二人で
―精神世界 ?―
僕は、孤独だと思い込んでいた。王とはそういうものだし、馴れ合いもすべきではないと考えていた。でも、それは大きな間違いだった。
「僕らは、独りなんかじゃないんだよ。沢山の人達が、僕らのことを見てくれていたんだよ。だから、もう怖がる必要はない。もう、二度とこの手は離さないから」
微笑み、涙を流す彼を見つめる。
「どうして……そんなに優しく……?」
「優しくして貰えたら……とても温かい気持ちになれるだろう。皆に与えられたものを、僕は返していかなければならないんだ。その為には、君の力も必要。だから、信じて。僕のことを」
「怖くないの?」
潤んだ瞳には、不安が宿る。僕が味わってきた全ての不幸を、彼は身に染みて知っているから。
「怖くないと言ったら嘘になる。だけど、思うんだ。恐怖から逃げてばかりいたら、成長出来ない。向き合うことに意味があるんだって。その上で、打ち勝つことが必要なんだ。僕らは特殊な存在だ。こんな経験は、滅多に出来ない。それを生かさない手はないだろう?」
「何だか……しばらく見ない内に、頼もしくなったね?」
かつての僕では絶対にありえない発言に、彼は不思議そうに首を傾げた。
「色々あったんだ、本当に。それに、後ろばかり見ていてもしょうがないって気付いたんだ。どれだけ後悔しても、人生は一方通行さ。犯した罪は決して消えないけれど、贖うことならば出来る。僕の贖いは、この国の人々を守ること。だって、僕は王だから。後ろばかり見て、うじうじしている王様なんて面目も立たない。だから、僕は頑張るよ」
王という宿命からは、僕は逃れることは出来ない。それを無責任に放り投げれば、国は混乱に包まれることになるだろうから。それを悲観的に捉えることは、もうやめた。
ここで、僕が頑張れば――まだ遠い見ぬ世界で、まだ見ぬ子孫達が自分達で未来を掴み取れる国に変えることが出来るはず。僕は、その基盤を作るのだ。
「なんて、熱いんだろう。そうか、これが希望……」
彼の顔に笑顔が浮かんだ瞬間、灰色く重苦しい空間が弾けた。眩い、思わず目を細めてしまうような光が差し込む。
「僕にとって、大敵なはずなのに……どうしてだろう? どこからか力が湧いてくるような感じだ」
「希望とは、生きる源。当たり前のことだよ。僕は、ずっと君と一緒にいた。君は、僕を変えてくれるきっかけにもなった。だから、今度は僕が変えてみせるよ。負の感情ではなく、正の感情を糧と出来るように。まだまだ時間もあるし、素晴らしい協力者もいる。さぁ、共に行こう!」
僕が手を差し出すと、彼は力強く頷いた。
「……うん、信じるよ。君のこと、これからのことを。きっと、君なら出来る。僕も力になりたい」
「ありがとう」
そして、僕らは手を携えて光の向こうへと駆ける。
「僕らは変われる。一人でじゃない、二人でだ――」




