キュウシュウ独立戦線
続 バイオ桃太郎vsサイボーグ金太郎vsミュータント浦島太郎 〜キュウシュウ独立戦線〜
前大戦(第三次世界大戦)より数ヶ月。日本政府の三太郎チームによりオニガシマ討伐が成功し、戦争は終結を迎えた。
日本国は平和を取り戻したかに見えた。しかし国民の八割が死亡し、総理大臣の求心力が低下。そのどさくさに紛れて、九州地方が日本国から独立し、ネオキュウシュウ帝国を設立することを宣言したのだ!
その際、福岡県、長崎県、大分県、熊本県、宮崎県、鹿児島県の六県は合同サミットを開いた。ちなみに佐賀県は断じて忘れられていたのでは無い。時の福岡知事(後のフクオカ皇帝である)の発言「佐賀県は福岡の一部とみなしているのでサミットに参加しなくても良い」という発言に佐賀知事が反論。
「我々佐賀県は日本国にとどまる」との声明を出したのだ。
ネオキュウシュウ帝国の中にぽつんと囲まれた佐賀県。その勇敢な行為に感動した日本国総理は、佐賀県に救援と、九州平定のためにバイオ桃太郎を派兵する事を決めた。
「おのれ許せん!逆賊討伐すべし!」
バイオ桃太郎は暴君フクオカ皇帝を討つべく、九州佐賀国際空港に向かった。
……
『ようこそ九州佐賀国際空港へ』今となっては、そののぼりが寂しい。F35で空港に降り立ったバイオ桃太郎が見たのは凄惨な光景だった。
暴走するフクオカ皇帝の策略により、さがびより(佐賀県の特産米)の田んぼが残さず焼き討ちにあっていたのだ。
真っ黒に焼けただれた農民が、桃太郎の元へよろよろと歩み寄って来た。
「こ、この稲を……どうか、さがびよりを絶やさぬようにお願いします」
そう言って、稲を渡し、彼は力尽きた。
「任せておけ、俺に。しかし許すまじフクオカ皇帝……!」
バイオ桃太郎は怒った。その怒りが桃色の涙となり、頰を伝う。涙の跡が残り、歌舞伎の化粧のようになった。これがバイオ桃太郎怒りの第二形態である。
そこに現れたプライベートジェット機。
「フフハハハハ!来たかバイオ桃太郎よ!」
ジェット機のタラップから、大きなつるぎを腰に挿した皇帝が、姿を現した。
「フクオカ皇帝か!」
「いかにも。今から貴様を滅ぼし、日本国を全て占領してくれるわ!」
「そうはさせんぞ!」
言うがはやいか、一閃。桃太郎ブレードがきらめいた。バイオ桃太郎のメイン武器である刀、桃太郎ブレードは、なんでも斬れると岡山県では非常にメジャーである。
「うわあああああやああ!!」
「甘いぞ!桃太郎!」
しかし、その刃はフクオカ皇帝に辿り着く前に、打ち払われた。なんと皇帝はネオ剣道三十二段の免許皆伝であったのだ!
卑劣なネオ剣道の階級制度、ネオ剣道は現金(安くは無い)を払う事で、段位を二倍、二倍に上げていく事ができる。
バイオ桃太郎はネオ剣道の心得があるも、その段位は八段である。フクオカ皇帝は実にその四倍の力を持っているのだ。恐るべし資本主義の世界。
追い詰められたバイオ桃太郎!
しかしその時不思議なことが起こった。農民に貰った稲が黄金に輝いたのだ!
「うわっまぶしい!」
さすがの皇帝もこれには参った。一瞬目を閉じてスキを作ってしまう。そして、輝く稲は次の瞬間、現金に変わった!その価値は現代の貨幣に直すと、1000万円に相当する札束だ。
「うおおおおっ!ネオ剣道協会よ、俺に力をっ!!!」
バイオ桃太郎は一瞬のスキを見逃さない。降って湧いたあぶくゼニを全てネオ剣道協会に寄付して、段位を上げた。
この瞬間、バイオ桃太郎の段位は六十四段になったのだ!実にフクオカ帝王の二倍の段位である!
「フクオカ帝王、覚悟!逆賊に死を!」
ザバァ!!!
黄金の稲穂と共にバイオ桃太郎の一撃は、皇帝の首を一撃で跳ねた。ここに叛逆者は葬られたのである。
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」
鞘に刀を収めながら、バイオ桃太郎はそう呟いた。彼には難しすぎる言葉ゆえ、意味は分からないが、賢そうに聞こえるからだ。
……
ごぼぼ……。
ほぼ同時刻、石垣島の近くの辺り(そんなに近くない、どちらかと言うと沖縄本島より)にミュータントの亀人間が姿を現したとの情報が、首相官邸に届いた。
一体何者なのか、我々には想像もつかない。
〜続く〜