21回目 もったいないは命を奪う
そうして辿り着いた迷宮の奥地。
そこで先日やった通りに警報やら魔除けを設置していく。
敵を倒すのが目的なので、魔除けは必要なさそうだが。
あえてこれを使っていく。
敵の動きを制御するためだ。
魔力による強化で能力をあげる。
これによって怪物の撃退を可能とする。
それはそうなのだが、それでも限界がある。
一定以上の数の怪物が押し寄せる。
様々な方向から押し寄せてくる。
こういった状況になったら、さすがに苦戦する。
最悪、本当に壊滅しかねない。
その為、怪物が入り込まない場所が必要になる。
そうする事で、逃げ道を確保する。
加えて、敵が流れて来る方向を定めていく。
無理なく難なく怪物を撃退出来るようにしていく。
そして、警報を設置する事で、どこに怪物が来たのか分かりやすくする。
警報が動いたところを警戒する意味もあるが。
使い方によれば、怪物を効率よく倒す手段にもなる。
効率の良い狩猟をするためには、怪物の位置を把握する必要がある。
警報はそんな怪物の居場所を教えてくれる。
発動した所にいけば、確実に怪物がいる。
危険を察知するだけが使い方ではないのだ。
そうした準備をしてから、怪物寄せを仕掛けていく。
敵を呼び込み、利益をあげていく。
「よーし、やるぞ」
「はい!」
今回も24時間体制で事にあたっていく。
二人は最初からそのつもりだ。
そして、新人には新たな注意もしていく。
「それと、強めの怪物には気をつけろ。
虫と形が違うからすぐに分かるはずだ」
「はい」
「大きさは虫と大差ない場合もある。
けど、それでも強さは各段に違う」
「はい」
「それを見つけたらすぐに報せろ。
そして、魔力を一気に使え。
出し惜しみするな。
魔力を惜しんだら、その分命で支払う事になる」
「はい!」
魔力の代わりに命を支払う。
迷宮活動での鉄則だ。
下手にけちって、効率化を目指して出し惜しみをする。
相手を上回るギリギリで手を打とうとする。
それが裏目に出て命を落とす。
迷宮では珍しくもない事だ。
だが、使いどころで使う事を躊躇わない。
もったいないという考えをここでは捨てる。
魔力は贅沢に潤沢に使う。
そうしないと死ぬ事になる。
慣れてくればどの程度使えば十分なのかも分かるが。
そうでない時は、相手を覆い尽くすほど魔力を使う。
それが迷宮で生き残る秘訣だ。
「とにかく気をつけて。
危ないと思ったらすぐ魔力」
「はい!」
標語のような事を口にしながら、ヒロトシは進んでいく。
とりあえず接近してきた怪物達の所へ。
そこで、今回最初の成果をあげるために。
ヒロトシと新人による荒稼ぎの時間がはじまっていく。




