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目白東中学校クエスト外伝 ~魔導獣と調和の剣~

作者: 暗黒黙示録

登場人物

ナツキ:魔法少女。頭脳明晰であり、皮肉屋の一面もある。

キャロライン:ナツキのパートナーである妖精。ナツキからは“キャリー”と呼ばれている。本来はネコのような姿をしているが、魔法で少女の姿となっていることが多い。いずれの姿でいる場合でもネコを意識したような特徴的な喋り方をする。


 ここは隠された二十四番目の特別区“目白もくしろ区”。

 ここにある目白もくしろ東中学校・高等学校にはナツキという生徒がいました。

 ナツキは中学二年生の時に妖精のキャロラインと出会い魔法少女となりました。そして、世界の平和の為に闇の力と戦い始めました。

 そんなある日、ナツキは世界の平和を守る為に他の生徒達が見ている前で変身を行い、結果としてその正体を全校生徒に知られることになりました。その後、ナツキは魔法の力を忌まわしむ他の生徒達に避けられるようになり、孤独になってしまいました。

 ナツキは他の生徒達に避けられるようになって塞ぎ込みがちになりました。その一方、魔法の力を知った生徒達の中には魔法の力を利用しようと考える者も現れました。

 ナツキが中学三年生となった春、様々な思惑が交錯して事態が混迷を極める中、絶望に沈んだナツキは混沌の魔法に手を出し、自我を失って破壊の限りを尽くし始めました。最悪の事態は免れたものの、ナツキの心の傷は深まる一方でした。


 ナツキが中学校を卒業し高校へと進学した春休み、学校には課外活動を行う生徒達が集まっていました。

 キャロラインは人間の姿になって校庭で生徒達の様子を見ていました。キャロラインは楽しそうに過ごす生徒達を見て少々寂しく思っていました。

 そんな時、校庭に突如として左腕が弓の形をした一体の怪人が姿を現しました。校庭にいた生徒達は驚いた様子で逃げ惑いました。

「あのバケモノは……!?」キャロラインが声を上げました。

 一人の生徒が逃げている途中で転びました。その怪人はその生徒ににじり寄りました。その生徒は怯えた表情を浮かべていました。

「そんな……!」戦う力を持たないキャロラインはただ見ていることしか出来ませんでした。

 そこへナツキが姿を現しました。ナツキは黒いロングコートを身に纏い、背中にはギターケースを背負っていました。

「ナツキ……!」キャロラインが叫びました。

 キャロラインの声を聞いた周囲の生徒達が逃げるのを忘れてナツキの方を見ました。

 その怪人もナツキの方を向きました。その間にその怪人に狙われていた生徒は立ち上がって逃げ出しました。

 ナツキは変身しようと構えました。しかし、一年前の出来事が脳裏に浮かび、変身することが出来ずにいました。

「ナツキ……。」キャロラインが呟きました。

 そこへ生徒会長のダイキが姿を現しました。

「現れたな、バケモノめ!」ダイキが言いました。「この時を待っていたよ!」

 他の生徒達がダイキの方を見ました。

「ナツキ、君は愚か者だ。」ダイキがナツキに言いました。「だが、君の過ちは我々の大いなる発展の礎となった!」

 ナツキは黙っていました。

「物理部が混沌の魔法を再現することに成功したのだ!」ダイキが言いました。

「混沌の魔法……?」キャロラインが言いました。「まさか……!」

「今こそその力を見せてやろう!」そう言ってダイキが魔法のアイテム“カオティックマジカルテックボトル”を取り出し、その力で変身しました。

「フッハッハッハッハッ!これが混沌の力か!素晴らしい気分だ!ハッハッハッハッハッ!」ダイキが言いました。

「これは……。」ナツキは一年前の自分を思い浮かべて言いました。「力に飲まれている。」

 その怪人が魔法の矢を放ってダイキを攻撃しました。ダイキは腕でその攻撃を弾きました。

「ムダだ!」ダイキが言いました。「俺は俺よりもレベルが低い相手の攻撃を無効化することが出来る!そして今の俺のレベルは混沌の力によって10となっている!最早神でなければ俺を止めることは出来ない!」

