2回目 異世界転生者
真榊ヒロトシは転生者である。
それも、21世紀の日本からの。
その為、転生先のであるこの世界よりも進んだ文明を知っている。
とはいえ、その記憶を活かせてるわけではない。
そういう記憶があっても、特に大した事が出来るわけではない。
前世はどこにでもいる底辺労働者であった。
特別な知識や技術があるわけではない。
転生する際に特別な力を得てるわけではない。
この世界の一般人と大差ない能力しか持ってない。
外見なども含めて、ごく標準的な水準の持ち主でしかない。
考え方や常識などがこの世界の住人とは違うのは確かだ。
発想の違いというのは確かにある。
それにより、他と異なる考えややり方を思いつく事はある。
だとしても、それが効果をもたらすというわけではない。
単に変わり者とし見られるだけで終わる。
最悪、頭がおかしいと思われる事すらある。
前世の知識や情報というものが役立った事は無い。
人生経験が他よりちょっと多いだけの一般人。
それがヒロトシの全てだった。
そんなヒロトシが生まれたのが、迷宮前につくられた都市の中。
そこで生まれ育って、ごく自然に迷宮探索者になっていった。
他に仕事がなかったからだ。
不思議なものだ。
そうなってから前世の経験が役立つようになった。
この世界の人間よりは教養がある。
それが様々な考え方をもたらしてくれる。
危機管理もその一つだ。
無理や無茶はしない。
出来る範囲で頑張る。
勇気は無謀の代名詞、臆病は慎重のあらわれ。
そういった考えを持ち合わせている。
おかげで、そうそう無理や無茶はしないように行動出来た。
ある意味、これが最大の強みになってくれた。
こういった行動をとる事で、今の今まで生き残る事が出来たのだから。
単独行動という危険をおかしながらもだ。
なのだが、ヒロトシ以外の者にはこれが理解されなかった。
バカにされる事のほうが多かった。
だが、そんな事をいってたヒロトシの同期は悲惨な事になった。
ほとんど死んでしまってるのだから。
そうなったのは、この世界の常識が大きく関係している。