第9話〜涙を拭き、妹は決心する。〜
佳奈、奎汰視点です。
佳奈が元気を取り戻した。のはいいんだ。そのために俺は佳奈の部屋に行ったんだしな…でもな…
「何で腕を絡んでんの?」
「なんとなく。」
ほんとに素の性格の佳奈はなんというか出会った時のおちゃらけた感じじゃないな、落ち着きがある感じだ。クールとは違うんだけど、例えるなら、そうだな。ギャグキャラが急に真面目キャラになった感じ?あれこの言い回しもわかんないか。クール寄りだけどクールじゃない感じ?これも違うか?
「兄さん」
「ん?」
「私は千春に話しかけてみる。だからまた逃げ出さないように捕まえてて。」
腕に絡みついたのは、そういう事だったのか…まぁ平行世界のとはいえ妹の頼みだ…ていうかまた上目遣いしてきた…めちゃくちゃ可愛い…抱きしめても…うんダメだな。
「任しとけ。」
「ありがと。じゃあ戻ろうか、私のせいで時間食ってるし。」
「そうやな。行こか。」
俺と佳奈は今度こそ部屋から出てさっきいたリビングに戻った。
ーーーーーー
リビングに戻ったら、異様と言えば失礼だが、それぞれの自分同士で話し込んでいた。話していた俺の知ってる絵里がこちらに気づいた。その瞬間に目を細めた。…わかりやす。まぁ説得しに行って戻ってきたら佳奈が腕に絡んでるから、そりゃ誰だってそうなるか。
「説得はできたみたいだな。奎汰」
大和に声をかけられた。髪が青だから魔空世界の大和だ。なんていうか呼び方を考えないとな。
「まぁな…こっちの俺の事も再度聞いたばい?本部の事も。」
「そうか…それなら「それで?何で佳奈っちは奎ちゃんの腕を絡んでるのかな?」
大和の言葉を遮ったのは、絵里…ではなくさくらだった。もちろん普通世界のな…いや何でお前までジト目で見る。
「なんとなく。」
佳奈はさっきと同じように言った。あれ?あのおちゃらけた感じじゃなくていいのか?
「じゃあもういいですよね?皆さんが見てる前です。そういうのは控えてください。」
そう言うのは湊…昨日も言った通り、湊は委員長だからあの女優顔負けの演技をしていた絵里と一緒で丁寧語を話す。っていうかこいつも心無しかキレてない?いやキレてるわ。目が座ってない。
「そうだよ〜。だから…手を離して」
「え…あっ、うん…」
千春まで応戦してきた。それも笑顔で。佳奈は千春の言葉でそそくさと腕を離した…さっき言ったことと違うなおい…名残惜しいとか思ってないからな?
「何で説得だけで、そうなるの。奎兄」
「聞かれてもな。ってそんなのはいいんだ。千春ちょっと来てくれ、ごめんまたちょっと出るな。佳奈も行くぞ。」
「え?あっ、うん…」
俺は千春に、廊下を出るように頼みまたみんなに言ってから廊下に出た。佳奈も一緒に、来た。
「じゃあ、まずはお前ら2人仲良くなれ!」
俺は言葉が見つからず謎の命令口調で言ってしまった。2人にジト目で見られた。
「何その命令口調?語彙力無さすぎでしょ?」
「うん、それはうちも思う。」
容赦なく言われた。俺も思うから言わないでくれ俺のメンタルは豆腐以下なんだ。
「…悪かった。佳奈から話してやってくれ俺は戻ってる。」
俺は佳奈のために2人きりの空間を作ってあげた。俺はリビングに入った。
ーーーーーーーーーー
兄さんはリビングに戻って行った…逃げないように腕を掴んでって言ったけど、まぁやりすぎちゃったか。それよりも今はちーちゃ…千春さんだ。
「まぁ、責めてるわけじゃないけどね。…ちーちゃ…千春さん、さっきのは謝るわ。なんとなくで、あなたの好きな人に腕を絡みつくのはダメだから。」
「…べ、別に奎兄のことなんか、す、好きってわけじゃないよ!勘違いはいけないよ!」
……わかりやすいツンデレ…千春は素直にあいつの事好きだったからなぁ。何かツンデレな千春さんも新鮮だ。
「ははは…そういう事にしてあげるよ。…話はヤマ兄やえっちゃんから聞いた?」