 その怪人は勝機が無いことを悟りその場を去っていきました。

「ハッハッハッハッハッ!さあ、今こそ俺が全てを支配してやろう!」ダイキが言いました。

「ナツキ……!変身してアイツと戦うニャ!」キャロラインが言いました。

「でも……。」ナツキが言いました。

「ナツキ……!」キャロラインが叫びました。

「くっ……!もし仮に私が変身したとしても、私のレベルは8。混沌の力を手にした今のアイツには攻撃が通らない!」ナツキが言いました。

「ナツキ……。」キャロラインが呟きました。

「どうした?変身しないのか?」ダイキがナツキに言いました。「まあ無理も無い。潔く降参サレンダーすると良い!」

「もしここで私が降参サレンダーすれば世界はアイツの手に……!くうっ……!」ナツキが言いました。

 そこへ二人の人物が姿を現しました。

 その場にいた生徒達が全員その二人の方を向きました。

「アレは……人気アイドルのマコトとリッカニャ!」キャロラインが言いました。

「アイドル……?」ナツキが呟きました。

「アイドルだと……?」ダイキが呟きました。

「サーチャーに反応があったのはこの場所なのに、もういないみたいですよ!それにアイツは一体……!?」マコトがリッカに言いました。

「あの禍々しい気配……。ひょっとしてムーン……!?」リッカが言いました。

「そんな……!ムーンが覚醒した……!?」マコトが言いました。

「何を話している?」ダイキが言いました。「支配者たるこの俺の前に姿を現すなど、おこがましい!」

「支配者だって……!?」マコトが言いました。

「どうやらアイツはムーンでは無いようね。」リッカが言いました。「でもこのまま放ってはおけないわ。」

「だったらあんなヤツ私一人で……!」マコトが言いました。「リッカさんはカードの方を……!」

「分かったわ。」そう言ってリッカはその怪人を追って走り出しました。

「俺に挑むつもりか?」ダイキがマコトに言いました。

「うん!」マコトが言いました。

「笑わせる。アイドル如きに何が出来る?」ダイキが言いました。

 マコトが一枚のカードを取り出しました。そのカードには“LANK=4 AIR”と書かれていました。

「ん……?」ダイキが怪訝そうにそのカードを見つめました。

「アイドルはカードが命!」そう言ってマコトが魔法のアイテム“マジカルリーダー”にそのカードを読み込ませました。

 その瞬間、「アイドルタイム!スタンバイ!」の電子音声と共にマコトがマジカルアイドルに変身しました。

「変身したニャ!」キャロラインが驚いた様子で言いました。

「これは……?」ナツキが呟きました。

「バカな!たかがアイドル風情が変身しただと……!?」ダイキが言いました。「だが、攻撃力は俺の方が遥かに上だ!」

「それはどうかな?」マコトが言いました。

「何……!?」ダイキが言いました。

「アイドルマジカルのステージはまだ始まってない!」マコトが言いました。

「どういうことだ!?」ダイキが言いました。

「ライブモード、オン!」そう言ってマコトがマジカルリーダーを操作しました。

 「スタートアップ!カウントダウン!」の電子音声と共にマコトの体表にマジカルアイドルの力の源である輝く魔法の液体“ケミカルライトブラッド”が流れ始め、アイドリングモードからライブモードへと移行しました。

「何だと……!?」ダイキが言いました。

「こんなことが……。」ナツキが呟きました。

「だが……たとえ攻撃力が上がったところで俺の特殊能力によってレベル9以下の攻撃は全て無効だ!」ダイキが言いました。

「いや……!」キャロラインが言いました。

「残念だったね!アイドルマジカルはレベルを持たない!よってその特殊能力で私の攻撃を無効にすることは不可能だ!」マコトが言いました。

「レベルを持たないということはレベル0では無いのか!?」ダイキが言いました。

「ハアッ!」マコトがダイキに飛び掛かりました。

 マコトはダイキにパンチやキックを次々と当てて怯ませました。

「確かに攻撃が効いている。」ナツキが呟きました。

「これがアイドルマジカルの力……?」キャロラインが言いました。

 ライブモードの限界時間が近づき、マジカルリーダーから残り時間を知らせる電子音声が「10……9……8……」と鳴り出しました。

「そろそろ決める!」そう言ってマコトはジャンプしました。

「ハアーッ!」マコトは空気の流れを操って加速しながらダイキに跳び蹴りを当てました。

「ウアアアアアアアッ……!」ダイキがふっ飛ばされました。

 「3……2……1……タイムアウト!」の電子音声と共にマコトはライブモードからアイドリングモードへと移行しました。それと同時にダイキは爆発と共に変身を解除し、カオティックマジカルテックボトルは砕け散りました。

