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異世界の魔女と四大王国 〜始まりの魔法と真実の歴史〜  作者: 祐
第七章 ユウリとヨルン
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7-4. サマーパーティー1

 《北の大地》では、夏が近づくにつれ、日照時間が長くなる。

 まだ七月も始まりだが日中の気温は高く、故に、毎年行われるサマーパーティーは、まだ日が沈む前の夕暮れ、涼しくなる午後八時ごろから開催されることになっていた。


 魔法学園は、朝から煌びやかな雰囲気に包まれている。

 今年も例年に漏れず、開場午後七時半、開始時間は午後八時半で、生徒達は午後の授業が済むと、足早に各々の支度へと向かっていく。

 授業は通常通り行われていたが、生徒達の間では始終、今夜の話題で持ちきりだった。

 ユウリも他に漏れず、ドレスと宝飾品以外の小物を全てナディアに借りるため、彼女の部屋で準備を終えたところだ。


「うう……」

「胸を張って、ユウリ」


 首に掛けたビブネックレスの重さに思わず猫背になるユウリの姿勢を、ナディアが矯正する。

 ユウリとしては、パパッと着替えて、執務室にでも寄ってから会場入りしたかったのだが、貴族のいうところの『正装』をする手間で、まだパーティーも始まっていないというのに疲れ果てていた。


 そのままドレスを頭から被ろうとしたユウリに、ナディアは慌ててコルセットをあて、これを着ないとドレスを着るのは無理だという。

 そんなものか、とナディアに任せた彼女は、何故か柱を摑まらせられ、次の瞬間、ランチを吐き出すかと思うほどに締め上げられて悲鳴をあげた。

 涙目のまま、パニエをつけられ、ジュップを履かせられ、ようやくドレスを着られた。

 さらにそれから、手袋の色と扇子を選ぶのに小一時間、無理やり座らされて顔に何かを塗りたくられたり髪の毛をぐいぐい引っ張られたりして小一時間、ナディアの支度でまた小一時間。

 一番にでも身に着けたかったヨルンからもらった宝飾品を着けた時には、すでに午後八時を回っていた。


「今日ほど貴族に生まれなくてよかったと思った日はない」

「ふふふ、何時もに増して美しいわよ、ユウリ」

「いや、その、今のナディアに言われても……」


 艶々の髪を編み込みでハーフアップにして銀細工の簪を差し込み、完璧な化粧を施したナディアは、それだけでもいつもの何倍も美少女だった。

 それに加え、まるでネイビーという色は彼女のためにあるのではないかというほど似合っているドレスに、大ぶりのサファイアを誂えたダイヤの細鎖のネックレスと、お揃いのイヤリングが映えていて、一層その美しさを際立てている。

 ユウリは、ナディアにしてもらった化粧のお陰で、鏡に映った自分を多少見直したのだが、本物の美少女の隣に並ぶと、月とすっぽんとはこのことだと思う。


 会場へ向かう途中、遠くから女生徒の黄色い悲鳴が聞こえ、それが段々とこちらへ近づいてきた。

 ナディアは笑いそうになる口元を扇子で隠す。


「ユウリ、迎えが来たようよ」

「え?」


 ぷるぷるとナディアが指をさした先に、白い外套を翻しながら、ずんずんとこちらに進んでくるスミレ色の頭が見える。

 レヴィは二人の前に来ると、大きな溜息をついた。


「レヴィ様の正装も、久しぶりね。ウケるわ」

「ウケるって、ナディア……レヴィさんに失礼すぎ!」

「君ねぇ、色々言いたいことはあるけど……遅いよ」

「あら、女性の支度には時間がかかるものなのよ」

「俺は実行委員会を手伝う立場なんだから、開始時間前には会場入りしないとって、言っただろ!」


 ユウリが見えていないかのように、矢継ぎ早に文句を言う()モードのレヴィに、ユウリは少しずつ後ろに下がりながら、目を合わせないようにする。ナディアの巻き添えで怒られたくはない。


(それにしても……)


 レヴィの正装は、白い詰襟の上に肩章のついた白の外套。縫い付けられた金の飾り紐が胸元で無造作に踊っていた。ベルトには宝飾された小さな短剣が挟まれ、鎖紐と繋がっている。

 物語の挿絵にでも出てきそうな、典型的な王子様像がそこにあった。

 先程の女生徒達の嬌声も頷ける。

 まじまじと見つめるユウリに気づき、レヴィはいつも通りの柔和な表情に戻ると、胸元に手を当てて、膝を折った。


「ユウリさん、ご機嫌よう」

「ほわわわ、王子様仕様のレヴィさんの破壊力……!」

「……エスコートされるはずの私にはしないって、どういうことかしら」


 不満を言うナディアの手を無言でとって、レヴィは自分の腕を掴ませる。その自然な動作に、ユウリの方が何だか照れてしまった。


 会場付近は思いの外混雑していて、しかし、カウンシル役員の一人であるレヴィの登場で、関係者入り口までの道がさあっと開ける。

 相変わらずの人気に、また猫背になりそうになってナディアに叱られながら、ユウリたちは会場——正しくは関係者の控えの間へと入っていった。


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