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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
七章 この罪は私のもの
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不思議な店

―コスプレショップ 昼―

「お似合いですよ、お客様! とーってもクール!」

「は、はぁ……」


 変装出来そうな物を取り扱っている店はないかと探し続け、ようやく見つけたこの場所で、僕は何故か侍の格好をさせられていた。


(入る店を間違えたのかな……いや、でも色んな色のカツラに独特な服……変装には持ってこいだ)


 目の前で、僕を見ながら目を輝かせるメイド服姿の女性店員。そのメイド服も、僕が見慣れた物ではない。フリルがかなり多くて、丈も短くて露出が多い。胸の大きさも強調されていて、かなり目のやり場に困った。

 しかも、ツインテールに結った金髪は地面につきそうである。仕事としての格好ではなく、趣味としての格好に近いように伺える。


(結局、何の店なんだ……ここは!)


「一目見た瞬間から、ビビビって来たんですよ! 私、分かるんです。お客様、日本人でしょ!?」

「え、えぇ……まぁ、はい」

「なんてかっこいいのでしょう! 今度は是非新撰組の――」

「あ、あの! カツラを探してるんですけど!」


 これ以上、厄介なことに巻き込まれる前にさっさと用事を済ませてここを立ち去りたかった。


「あら? そうですか……」


 女性はかなり寂しげな顔を浮かべると、手を横に一度動かした。

 すると、突然店の雰囲気が一変した。服がほとんどであった周辺の様子が、あっという間にカツラだらけになったのだ。僕が呆気に取られていると、女性は不思議そうに首を傾げる。


「こういうお店は初めてでしたか? 最近のお店はこういうのがほとんどですよ。店が小さくても、この魔術を使うことで沢山の商品を取り扱えるんです」

「凄い……僕の国にはこういうのはないものですから」

「本当ですか? 信じられない……」


 女性は目を見開いて、両手で口を塞いだ。やはり、僕の国は遅れている。


「長いこと鎖国があって、一部の国々としか交流していなかったので……致し方ないです」

「なるほど……あ、お話が逸れてしまいましたね。何かお気に召した物はあったでしょうか?」


 僕はそう言われて、再び陳列されたカツラを見た。本当に沢山ある。髪型も髪色もないものなんてないのではないかと思うくらい、種類が豊富である。


(短い物より長い物がいいな……髪色も独特な物の方がいいかも)


 赤、黄、青、緑、白、黒、茶、金、銀、紫など様々な色がある中、僕は一番最後に目に入った紫のロングヘアーのカツラを手に取った。


「つけてもいいですか?」

「勿論!」


 僕は試しに、頭に被ってみた。少しゴワゴワして違和感があったが、鏡を見てみると意外と馴染んでいた。


「素敵! よくお似合いです!」

「ありがとうございます、ハハ……あと、服はこれ下さい。おいくらですか?」

「えぇと――」


 そして、僕は僕を隠す為の準備を整えた。

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