一週間前に普通世界に行く前に決めていた事があった。もし一週間後に兄さんを連れ行くことに成功したら、みんなは心配してここに来たがるかもしれないと、だからヤマ兄は大和さん達が来るのを止めなかった。多分だけどこれも見越してみんなの魔力を調べていたんだと思う。そして何よりこの話は兄さんも含めた全員に話す事になっていたから、その役目はヤマ兄とえっちゃんだったけど、私が部屋に逃げ込んだのは、想定外だった。我ながらほんとに馬鹿だと思う。千春さんを見みて、我を忘れていたから。
「…聞いたよ…何か現実味がないけど。」
「そりゃここに来てそんなに重い話をされたらね…私もそっちだったら、そうなるよ。」
「この世界の私とはその…仲…良かったんだよね?」
「うん…ヤマ兄もえっちゃんも言ってたでしょ?親友だったよ。」
「…そっか。何で奎兄はうちと佳奈…さんを2人にしたのかなぁ」
もっともな疑問だと思う。まぁこればっかりは言うしかないか。
「私が頼んだんだ。兄さんに。ちーちゃ…千春さんと話がしたいって、私が逃げないように腕を掴んでって言ったけど、まぁ、それは今はいいの。逃げないし。」
「…うちはこの世界の三原千春じゃないよ?」
私の言葉を聞いて、千春さんはそう言った。あぁ、勘違いしちゃってるね。
「それは分かってる。ちーちゃんは死んだ。あなたを代わりになんて思わないよ。区別はついてるし。」
「…それなら、いいけど…話って?」
ちーちゃんにそう言われ私は、涙が出てきた。あれ?何で?
「ちょっ!なんで泣いてるん!?」
「わ、わからん!自分でも何でこ、こんな…」
分からんかった。何でこんなに…溢れるんだ。てかこんなに涙脆かったっけ?私って。
「あわわ!涙吹いて!ほらこれ!貸すから!」
「ありがとう…ちーちゃ…千春さん。」
ちーちゃんからハンカチをもらおうとして、手を引っ込められた。あれ?
「…むぅ…その千春さんって呼び方やめない?」
ちーちゃんの顔を見ると、顔を膨らませながらそう言った。いやでも、そう呼んじゃうと、区別が…いやそれってちーちゃんにとっては失礼なことだよね。
「…いいの?」
「いいよいいよ!だって、奎兄達からも専ら千春だし!その呼ばれ方も新鮮でいいしさ!」
千春さん…いやちーちゃんは屈託のない笑顔でそう言った。その言葉を聞いて、私はまた涙が出てきた。
「もう…泣き虫さんだね〜」
「泣き虫…じゃないよ…」
私は涙を拭き、顔をあげてからちーちゃんにこう言った…
「…私と…友達になってください!」
「…喜んで!」
私達は抱きしめ合った。私は、この子とも親友になるんだ…泣いてばかりいられない。それにいつまでも泣いてると、天国にいるちーちゃんに笑われちゃうしね。それにさっきも言った通り兄さんを強くさせる…正直あいつの力は圧倒的だ。だから、私は決心するんだ。もう泣かない。そう思いながらも私はちーちゃんを力いっぱい抱きしめた。
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「ーーーーー何とかなったな。」
俺は2人の様子を見て安堵しながら、そう呟いた。
「…ほんとあなたは何でもかんでも救いだがりますね。」
「うお!?…はる?」
前を見ていると不意に声が聞こえ、驚いて後ろを振り向くと春香がいた。この口調は普通世界の方の春香だ
「俺が焚きつけたんだ。見守るのが道理だろ。昔の事があるしな」
「それはあなたのクラスの席替えで掃除割りを決める時にあなたが先生に振られ咄嗟に教室と言ったのを皮切り何で教室にしたのを、なんとなくって泣きながら言った後に理科室で大泣きした事ですか?」
「…大泣きはしとらん!って今はそんな話してる場合じゃないだろ。リビングに戻るぞ。」
俺は昔の話を思い出す前に誤魔化すように春香に言ったが。
「この話をふったのはあなたです。それに私達はあなたが戻ってくるのを待ってたんです。早く戻ってきてください。」
笑顔で長く言われた。つうか毒舌も含んでる。こいつは昔から笑顔で毒舌な所あるから、いつも口喧嘩で負ける…まぁ、それは幼馴染女性陣全員言えることだ。情けない話だが。
「う…はい」
俺は情けない声を出しながら、リビングに戻った。
はい、どうも!第9話では佳奈と千春が友達になりました。次は、リビングにて今後の話をする感じです。魔法の種類等も紹介する感じです!ではよかったらブクマや感想をお願いします!




