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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第四十六章 少し先の僕達の未来
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王への挑戦

―闘技場 夜―

「――さぁ、皆お待たせ! いよいよ、両者の準備が整ったようだ! それでは、登場して貰おう! まずは、挑戦者……雪選手!」


 大歓声を浴びながら、雪選手は再び舞台上に姿を現す。異様な雰囲気の中でも、彼女は怖気づくことなく凛とした表情で歩む。


「僅か十歳の少女が、ここに達するなどと誰が予想出来ただろう!? 下馬評なんてくそくらえ! もはや、ここから先の戦いに予想など不要だ!」

「凄いよなぁ、ありゃうちの孫よりも若い」

「本当に子供なのか……?」


 常識的に考えれば、ありえないと思う。最も大きな差は、体格だろう。それでも、彼女は己の力でここに立っている。全てを覆して見せたのだ。


「そして、闘技場創立以来、あらゆる大会で頂点を極め、殿堂入りを成した名もなき絶対王者の登場だ! 圧倒的な実力、底知れなさと得体の知れなさで多くの者を魅了する! 今日もまた玉座を守れるのか!?」


 ゴンザレスの登場により、歓声が鼓膜が破けるのではと思うくらいに大きくなる。


「……そもそも、男じゃないかもしれないって噂があるらしいわ」

「そんな訳ないわ! 声は、どこからどう聞いても男じゃない! 馬鹿なこと言わないで!」

「魔術具を使って、そうしてるとかどうとか……」

「やめて! ありえないから! 絶対に爽やかイケメンなんだから!」


(正体は、徹底して隠しているんだな)


 これくらいの人気と注目を集めてしまっているのなら、マスコミの格好の餌食だろう。恐らく、何としてでも正体を暴こうとしている輩は大勢いるはずだが大したものだ。


「では、まずは両者の状態を平等とする為に……いつもの如く、仮面の王には調()()をして貰うぜ!」


 二人が舞台上に到着したのを確認してから、司会はそう説明した。


「調整?」

「……雪と条件を同じにするのよ」


 すると、地面から細長い固そうな物体が生えてきた。どうやら、これが調整を行う物らしい。


「この台に手を乗せると、雪選手と同じ疲労とダメージ、魔力消費を背負うことになるぜ! 不公平なんて、あっちゃならんからな。という訳で――」

「はいはい、分かってます分かってます。あ~」


 いつものことだから、そんなことは知っているとゴンザレスは足早にそれに歩み寄る。そして、体力を奪うという物の上に迷いなく手を乗せた。


「……っ!」


 僕にははっきりと見えた。ゴンザレスの体から膨大な力が抜き取られ、同時に何かが流れ込んでいくのが。


「……痛そうね」

「可哀相……」


 目に見えたものではないにしても、その苦痛が僅かに漏れた声で伝わってくる。あんなにも盛り上がっていた場が、一気に静まり返る。


「美月、いつの間にあんな物を?」

「最初から。英国に技術協力を仰いでね。だって、回復には限界があるでしょ。ダメージを与える方が楽なのよ」

「大きな力の流動を感じたよ……でも、別日にするとかの方が良かったんじゃないの?」


 何とも言えない空気になるのは、今日が初めてのことではないだろう。こういう場は、盛り上がってなんぼのものだろうに。


「色々考えた末の妥協案だったの。仮面の王戦は、予選から始まっている。およそ半年くらいかかっているわ。その分、費用もかかってしまう。よっぽどのことがない限りは、同日に行う――でなければ、収益がなくなってしまうのよ」

「……ごめん」


 浅はかな提案だったと後悔した。そうだ、これくらいのことを美月が思いつかないはずがない。色々と考えた末、現状ではこれが最善だったのだ。


「別に。まぁ、いずれは……そうしたいと思っている。それまでは、この苦痛に耐えて貰うしかない」


 僕には、任せることしか出来ない。出来得る限りの協力はしたいと思っているが。


「それでは! 両者、位置についてくれ!」


 気まずい雰囲気を払うように、彼は明るい声で投げかける。


「やれやれ……やっと始まりか。よろしく、お嬢さん」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


 そして、軽く言葉を交わした後、二人は所定の位置についた。


「よし、問題ねぇみたいだな。じゃあ、いくぜ? ファイナルラウンド……レディ、ファイッ!」

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