24回目 ボス戦
あらわれた強力な怪物。
他の有象無象と区別する為に、あえてボスと呼ぼう。
そのボスがヒロトシ達へと向かってくる。
その強さは折り紙付きで、単純な能力ならば雑魚の10倍はある。
耐久力はその更に10倍。
簡単に倒せるものではない。
しかし、ヒロトシは手にした魔力を使って立ち向かう。
あらわれたのは、人型。
二足歩行で歩く巨人といったところ。
ただし、その形は歪なものだ。
背丈は5メートルほど。
だが、頭の大きさが2メートルほどもある。
胴体や手足はその分短い。
全体の構成は人型と言えるが、あくまで形が似てるだけ。
似てるだけの別物だ。
それがヒロトシ達に顔を向けてくる。
ニタリ、と薄気味の悪い笑みを浮かべて。
ボスからすれば、ヒロトシ達などとるに足らない存在なのだろう。
実際、魔力による強化が無ければ、ヒロトシ達人間が怪物に立ち向かうのは難しい。
相手がボスならば特に。
そんなボスは、巨体に似合わない俊敏さで距離を詰める。
ヒロトシ達はそんな巨人に向かっていく。
人間離れした早さで両者は激突していく。
巨人の、巨体に似合わない細い腕が伸びる。
鞭のしなりのように動くそれは、先を進むヒロトシをとらえたかに見えた。
その瞬間にヒロトシは、手にした刀で腕を切る。
瞬間的に魔力を使い、更に動きを早めて。
巨人の腕は呆気なく切り落とされた。
その切断面はあまりにも鮮やかだった。
肉が潰れる事も、骨がささくれだつ事もない。
鋭利な刃物が切断面を潰す事がないように。
その切断面から血が流れる事もない。
そんなものがないから当然だ。
怪物のほとんどは、生命体のようでありながら実は違う。
生物が備えてる特徴を全く持ち合わせてない事がある。
血液もその一つだ。
なので、体を傷つけても、血が流れる事は無い。
目の前にあらわれた巨人もそうだった。
床に落ちる切り落とされた腕。
血を流さない切断面。
それも目の前のボス級怪物がまともな生物でない証拠だろう。
まして床に落ちた腕は、早くも靄や霞のように消え去ろうとしている。
普通の生物ならそんな消え方などしない。
そんなボスの足下までヒロトシ達は一気に接近する。
手にした刀で足を切断する為に。
これまた体格からすれば驚くほど細い足を、二人はほぼ同時に切り落とす。
当然巨人は立ってる事が出来ずに地面に倒れる。
前のめりに倒れた巨人は、顔面を床に強くぶつけていった。
軽く地響きを立てたそれは、しかしまだ生きている。
そんな巨人の、無防備になった首にヒロトシは刀を走らせた。
手足と違って太めのそれは、魔力をまとった刃で切断された。
とはいえ、太さもあって一撃では断ち切れない。
やむなく、もう一太刀で完全に頭と胴体を分離した。
それで完全に生命活動が終わったようだ。
あらわれた巨人は霞となって消えていく。
それを見てヒロトシと新人は、体から力を抜いた。