「倒したニャ。」キャロラインが呟きました。

「さてと……これで一件落着と……。」マコトはそう言ってリッカを追いかけました。


 林の中でマコトはリッカを見つけました。

「リッカさん!」マコトが言いました。「カードは……?」

「見失ったわ。」リッカが言いました。

「そうですか。それじゃあ後でマナにも連絡して……。」マコトが言いました。

「誰……?」リッカがマコトの背後を見て言いました。

「えっ……!?」マコトが驚いた様子で振り返りました。

 木の陰からナツキが姿を現しました。

「君は確かさっきの学校にいた……!」マコトが言いました。

「私達のファン……?」リッカが言いました。

「別に……そういうワケじゃ無いわ。」ナツキが言いました。

「だったら何でつけたりしたの!?」マコトが言いました。

「あなた達が何者なのか知りたいと思っただけよ。」ナツキが言いました。

「そういうあなたは……?」リッカが言いました。

「ナツキニャ!」別の木の陰からキャロラインが姿を現しました。「魔法少女ナツキニャ!」

「もう一人いた!」マコトが言いました。

「キャリー……。」ナツキが呟きました。

「ナツキは隠れるのがヘタニャ!」キャロラインが言いました。

 ナツキは黙っていました。

「魔法少女……。ウワサで聞いたことがあるわね。」リッカが言いました。

「私達はアイドルマジカルなんて知らないニャ。ウワサにすらなってないニャ。」キャロラインが言いました。

「学園が情報操作を徹底しているからね。」リッカが言いました。

「学園……?」ナツキが言いました。

「アイドル学校“スターリード学園”ニャ!」キャロラインが言いました。

「詳しいの?」ナツキが言いました。

「有名ニャ!」キャロラインが言いました。

 ナツキは黙っていました。

「スターリード学園は表向きにはただのアイドル学校だけど、裏では政府と繋がっていて国家の安全の為にアイドルマジカルの育成も行っているの。」リッカが言いました。

「ちょっとリッカさん……そんな話したらマズいんじゃ……!?」マコトが焦った様子で言いました。

「平気よ。この子達なら話しておいた方が良さそうだわ。」リッカが言いました。

「うーん……。」マコトが困った様子で言いました。

「要するに、あなた達も闇の力と戦っているワケね。」ナツキが言いました。

「いえ、私達が相手にしているのは別の脅威よ。」リッカが言いました。

「別の脅威……?」ナツキが言いました。

「ええ。このカードは知ってるかしら?」そう言ってリッカが“LANK=4 FIRE”と書かれたカードを見せました。

「スターカードニャ?」キャロラインが言いました。

「知っているの?」ナツキが言いました。「それも有名?」

「まさか……!」マコトが笑いながら言いました。

「古い時代にクロウっていう妖精が魔法で五十二枚のカードを作り野に放ったのニャ。それがスターカードニャ。」キャロラインが言いました。

「そう。そしてスターカードには一枚一枚が強大な力を秘めていて、時にはバケモノとなって人々を襲い始める。」リッカが言いました。

「それじゃあさっきのバケモノは……。」ナツキが言いました。

「もしさっきの場所でバケモノを見たと言うなら、スターカードで間違い無いわ。」リッカが言いました。「サーチャーが反応を示していたから……。」

「それで、そのスターカードを集めて管理するのがあなた達の仕事なワケ……?」ナツキが言いました。

「簡単に言えばそうなるわね。」リッカが言いました。「でも……。」

「でも……?」ナツキが言いました。

「スターカードには実はもう一枚、五十三枚目のカードがあるらしいことが最近になって分かったんだ。」マコトが言いました。

「五十三枚目……?」ナツキが言いました。

「そう。私達はムーンと呼んでいるわ。」リッカが言いました。

「ムーン……。」キャロラインが呟きました。

「ムーンは人間の姿をして自分が何者なのかも知らずに人間として生活しているらしいの。」リッカが言いました。

「でも、カードが一箇所に集まった時にムーンとして覚醒し、全てを滅ぼすと言われている。」マコトが言いました。

「全てを……滅ぼす……。」ナツキが呟きました。

「そんなカードがあったなんて知らなかったニャ……。」キャロラインが言いました。

「だから私達はそうなる前に何としてもムーンを見つけ出して倒したいと思っているんだけど……。」マコトが言いました。

「ムーンは自分がムーンである記憶も持っていない上に人間の姿をしている為に見つけ出すことは困難……。」リッカが言いました。

「でも、人間の姿をしていたとしてもムーンである以上何か特別な力を持っているハズ……!」マコトが言いました。

