幾多のライトが輝くサーキット場
今回も、自分の好きなものに心酔したい時は一人でどこへでも行ってしまう私の話。
社会人の頃に、数年だけではあるけども、親戚の影響でF1を熱心に観ていた。
当時、『小林 可夢偉』というF1ドライバーが世界の強豪を相手にめちゃくちゃカッコいいレースを展開させていたのだ。
そんな可夢偉の壮行会が、高速道路を飛ばせば行けるレース会場で夜からあるってんだから行くでしょ、一人で。
だってどこぞの他の女子が、それ来て楽しいのか、と。
暗闇の中、幾多のライトが輝くサーキット場で、コースのスタート位置に沿う観客席に座る一人の女子。
壮行会という名のトークショー。
そこに、可夢偉は現れた。
彼は、当時の私の夢だった。
あまりに野望溢れるレースへの強気な姿勢。
別にきゃーきゃー言いたかったわけじゃない。
同世代が人生をかけて頑張っている姿に、私の心は何か押し上げられような感覚がしていた。
その日、あまたに輝く光の中心にいる本人を目の当たりにして、思った。
「こんなところで、止まってる場合じゃないなぁ」
こんなところとは、レース会場のことではない。
その時私が立っていた、人生における位置。
そして私は、人生最大の負を取っ払う決断をした。
もしあの日壮行会に行かなくても、いつかはその決断ができたのだろうかと、たまにふと考える。
高速道路を飛ばしたあの日。
今となっては私が一人で行けるのは、怪獣が後部座席で寝た瞬間の、マッ○のドライブスルーぐらいだ。
駐車場に停めて、期間限定の白いブラックなんちゃらを食べる。
美味い、文庫本を広げる、幸せ。
もう遠くには行けない。
だからこそ私はここで、このサイトで、空を飛ぶ。




