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18回目 絶望的な収支計算

「凄い……」

 積み上がった魔石。

 それらがもたらす利益。

 それを考えて新人は呆然となった。



 そんな新人に、ヒロトシは現実を教えていく。

 世の中良いことだけではない。

 ここから様々なものが差し引かれていく。

 それも伝えていかねばならない。



「いいか、新人」

「はい!」

 積み上げられた魔石。

 それを手に入れる手腕。

 もたらした結果が新人を従順にさせていく。

 そんな彼にヒロトシは、

「ここから色々と差っ引かれていくからな」

と告げた。



「まずこの魔石だが。

 まず税金で差っ引かれていく」

「あ、はい。

 そうでしたね」

 途端に新人の顔色は悪くなる。



 税金は収入の3割。

 これが基本だ。

 今回の場合だと、魔力4万5000点のうち、1万3500点分の魔石が取られる。



 なお、魔力というか魔石は物納も可能だ。

 その方が便利でもあるからだ。

 場合によっては金銭よりも。

 なので、魔石(につまった魔力)に限っては、物納での納税も出来るようになっている。



 そして残った魔力だが。

 これは今後の活動にも用いる。

 より強力な力として使うなら、どうしたって魔力は必要になる。

 なので、それなりの量は手元に残しておきたい。



 なので、実際に換金出来る量は更に減る。

 どのくらいを残すかは人それぞれだが。



 そして、魔力の換金率だが。

 概ね、魔力1点につき、100円になる。

 これが高いか安いかは人によって感じ方は違うだろう。

 だが、今回手元に残る魔力を全部換金すれば、315万円になる。

 5日間の成果としてはかなりのものだ。



 もちろん、これを人数で割ることになる。

 そうなると、一人150万円余り。

 全部を金に換えた場合の話だが、相当な儲けになるだろう。

 もっとも、なかなかこうはならない。

 今後の戦闘を考えれば、手元の魔力は多いに越した事は無い。

 なので、実際に実入りはもっと少なくなる。



「そういう事ですか……」

 喜びから一転、絶望的な顔になる新人。

 そんな新人の肩に手を置き、

「そういうもんだ」

 凍り付いた笑みを浮かべて慰めるヒロトシ。



 この瞬間が一番辛い。

 なんだかんだで一生懸命稼いだもの。

 それが大幅にさっ引かれ、今後の為にある程度残しておかねばならない。

 そうなると、自由に出来る分は意外と少ない。

 この事実に気付かねばならないからだ。



「辛いですね」

「ああ、辛い」

 違うと言えないヒロトシは、ただ黙って言葉を反復する。

 新人はそんなヒロトシの言葉に、盛大なため息を吐いた。



 更に今回はヒロトシの引率がある。

 その分の取り分も決まってる。

 税金や経費を差し引いて、その残りを頭割り。

 そうして新人の手元に残った分から、一割を教育費としてヒロトシが受け取る。

 そういう話になっている。



「辛いです……」

「すまんが諦めろ。

 俺も命がけで手に入れた教訓だ。

 無料で提供するわけにはいかない」

 そう言われたら何も言い返せない。

 おかげで新人は、生きて稼ぎを得て帰ってくる事が出来たのだから。



「まあ、あれだ。

 頑張って稼げ。

 一回の迷宮入りでこれだけ手に入るんだ。

 頑張ればお前も、かなりの稼ぎを出せる」

 ヒロトシに言えるのはそれだけだった。

 あとは、新人が上手く立ちなおっていくこと。

 今後に目を向けて頑張っていくこと。

 そう願うだけだ。



 そんなヒロトシに、

「あの、もう一つ聞いても良いですか」

 新人は尋ねていく。

「こういう落ち込んだときって、どうすればいいんですかね」

 難題だった。

 いまだに答えが見つからない問題である。

 それが分かれば、ヒロトシももう少し気楽に生きていけるのだが。



「すまんな」

 正直にヒロトシは答える。

「俺も知りたい事だ」

「そうですか……」

 絶望的な気分にひたりながら、新人はため息をもう一度漏らした。

 今度はヒロトシもそれに合わせて肩を落とした。



 その後。

 税金を物納でおさめ。

 必要な分を換金し。

 残りの魔石や魔力を今後のために残し。

 それから新人は、今まで一番良い酒を買って宿に戻った。

 相変わらず場末の宿であるが、そこで一番良い部屋を借りて。

 酒をあおってから、枕を涙でぬらしながら寝た。


 通貨の単位は面倒だから円にする。

 前に金貨や銀貨でやったら、批判にかこつけた罵倒が飛んできたので。

 一々こんな事で暴言吐かれるいわれなんざ一切無い。

 ひたすら鬱陶しい。

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