「もしムーンを見つけたら教えてくれないかしら?」リッカが言いました。

「ええ。もし見つけられたらね。」ナツキが言いました。

「ありがとう。」リッカが言いました。

「でも、私にあまり期待しない方が良いわ。」ナツキが言いました。

「えっ……?」リッカが言いました。

「私はそこまで正義の味方ってワケじゃ無いのよ。」ナツキが言いました。「ひょっとしたら私がムーンだったりするかも知れないわね。」


 ナツキとキャロラインはマコトとリッカと別れた後、一緒に歩いていました。

「ナツキ、何であんなこと言ったニャ?」キャロラインが言いました。

「本当のことだからよ。」ナツキが言いました。「ムーンは自分がムーンであることを知らない以上、私がムーンだってことも有り得るわ。」

「ナツキはムーンなんかじゃないニャ。ナツキはナツキニャ。」キャロラインが言いました。

「仮に私がムーンで無かったとしても、悪党であることに変わりは無いわ。」ナツキが言いました。

「ナツキ……。」キャロラインが言いました。

「キャリー、あなたもいつまでも私のような悪党のパートナーでいないで、別のパートナーを探した方が良いわ。でないと、あなた自身が不幸になるわよ?」ナツキが言いました。

「ナツキ……。」キャロラインが立ち止まって言いました。「もう怒ったニャ。」

「えっ……?」ナツキが立ち止まってキャロラインの方を見ました。

「この一年間ずっと我慢してきたけど、もう限界ニャ!いつまで塞ぎ込んでいるつもりニャ!?そんなんじゃいつまで経っても不幸なままニャ!好い加減前を向いて進み始めるニャ!ナツキ……!」キャロラインが言いました。

「私なんかが今更前を向いて進み始めたところで、どうにもなるハズが……。」ナツキが言いました。

「遠慮しなくて良いニャ!ナツキも言いたいことを言うニャ!それが出来ないって言うなら私がお手本見せるニャ!私はナツキに元気でいて欲しいニャ!ナツキは私にとってただ一人のパートナーニャ!離れるなんてゼッタイにイヤニャ!そんなことは許さないニャ!」キャロラインが言いました。

「キャリー……。ううっ……!」ナツキは泣きだしました。

「ナツキ……!」キャロラインが言いました。

「私だって、みんなと仲良くなりたい!人気者にならなくても良い!せめて普通にみんなと仲良くして、そして世界の平和を守りたい!でも、私は……!」ナツキが言いました。

「確かに過ちは犯したニャ!でも、きっとみんな許してくれるニャ!だから勇気を持つニャ!前に進むニャ!」キャロラインが言いました。

「ううっ……!キャリー……。」ナツキが言いました。

「ナツキ……。」キャロラインが言いました。


 その怪人が再び校庭に姿を現しました。その場にいた生徒達が逃げ惑いました。

 そこへナツキとキャロラインが来ました。

「アイツは……!」キャロラインが言いました。

「行くわ、キャリー。たとえ誰にも許して貰えなくても、私は……世界の平和の為に戦う!」ナツキが言いました。

「ナツキ……!」キャロラインが言いました。

 ナツキはギターケースを下ろすと、ロングコートを脱ぎ捨てました。そして魔法のアイテム“マジカルチェンジャー”を構えました。

「変身!」ナツキが言いました。

 その瞬間、マジカルチェンジャーから「change!」の電子音声が発せられ、ナツキが変身しました。

 逃げ惑っていた生徒達が足を止めてナツキを見ました。

「ナツキ……行くニャ!」キャロラインが言いました。

「ええ!」ナツキが言いました。

 その怪人がナツキに魔法の矢を放ちました。

「フッ!」ナツキは左の掌で魔法の矢を受けました。

「マジカルソード!」ナツキが魔法の剣“マジカルソード”を召喚し、それを構えて歩き出しました。

 その怪人が連続して魔法の矢を放ちました。ナツキはマジカルソードを振って次々と飛んでくる魔法の矢を弾きました。弾かれた魔法の矢は地面へと落下して爆発しました。

 ナツキはその怪人に近づくと、マジカルソードでその怪人を連続して切りつけました。ナツキの攻撃を受けてその怪人は怯みました。

 その怪人が怯みながら後退したところでナツキはゆっくりとマジカルソードを構え直しました。

「マジカルマーダー!」ナツキはその怪人に飛び掛かりながらマジカルソードで切りつけました。

 その怪人はナツキの攻撃を受けて爆発と共に一枚のカードへと姿を変えました。

「やったニャ!」キャロラインが言いました。

 周りにいた生徒達も歓声を上げました。

 変身を解除したナツキは“LANK=2 ARROW”と書かれたそのカードを手にしギターケースを拾い上げると、生徒達に見送られながらキャリーと共にその場を去っていきました。


