強化に必要な魔力も10倍は必要になる。
単純に思えるかもしれないがそんなものだ。
10倍の強さの敵が相手なら、こちらもいつもの10倍強くならねばならない。
その為に必要な魔力なども10倍になる。
あまりにも単純な話だが、世の中そんなものである。
それだけ魔力を使ったから勝てたのだ。
出し惜しみせず、一気に畳みかける。
それがヒロトシの方針だ。
おかげで使った魔力は500点ほど。
二人合わせて1000点だ。
それに対して、得られた成果は少ない。
倒した巨人が残した魔石。
そこに込められてる魔力は500点分。
消費した魔力の半分にしかならない。
もっともこれはかなり余裕をみて魔力を使ったからだ。
使い方もかなり大雑把である。
使いどころを考えていけば、この半分以下の消費で片付ける事も出来ただろう。
そうしなかったのは、ヒロトシの指示である。
出し惜しみしない、もったいぶらない。
やるなら一気に倒す。
それがヒロトシの方針だ。
それでもボス級の怪物を相手にしたら赤字になる。
楽に倒す為には仕方が無いが、損をしてしまう。
だが、あえてそれを覚悟で、それを承知で魔力を使う。
理由は簡単。
確実に仕留めるためだ。
ボス級の怪物は強い。
出し惜しみなどしてられないくらい強い。
そうそう簡単に勝てるものではない。
魔力の消費を抑えてしまえば、勝利もギリギリのものになる。
そんな危険はおかせない。
なので、ボス級の怪物は利益を度外視して倒す。
危険を排除し、安全を確保して倒す。
言い換えれば次のようになる。
ボスとの戦いで利益は求めない。
利益は通常の怪物を倒して得る。
そちらを基本とする。
だから、ボスは持ち出しになる。
それを覚悟する。
他の探索者達がやってるように、効率的な倒し方など考えない。
ギリギリの勝負になるそんな事はしない。
やるからには一気に倒す。
そして、危険を排除する。
そうしてから、安全に倒せる雑魚で魔力を稼ぐ。
そうした割り切りでヒロトシはやってきている。
実際、その方が稼げてる。
ボスを倒して得られる魔力は、赤字を少しでも解消するため。
そう考えていた。
「割に合わないですね」
新人が率直な感想を漏らす。
確かに楽に倒す事は出来た。
だが、赤字を考えると喜んでいられない。
「そうだな」
ヒロトシも否定はしなかった。
実際そうなのだから。
だが、これで良いと考えていた。
新人が「割に合わない」と言う。
それがしっかりと分かってるようで何よりだった。
(これで大物を狙ったりしなくなるかな)
そうなってくれればありがたい。




