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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第四十六章 少し先の僕達の未来
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プレミアムな戦い

―闘技場 昼―

 そして、ついにその日が訪れた。僕と美月、亜樹は関係者席に座り、想像以上の闘技場の熱気に驚嘆していた。


「この日のチケット取れるとか、もう死んでもいいわ……」

「生きてて良かったなぁ……」


 近くの観客席から、そんな声が聞こえる。今日という日を、どれだけ多くの人が待ちわびていたか分かる。

 すると、そんな熱気の中、マイクを持った一人の男性が登壇する。


「やぁ、こんにちは! 司会の(すすむ)だ! 今日はいよいよ、本戦だぁ! 今日は仮面の王戦と新戦士デビュー戦が一緒にやってきたぜ! こんなプレミアムな戦いを見れるなんって、マジで幸せ者だな。今回のチケットは家宝決定だ!」


 彼は随分とこなれた様子で、話し始める。いわゆる、ベテランという枠の中にいるのだろう。


「そして、そして……この戦いがプレミアな理由はもう一つ! 皆、もう知ってるよな? あそこを見てみてくれ!」


 満面の笑みを浮かべ、盛り上げながらも流れは崩さず進行していく。次は、王の開会宣言なのだ。

 

「本物か?」

「本物だろ、偽物なんていやしねぇ!」


(いや、いるけどね。この同じ空間に……)


 皆が、一斉にこちらに向いた。


「あの方は誰か知ってるよな!? そう、王様だ! 戦士達は光栄だよな! 王様に活躍を見て貰える絶好のチャンスなんだから! さて、という訳で……今日の開催宣言は王様だ! 胸に刻めよ、皆!」


(そんな大したこと言えないんだけどなぁ。こういう時に盛り上げる言葉とか……難しいよ。でも、僕の言葉で伝えよう。そう、あの少女のように)


 僕は一つ息を吐いて、用意された演台の前に立つ。あんなに騒がしかった場が、嘘のように静まり返った。あまり得意ではないけれど、これも大事な仕事の一つだ。


「今日は、このような素晴らしい日に観戦出来ることを光栄に思う。始まる前から、この熱気に歓声……こちらまで気持ちが昂るようだ。参加者それぞれ、様々な思いを抱えてこの場に立っているのだろう。しかし、目指す場所は同じはず。絶対王者に挑み、その称号を剥奪する姿を僕は見たい。新たな王者の名が刻まれる運命の日となることを願っている。ここに集う戦士達には、それが可能だ! さあ、僕に見せてくれ! 始まりと終わりの瞬間を! 以上、これをもって宣言とする! 君達の勇姿を楽しみにしている!」


 出来る限りの大声で、僕は叫んだ。


「「うぉおおおおおっ!」」


 地鳴りにも等しい歓声で、彼らも応じてくれた。思わず、気持ちよくなってしまう。その余韻に浸りながら、僕は椅子に腰かける。


(疲れたけど、いつもよりは上手く出来た……かも)


「頑張ったわね、王様」


 その瞬間、美月が声をかけてきた。王様、なんて普段は絶対に言わない。


「うるさいなぁ……メリハリをつけないといけないだろ」

「こっちは褒めているんだから、素直に喜びなさい」

「煽りにしか聞こえないんだよ……」

「姉弟仲良くていいねぇ、フフ」


 亜樹が、そんな僕らの様子を見て微笑みかける。


「どこが? はぁ……」


 こっちは頭が痛くてしょうがない。いつもの関係に戻ったことで受ける恩恵を上回る弊害だ。


「――伝説を破り、そしてまた新たな伝説が生まれる……想像するだけで身震いしちまうな!  王様から発破をかけて頂いたんだ! 挑戦者達は燃えるよな! でも、燃えてるのは俺も同じだ! 皆もそうだよなぁ!?」

「「うぉおおおおっ!」」


(僕もこんな風に、場を引っ張っていけるようになりたいな。学んでいかないと)


 場所こそ違うかもしれないが、使う力は同じであると思う。一朝一夕では身に着けられないことは、重々承知している。だから、まずは真似ることから始めたい。そう、この闘技場は僕にとっての学びの場となるのだ。


「もう十分温まったよな、そろそろ登場して貰おうか……仮面の王に!」


 その言葉に、群衆がさらに湧き立つ。


「いよいよ、いよいよだぜ!」

「やったぁあああっ!」

「見えねぇ、立ってんじゃねぇよ!」


 興奮の上に、更なる興奮が乗っかっていく。この空間が引き裂かれてしまうのではないかと思うくらいの歓声。司会の彼は、それにも負けない大声でさらに場を盛り上げていく。


「闘技場が出来てから、ずっと頂点に君臨し続けている絶対王者! 仮面の下に隠された素顔を知る者は誰もいないが、強さは誰もが知っている! 生ける伝説、仮面の……王の登場だぁっ!」


 瞬間、空砲の音が鳴り響き、闘技場の壁から火が噴き上がる。さらに、それを合図として激しい音楽流れ始めた。そして、その音楽に乗りながら、ようやく一人の男性が姿を見せるのだった。

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