 ナツキは学校の傍の路地でキャロラインと話をしていました。

「良かったニャ、ナツキ!みんな喜んでいたニャ!」キャロラインが言いました。

「喜んでたのは今だけよ。どうせ後からゴタゴタするに決まっているわ。」ナツキが言いました。

「ナツキ……。」キャロラインが言いました。

「でもま、少しはスッキリしたわ。」ナツキが言いました。「この問題については後からどうにかしていくとして……。」

 そこへマコトとリッカがやって来ました。

「ここにいたのね。」リッカが言いました。

「ようやく現れたわね。」ナツキが言いました。

「欲しいのはこのカードでしょ?」そう言ってナツキが《アロー》のカードを差し出しました。

「そう、それ!」マコトが言いました。

「渡してくれるの?」リッカが言いました。

「別に……私はアイドルマジカルじゃないし、カードキャプターでも無いからね。」ナツキが言いました。

「じゃあ、貰うよ!」そう言ってマコトが《アロー》のカードを手にしました。

「ランク2……面白いわね。」リッカがそのカードを眺めながら言いました。

「いつか全部のカードが集まると良いわね。」ナツキが言いました。

「うん!」マコトが言いました。


 スターリード学園の理事長室で理事長がスターカードの収集状況を確認していました。

「とうとう《アロー》のカードも集まったか!」理事長が言いました。「そろそろ私の計画も最終段階へと移行するであろう。」


 その後、理事長は学園内にある秘密の研究室へと移動しました。そこではスターカードの研究が行われていました。

「いよいよです。」研究主任が言いました。「遂にアレが完成しました。」

「そうか……。」そう言って理事長は研究者達が完成させたという一枚のカードを手にしました。

「コイツの力を使う為にはまず一度コイツを目覚めさせねばならない。」そう呟いて理事長がそのカードを装置の中へと入れました。

「危険です、理事長!」研究主任が言いました。「今そのカードを覚醒させるのは……!」

 理事長が装置のレバーを引きました。

 その瞬間、装置から稲妻が発せられ、爆発と共にそのカードが怪人へと姿を変えました。

「これは……!」研究主任が声を上げました。

「フン!」その怪人が暴れ出し、研究者達を倒すと壁を突き破って外へと出て行きました。

「フッフッフッ……。人造スターカード《ケルベロス》……。」理事長はそう呟いてほくそ笑みました。


 スターリード学園の生徒の一人であるマナが山の中を散策していました。

 そこへ学園を抜け出したケルベロスが姿を現しました。

「コイツは……!?」マナが言いました。「この感じ……スターカード……!?いや……コレは……!」

「フン!」ケルベロスがマナに襲い掛かりました。

 マナはケルベロスの鉤爪をかわすと、マジカルリーダーと《ウォーター》のカードを取り出し、マジカルアイドルへと変身しました。

 マナはケルベロスと殴り合いました。マナはケルベロスの鉤爪をかわしながらケルベロスにパンチを当てていきましたが、ケルベロスはダメージを受ける様子を見せませんでした。

