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悪役令嬢の策略〜太古の陰陽師復活〜

悪役令嬢の策略〜太古の陰陽師復活〜


陰陽師についてはご存知だろうか。そう平安の昔より、我が国を席巻していた不思議な術を使う、陰陽道に精通していた者達である。

また平成の世に置いても、歌や踊りを継承した者たちによる布教活動は続いており、根強い支持を得ていると言わざるを得ない。

しかし。今ではその神秘力が薄れ、かつて程の繁栄を誇ってはいない(盛者必衰)。


その陰陽師を復活させ、陰陽道による日本征服を企む者が現れた。それが、とある女子高生より、首相官邸へハガキが送られた事で発覚したのだ。総理大臣より指示を受けたバイオ桃太郎は、現場に急行することになった!



……



「農民の娘が、楯突いてくるんじゃありませんわ!」


金髪縦ロールが、ある娘を蹴った。


「ああっ!」


地面を転がる娘。

ここは京都府、聖オンミョウ女学院。伝統と歴史のお嬢様学校である。入学するためには、多大な現金を必要としており、まさに資本主義の最もたる施設だ。


「下民を蹴ったので靴が汚れてしまったわ」

「うぅぅっ」


ああっ、無体な。農民の娘は手ぬぐいを取り出して、金髪縦ロールの靴を拭いたのだ。何という階級社会!何という差別的社会の縮図であろうか!


しかも授業中にも関わらず、教員は見て見ぬ振りを決めこんでいる。何故だろうか?そう、これは袖の下と呼ばれる江戸時代からの伝統で、現金(はした金では無い)を教員に手渡しているからだ。


「やめて下さい稲川さん。汚いハンカチーフで靴に触られると余計に汚れてしまいますから」

「は、はい」


稲川と呼ばれた少女は、手ぬぐいを取り下げた。


「ロール様、稲川はこの学校に相応しくないと思いますわ。生き血を抜きましょう」

「そうですわね」


悪役令嬢は、古事記の時代より娘の生き血を抜くと決まっている。取り巻き達が、生き血を抜く事を提案し始めた。


「ほほほほほ。農民の娘どもの生き血を使って、陰陽師の復活も近い。私が日本を牛耳る時が来たのですわ」


がしゃああーーん!

その時、窓ガラスを突き破って、一つ人影が現れた!


「待てい!!」


生徒と教員、全ての視線が集まった。そこに現れたのは我らがバイオ桃太郎である。


「バ、バイオ桃太郎!?」


一人の農民の娘が、生き血を半分抜かれて地面に転がっている。取り巻きの集団で生き血を抜いたのだろう、「みんなでやれば怖く無い」卑劣な集団心理!


「大丈夫か?」


農民の娘に駆け寄る桃太郎、どうやら息はあるようだ。血液を全部抜き取られる前で良かった。人間は血液の100パーセントを失うと死に至る事は明らかである。100パーセント未満であれば、助かるかどうかは五分五分だろう。


「貴様ら。農民の娘を、それも学友を集団で虐めるなどと……愚の骨頂」

「な、何を言っていますの、私のパパは総理大臣ともパイプがありますのよ!」

「悪であるならば総理大臣もろとも成敗するまで!」


ぎりりと奥歯を噛み締めながら、拳を握るバイオ桃太郎。彼のパンチであれば、悪役令嬢を絶命させるのに十分な威力がある。


「待って!」


制止の声を上げたのは、農民の娘だ。ぴたりと動きを止める面々。


「ロールさんを殺さないで……初めてできた私の友達なのです」


その言葉を聞いた我々は号泣した。これほど良い娘が居ただろうか。学級が感動の涙に包まれた。


「わかった、しかし」

「し、しかし?」


桃太郎は、念を押すように告げた。


「娘達の生き血は本人に返してもらう」

「わかりましたわ……」


急遽、輸血が開始された。もう良いからと遠慮した娘達にも全員に血を返却した。一時的に高血圧になった者も居たが、自分の血だ、すぐになれるであろう。


「これで陰陽師復活の夢も潰えましたわね」

「良いんじゃないでしょうか。陰陽師が無くとも、ロールさんは日本を牛耳ることができますよ」

「そうかも知れないわね」


夕暮れに、農民の娘(稲川)と縦ロールがぐっと握手した。素晴らしい友情の形である。



ありがとうバイオ桃太郎!

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