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僕は僕の影武者~亡失の復讐者編~  作者: みなみ 陽
第四十五章 決着
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君には君の道

―武蔵城自室 早朝―

 翌日、僕は勝負の結果をエースに報告した。すると、彼は手を叩いて心の奥底から嬉しそうに喜んでくれた。


「最高の成果だ。君なら出来るって思ってたよ!」

「導きのお陰です。なんとお礼を言えば良いものか……」

「いやいやいや……一番凄いの君だから。そういえば、その後に何か体に異変あったりする?」

「いえ、特に何も。あ、でも……」


 現状として何もないが、試練の最中に異変はあった。それは、目の違和感。物が二重に見えたり、痛みが走ったりした。たまたまと流すには、軽率過ぎるような気がした。


「破壊の龍の力を使った時、目に違和感があったんです」

「……何?」


 彼の顔から、笑顔がパッと消える。


「一瞬ですけど、痛みと複視が。力の使い過ぎでしょうか?」

「その通りだ。しかも、君は長い間、龍の力を使い続けた。その反動がない方が、凄いなって思ってた所だったんだ。龍の力の副作用が、ついに激しくなってきたということだろう。破壊の龍を宿す前には、なかったのかい? その瞳の色の変化以外には」

「視力が低下したこととかはあったんですけど、それは一時的なものでした。瞳の色に関しても、これはもう当たり前のこととして認識されちゃってるので。僕としても、特別困ったことはありませんでしたし……危機感というか不安感を覚えたのは、今回が初めてかもしれません」


 忌まわしき技術によって施された龍の力を宿してしまった者には、必ずと言っていいほど目に違和感が現れる。第三者から見てはっきり分かるものもあれば、当人にしか実感できないものまでそれぞれ差があるらしいが。


「君には、複数の龍の力が宿っている。元々、君の中にいた獣も複数の龍の力を組み合わせて出来たもの。これまでは、その絶妙なバランスが保たれていたことで影響は少なかったんだろう。けど、外部からの干渉や龍そのものを取り込んだことと力を使い過ぎたことで、完全に壊れてしまったんだろうと思う。まぁ、情報が少ないから正確なことは言えないけど」


 ようやく、龍の力を自分のものとしたと思っていたのに。結局、また僕はこの力に悩まされ続けることになってしまうのだろうか。いや、そんなはずはない。絶対に可能性はある。


(道はあったじゃないか。信じたその先に、僕の未来があったじゃないか。きっと、今回だって……)


「だから、巽君。これから、日々の健康記録をつけるようにして欲しい。で、それを面倒だろうけどこっちに送って欲しい。どんな形でもいいから。それを解析して、策を見つけようと思う」

「わ、分かりました。でも、そこまでやって貰えるなんて……いいんですか?」

「いいのよ。対策本部みたいなん作っちゃったし、君には与えられた恩もある。助けて貰ったのは、こっちなのさ。これくらいは当然。迷惑もかけちゃったし、責任はしっかりと取りたいと思ってる」

 

 僕一人では、どうにも出来ないだろう。けれど、頼もしい人が支えてくれるという。ならば、僕はその言葉に甘えようと思う。


「じゃあ、お願いします。でも、僕にも何か出来ませんかね? 貴方だって、龍の力を宿しているのにそれを何も感じさせないというか……」


 彼において、他のカラスとは違う部分が多過ぎて判別がつかない。見えないタイプのものならば、どうやって押し殺しているのか気になった。


「そうだねぇ。この赤い目の色は生まれつきのものだし、多分影響は外には出てないのかも。でも、昔は大変だったさ。ま、目のことなんか気にしてられないくらい他のことが辛かったからなぁ。それに、人生経験も豊富だし? 時間の流れとかが解決しちゃってくれたんだろうね。でも、それは流石に巽君には酷さ。君は呪いが解ければ、不死じゃなくなる。有限はそこまで迫ってる。時に解決させられない。だから……同じやり方じゃ駄目だ」

「そう、ですか……」


 自信があったからこそ、少しショックだった。面と向かって否定されて、平然としていられる方が変な話だ。


「フフ、前例があるからといって、同じやり方である必要なんてない。巽君には、巽君の道があるじゃん。国を守る為には、どうするべきかなんていっぱい考えてきたでしょ。それでいいのよ、それで」


 気遣わせてしまったのだろう、彼は少し柔らかい口調で言った。


(そうだな。まだ見誤ってしまう所だった。僕には、僕の道があるんだ。同じである必要なんて、これっぽっちもないんだ)

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