「コイツ……!」マナが声を上げました。

「フン!」ケルベロスがマナを引っ掻きました。

「ウアアアッ……!」マナがケルベロスの攻撃を受けて転倒しました。

「くっ……!」マナがゆっくりと立ち上がりました。

「こうなったら……!」マナがライブモードへと移行しました。

 マナが再びケルベロスにパンチを繰り出そうとしました。

「フン!」その瞬間、ケルベロスが掌から魔法火炎弾を放ちました。

「ウアアッ……!」マナがケルベロスの攻撃を受けて怯みました。

「オアアアアアアアッ!」ケルベロスが怯んだマナを力一杯引っ掻きました。

「アアアアアアアアッ……!」マナはふっ飛ばされて谷底へと落下し、そのまま川に落ちました。

「フン……。」ケルベロスはマナの落下を見届けると、その場を離れていきました。


 その頃、マコトとリッカは校長室に呼び出されていました。

「大変だ。理事長が……!」校長が言いました。

「理事長……?」マコトが言いました。

「聞いたことがあるわ、この学園の理事長は普段人前には姿を見せないけれども物凄い大物なんだって。」リッカが言いました。

「この学園の理事長と言うことは、政府の人間なんですよね?」マコトが言いました。

「ええ……。」リッカが言いました。

「それで、理事長がどうされたのですか?」続けてリッカが言いました。

「それが……。」校長が言いました。「どうやら理事長は政府を裏切ってスターカードの力を我が物にしようと企んでいたのだ。」

「ええっ……!?」マコトが言いました。

「スターカードの力を……?」リッカが言いました。

「理事長はこの学園に秘密の研究室を設けていて、そこで人工的にスターカードを生み出す研究を行っていたようなのだ。」校長が言いました。

「人工的にスターカードを……?」リッカが言いました。

「ああ。そしてつい先程、完成したスターカード《ケルベロス》が怪物として具現し、この学園に姿を現した。」校長が言いました。

「そんな……!」マコトが言いました。

「まさか理事長がそんなことをするなんて……。」校長が言いました。

「それで、その理事長は今どこに……!?」リッカが言いました。

「怪物が姿を現したその研究室にはもういなかった。怪物諸共行方不明だよ。」校長が言いました。

「くっ……!」リッカが言いました。

「理事長がいなくなったということは、この学園ももう終わり……?」マコトが言いました。

「いや、心配は要らない。たとえ今の理事長がいなくなったとしても、スターカードの脅威から国民の安全を守る為にこの学園は存続するだろう。」校長が言いました。

「とにかく、理事長が生み出したというそのバケモノを何とかしないと……!」リッカが言いました。

「行きましょう、リッカさん!」マコトが言いました。

「校長、マナと連絡は……?」リッカが言いました。

「今日はオフで山へと出かけているとのことだが、連絡が取れないのだ。」校長が言いました。

「圏外なんでしょうか?」マコトが言いました。

「そんなバカな。電波が通じない程の山なんて……。」リッカが言いました。

「今は君達だけが頼りだ。」校長が言いました。

「分かりました。」リッカが言いました。


 ナツキとキャロラインが通りを歩いていました。そこへケルベロスが姿を現しました。

「何……コイツは?」ナツキが言いました。

「この気配……スターカードニャ!」キャロラインが言いました。

「スターカード……?」ナツキが言いました。「また彼女達に協力することになりそうね。」

 ナツキがギターケースを下ろしました。

「変身!」ナツキが変身しました。

「マジカルソード!」ナツキがマジカルソードを手にケルベロスと戦い始めました。

 ケルベロスはマジカルソードで切られてもビクともせずに攻撃を続けました。攻撃が効かないケルベロスを相手にナツキは苦戦を強いられました。

 ナツキがケルベロスの攻撃を防ぎ続けていると、マコトとリッカが駆けつけました。

「アイツが……《ケルベロス》……!?」マコトが言いました。

「ナツキ……!」リッカが言いました。

 マコトとリッカが変身しました。

「ハアアアッ!」ケルベロスがナツキを引っ掻きました。

「うあああっ……!」ナツキがケルベロスの攻撃を受けて転倒しました。

 マコトとリッカがケルベロスと戦い始めました。ケルベロスは二人のパンチを受けても怯むことなく二人を圧倒しました。

 リッカはライブモードへと移行しケルベロスと戦い続けましたが、やはりその攻撃はケルベロスには通用しませんでした。

「やはりコイツ……只者じゃない!」リッカが言いました。

「これが……人造スターカードの力……?」マコトが言いました。

 マコトもライブモードへと移行しました。しかしそれでもケルベロスにダメージを与えることは出来ませんでした。

「ハアアッ!」ケルベロスが魔法火炎弾を放ちました。

 ケルベロスが放った魔法火炎弾の爆発によりマコトとリッカはふっ飛ばされました。そしてリッカは時間切れによりアイドリングモードへと戻ってしまいました。

「くっ……!」地面に倒れ込んだままリッカが言いました。

「そんな……!」マコトが立ち上がりながら言いました。

 ケルベロスがさらなる攻撃を繰り出そうとしたその瞬間、立ち上がったナツキがケルベロスを攻撃しました。ケルベロスはナツキの攻撃を防ぐと、そのまま再びナツキと戦い始めました。ナツキはケルベロスの猛攻を防ぐので精一杯でした。

「そんな……。こんなことって……!」マコトが苦戦しているナツキと地面に倒れ込んだままのリッカを見て言いました。

 マコトのライブモードの残り時間が無くなってきました。

「マコト……!」リッカが言いました。

「くっ……!」マコトが拳を握り締めました。

 マコトは《ソード》のカードを取り出しました。

「オーバーレイ!」そう言ってマコトは《ソード》のカードをマジカルリーダーに読み込ませました。

 その瞬間、「ランクアップ!エクシードチェンジ!」の電子音声と共にマコトのアイドルランクが4から7へと上昇しました。

「これ以上、誰も傷つけさせはしない!」そう言ってマコトは新たに召喚された剣を手にケルベロスに向かっていきました。それと同時にライブモードの残り時間もリセットされました。

