22回目 やり方が分かれば簡単に片付くもの
前回もそうしていたが、今回も戦闘前から作業を始めていく。
まずは能力強化。
それと、怪物の攻撃に備えての魔力の防御膜。
これを先に用いていく。
そして更に、事前に怪物の情報を調べていく。
探知・探索の応用である、識別・鑑定。
魔力でこれを行い、怪物の状態を調べていく。
先にこれをやっておく事で、危険がどれだけかを測定する。
幸い今回も強い怪物はいない。
いずれも最弱レベルの昆虫型だ。
能力強化などはそれに応じた程度で良い。
「このまま突っ込む」
「はい!」
短い指示に新人も従う。
やり方は前回の5日間で既に理解している。
終わる事無き戦闘は大変だったが、おかげで体に動きが染みこんでる。
何をどうすればいいのかはもう分かってる。
新人は的確に動いていく。
能力の強化に必要な魔力はどれくらいか。
強化した能力でどう動く。
そもそもの敵の位置はどうなのか。
それらを即座に把握して動いていく。
既に新人の領域を超える動きだ。
これには身体能力だけでなく、精神面での能力強化も影響している。
目や耳といった感覚はもとより、知能や思慮といった頭脳面。
それらも強化してるので、適切な動きを瞬時に組み上げる事が出来る。
「戦闘は体だけ使ってやるもんじゃない」
ヒロトシの教えだ。
「状況を見て、もっとも効率的な動きを見つけていく。
その上で、攻撃や防御をこなしていく。
それが戦闘だ。
だからまず、状況を見ろ。
そして一番効果的な動きを見つけるんだ」
あくまで、事前に周りが見えてる場合だ。
そうでないなら話は変わってくる。
しかし、分かってるならば、より有利な状況を作っていける。
新人はそれをしっかりとこなしていく。
状況を見て、適切な位置取りを考え、体を動かしていく。
相手の動きを阻害し、自分は自由に動けるように。
ほぼ一方的に攻撃を仕掛けられるように。
あらわれた怪物は、それによって瞬時に壊滅していく。
無理なく無駄なく動いた新人によって。
ヒロトシが出る幕もない。
最下級の怪物相手なら、これくらいは出来るようになる。
動きも単調で考えも特にない。
本能に従って動いてるような連中だ。
数で押すしか能がない。
対策を知り、能力を上げれば十分以上に対処が出来る。
それこそ新人でも簡単に殲滅ができるくらいに。
それをやってのけた新人に、
「やるな」
とヒロトシは声をかける。
「いい動きだ。
こいつら相手なら、もう一人でもやっていけるな」
素直に認めていく。
「ありがとうございます」
新人も素直に応じていく。
実際、それほど危険でもない場所なら、もう新人は一人で動けるくらいになってる。
最下級の怪物相手であれば問題は無い。
そんな新人の仕上げとして今回はやってきている。
最弱の怪物以外の対処方。
それを教えるために。
もっとも、そう都合良く出て来てくれるものではない。
幾ら強力な怪物が出没するようになる地域でもだ。
遭遇するかどうかは運次第になる。
(上手くいけばいいけど)
ヒロトシはそう思いながら怪物寄せを設置していく。
それにおびき出されて、そこそこ強いのが来てくれるとありがたい。
さすがに強すぎるのは困るが。
(まあ、なるようになるか)
どうせ運任せなのだ。
悩んでもしょうがない。
来ないなら来ないで仕方が無い。
そう割り切っていく。
それでも十分以上に稼ぎをあげていく。
おびき出される怪物は多く、その分魔力をたくさん手に入れる。
単純な成果としては、もう充分過ぎるほどだ。
それはそれで満足のいく成果であった。




