101回目 古くからの因縁の一つを潰して面倒を一つ消す 2
親兄弟や近所の者達は驚いた。
迷宮の中にいる事に。
ヒロトシがいる事に。
大半の者は困惑し。
そうでない者はヒロトシに怒鳴り声をぶつける。
ぶつけようとした。
「おい、お前、今までどこに────」
声が途中で止まった。
ヒロトシがぶつけた魔力の塊、攻撃魔術によって。
威力を伴う気力の塊は、怒鳴り声をあげようとした者を吹き飛ばした。
そのままその男は壁に激突する。
めり込むのではないかと思う程の威力で。
それを見て周りの者達は驚く。
まず、何が起こったのか理解が出来ずにいた。
人が吹き飛ぶなど、そうそうある事では無い。
突然そんなものを見れば意識が一時的に止まる。
それから事態を把握していく。
だが、彼等の中の常識が「そんな事、あるはずがない」と目にした事実を拒絶する。
それを乗り越え、事の次第を理解すると、
「…………うわあああああああああああ!」
絶叫がほとばしった。
そんな中でも、幾らか落ち着いてる者達はいる。
日頃迷宮に出入りしてる者とか。
生来の資質で、あまり慌てない者とか。
それらは何が起こったのかをしっかりと理解していく。
そして、適切な行動をとろうとした。
ある者は、まずいと思って逃げだそうとした。
賢明だろう。
戦闘力がないなら、これが一番だ。
相手との力量差を把握した者もこれを選んでいく。
そして、ある者はヒロトシへと向かっていく。
頭に血が上ったり、仲間意識が強く働いた者がだ。
これらは他のあらゆる事を無視してヒロトシへと向かおうとした。
仲間が倒された。
なら報復をせねばならない。
少なくとも助け合わねばならない。
そういう考えが働いたのだろう。
悪い事では無い。
迷宮で生きていくには、そうした連帯感も必要だ。
ただし、それが最善というわけではない。
彼等は全く分かってなかった。
ヒロトシとの能力差が。
ヒロトシが、どれほどの魔力を貯えてるのか。
そして、自分達が魔力のこもった魔石を持ってない事を。
それでも彼等はヒロトシに突進していった。
武器や防具すらもないのに。
当然ながら、立ち向かえるわけがない。
まず、ヒロトシに近づけない。
ヒロトシが展開する魔力の壁によって動きを遮られる。
バリアのように展開された魔力は、ヒロトシの数メートル前でひろがる。
目に見えないそれらに向かって、近所の連中は突進していった。
当然、悲惨な事になる。
魔石を、魔力を持ってないとはいえ、迷宮で鍛えた連中だ。
能力も上がっている。
身体能力は、一般人を大きく凌駕する。
そんな者達が、何も意識せずに突進したのだ。
コンクリート以上の硬さを持つ障壁に。
無事で済むわけがない。
それこそ、トラック並みの重量や威力で突っ込んだのだ。
相応に頑丈な体を持ってるとはいえ、肉体が無事で済むわけがない。
ドン!
と派手な音を立てて激突する。
下手すれば致命傷だ。
そんな衝撃を受けて、突進した者は自滅していった。
後続の者達は、それを見て足を止めたが。
しかし、それで問題が消えるわけではない。
ヒロトシは、向かって来た者達の後ろにも魔力の障壁を作った。
ただし、高さは床から膝あたりまで。
そこに向けて、自分の前方に展開していた魔力の壁を勢いよく進ませる。
後続の者達もそれに押されていく。
そして、背後においた低い障壁のところまで押し戻される。
はじき飛ばされると言った方がより確かだろう。
その勢いのまま背後の障壁、あるいは障害にあたり。
しかし、ヒロトシの方から進む障壁は勢いを止めず。
前後の障壁がすれ違っていく。
ヒロトシの方から進む障壁は、やはり膝くらいの高さで上下に分かれて。
結果。
前と後ろから互い違いに挟まれる。
そうなった者達は、膝のあたりの高さで足を切断されていった。
膝上を吹き飛ばす前方からの障壁と。
膝下を固定する後方の障壁とで。
なお、地面に取れていた者達だが。
床の高さで前後から挟まれ、全身が粉砕するのではないかという衝撃を受けた。
ヒロトシに突っかかっていった者達は、こうして潰えていった。