 ここまで怯むことが無かったケルベロスでしたが、長期戦の末にナツキとマコトの連続攻撃を受けて怯み始めました。

「ハアッ!」マコトが剣でケルベロスを突きました。

「ウアアアアッ……!」ケルベロスがふっ飛ばされて地面に倒れ込みました。

 マコトが剣を構え直しました。

 ケルベロスが立ち上がってマコトの攻撃に備えようと構え直しました。

 その瞬間、ナツキがケルベロスを切りつけて怯ませました。

「ハアアアッ!」マコトが剣の先端から空気の弾丸を放ちました。

「ヌウアアアアアアッ……!」ケルベロスはマコトの攻撃を受けて爆発と共に倒れました。

「やった……!」リッカが立ち上がりながら言いました。

 マコトはアイドリングモードへと移行しました。

 そこへ理事長が姿を現しました。

「誰……?」ナツキが言いました。

「ひょっとして、あの人が……?」マコトが言いました。

「理事長……?」リッカが言いました。

「いかにも……。」理事長が言いました。

「理事長……?スターリード学園の……?」ナツキが言いました。

「理事長、あなたの作ったケルベロスとやらも倒れました。」リッカが言いました。

「そのようだな。」理事長が言いました。

 その瞬間、ケルベロスはカードへと戻り、理事長の手元へと飛んでいきました。

「確かに……君らがこれ程強くなっていたとはな……。」理事長が言いました。「だが、君達には失望しているんだ。」

「失望……?」リッカが言いました。

「スターカード収集というアイドルマジカルの仕事を完遂出来ずいつまでも手間取っている。しかも、そんな素人まで巻き込んでいる始末だ。」理事長が言いました。

「ナツキは素人じゃないニャ!」キャロラインが言いました。

「君達は、退学処分とさせて貰った。」理事長が言いました。

「それってクビってことですか!?」マコトが言いました。

「何を今更……。」リッカが言いました。

「君らの持つマジカルリーダー、収集したスターカード、それらは全て政府の所有物だ。返還したまえ。」理事長が言いました。

「それは出来ません。あなたは政府を裏切りスターカードの力を私的に利用していました。あなたに私達を退学にする権利なんてありません。」リッカが言いました。

「あなたが《ケルベロス》で何を企んでいたのかは知らない。けどそれは葬られた。あなたの負けだ!」マコトが言いました。

「私の負けだと?フッフッフッフッフッ……!」理事長が言いました。「君はアイドルマジカルでありながらスターカードの本質を理解していないようだね。」

「えっ……?」マコトが言いました。

「まさか……!」リッカが言いました。

 理事長がマジカルリーダーを取り出し、《ケルベロス》のカードを読み込ませました。そしてマジカルアイドルへと変身しました。

「これは……!」ナツキが言いました。

「アイドルランク10!私は神アイドルとなった!」理事長が言いました。

「ランク10……!神アイドル……!」リッカが言いました。

「まさか神アイドルが現れるなんて……!」マコトが言いました。

「私はこの力で世界を支配する!ハッハッハッハッハッハッハッハッ!」理事長が言いました。

「そうはさせない!」そう言ってナツキが理事長に切りかかりました。

「ムダだ!ハアアッ!」理事長がナツキの攻撃を受け止め、ナツキを殴り飛ばしました。

「うあああっ……!」ナツキはふっ飛ばされて地面に倒れ込みました。

「ナツキ……!」キャロラインが言いました。

「まずは手始めに君達から抹殺してやろう。」理事長がマコトとリッカに向かって言いました。

「くっ……!」マコトが剣を構え直しました。

「無理よ、マコト!」リッカが言いました。「今のあなたの実力じゃ、神アイドルには敵わない!」

「でも……!」マコトが言いました。

「良いからあなただけでもここから逃げなさい!そしてアイドルとしてもっと成長して、さらにカードを使いこなせるようになるのよ!」リッカが前に出て言いました。

「ハアッ!」理事長が魔法火炎弾を放ってリッカを攻撃しました。

「うあああっ……!」リッカが理事長の攻撃を受けてふっ飛ばされました。

「イヤです、リッカさんを置いて私一人で逃げるなんて!」マコトが言いました。

「たとえ逃げたところで君にこれ以上のランクアップは出来んさ。誰にも私は倒せない。」理事長が言いました。

「くうっ……!」マコトが言いました。

 そこへマナが姿を現しました。

「何をしているの、マコト?」マナが言いました。

「マナ……さん……!」マコトが言いました。

「超人気アイドルのマナちゃんニャ!」キャロラインが言いました。

「お前……死んだハズでは……!?」理事長が言いました。

「誰だかは知らないけど、あの程度で私が死ぬと思ったら大間違いよ。」マナが言いました。

 マナが変身しました。

「行くわよ、マコト!」マナが言いました。

「はい!」マコトが言いました。

 マコトとマナが理事長に立ち向かいました。しかし、理事長の持つ圧倒的力にはまるで歯が立ちませんでした。

「ううっ……!」ナツキが立ち上がりながら理事長の持つ圧倒的な力を見ました。

「ナツキ……!」キャロラインが言いました。

「アレが……神アイドルの力……。」ナツキが呟きました。

「まさに神に匹敵する力ニャ。」キャロラインが言いました。

「ヤツを倒すには……。」ナツキが呟きました。

 そこへ学校の近くに起きたその戦いを知った生徒達が駆けつけてきました。

「みんな……?」ナツキが言いました。「どうして……?」

 集まった生徒達はナツキに謝罪の言葉を述べ、そして苦戦するナツキを応援し始めました。

「みんな……。」ナツキが呟きました。

「みんなナツキの仲間ニャ!ナツキはもう、一人ぼっちなんかじゃないニャ!」キャロラインが言いました。

「ええ……。」ナツキが言いました。「だったら、私に恐れる物は何も無い!」

 ナツキはギターケースを開けました。そこには混沌の魔力を宿す剣“混沌の刃-ブレード・オブ・カオス”が入っていました。

「それは……!」キャロラインが言いました。

「みんなの想いに応える為に、私は神をも超える力を得る!」ナツキが言いました。

「でも、その剣を使えば……!」キャロラインが言いました。

「私はずっと逃げてきた、私が向き合わなければならない全てから。でも、今この瞬間、みんなが私を応援してくれている!もう私は逃げない、みんなから、自分自身から、そしてこの忌むべき力からも!」ナツキが言いました。

 ナツキの覚悟を聞いた生徒達がさらにナツキを応援しました。

 その瞬間、混沌の刃-ブレード・オブ・カオスが光り輝き、“ブレード・オブ・ハーモニー”へと変化しました。

「コレは……!?」ナツキが言いました。

「分からないニャ。」キャロラインが言いました。「でも、その剣からはもう混沌の力は感じないニャ。その力を試してみるニャ、ナツキ!」

「ええ!」ナツキが言いました。

 次の瞬間、ナツキとブレード・オブ・ハーモニーがシンクロし、ナツキの姿が変化しました。

 理事長がマコトとマナを殴り飛ばしました。そして、姿の変わったナツキの方を見ました。

「何だ、その姿は!?」理事長が言いました。

「レベル12!これぞ神をも超える真に最強の魔法少女の姿ニャ!」キャロラインが言いました。

「神をも超えるだと!?バカな!」理事長が言いました。

「集いし想いが新たに輝く魔法となった!その力、見せてあげる!」そう言ってナツキがマジカルソードを構えました。

「神アイドルであるこの私が負けるハズが……!」そう言って理事長がナツキに向かって走り出しました。

「ハーモニアス・マジカルエンド!」ナツキがマジカルソードの先端に生成された巨大な魔法の刃で理事長を切りつけました。

「うあああああああっ……!」ナツキの攻撃を受けた理事長は変身を解除して倒れました。

 マコトとリッカとマナが立ち上がりました。

 マコトが《ケルベロス》のカードを拾い、リッカとマナが理事長を起こしました。

「あなたのおかげでこの人の野望を阻止することが出来たわ。」マナが言いました。

「この人のことは私達に任せて。きっと然るべき罰が下されるわ。」リッカが言いました。

「ありがとう、ナツキ!」マコトが言いました。

「ええ。」そう言ってナツキは去っていくアイドル達を見送りました。

 ナツキは変身を解除しました。

「やったニャ、ナツキ!」キャロラインがナツキに抱きつきました。

「ちょっと、キャリー、やめてよ。」ナツキが言いました。

 集まった生徒達が微笑んでナツキを見ていました。

 ナツキが生徒達の方を向きました。

「ありがとう、みんな。」ナツキが言いました。

 ナツキがキャロラインの手を握りました。

「行くよ、キャリー、行けるとこまで、どこまでも!」そう言ってナツキは歩き出しました。

 こうしてナツキは世界の平和を守ったのでした。

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