作戦を
―闘技場 夜中―
繰り出す攻撃のことごとくが、あっさりと弾かれた。
(やはり、防ぐか。ならば、なるべく同じ所を使わせよう)
幼い頃から磨き、鍛え積み上げてきた剣技。さらには、陸奥大臣との最近の鍛錬のお陰もあり、揺らぎのない自信が生まれた。
「どうしたの? その程度? 見え透いた攻撃だね。僕は君だよ。君の攻撃が分からないとでも思った? 誰よりも何よりも君を知ってるよ。ずっと君を見ていたんだから。やっぱり、弱いんだよ。これっぽっちも成長なんてしてない。諦めたらいい。得意技だろう。大丈夫だよ、このことを知る人はほとんどいない。エースさんにはいつもみたいに嘘をつこう? 上手く行かなかったって言えば、信じて貰えるさ……」
聞いているこっちが、恥ずかしくなるような言葉を平然と投げかけてくる。でも、それが僕だった。いつだって、悲観的で後ろばっかり見つめていた過去そのもの。受けとめきれない現実を、目を逸らすことで流そうとした。根本的な解決をしようとせず。
「駄目だ、そんなんじゃ駄目なんだ。逃げてばかりいては……前には進めない。ちょうど、今の君のように」
「はぁ……逃げるが勝ちって言葉を知らないの? 攻撃的になってもしょうがないよ」
「防御に徹し、相手が疲弊し始めた時を狙う。それは、決して間違いじゃない。正しい戦術だとも思う。だけど、それは相手を見極めなければ意味を成さない。それは、一つの可能性として……戦術の一つとして用意しておくべきものだ!」
彼の戦い方は、かつての僕のものだ。防御を主体として、消耗戦へと持ち込む。それを否定したりはしない。
けれど、それだけでは勝利の道は掴めない。外に出て知った。この世界にはいくらでも、それに耐え得ることの出来る人物がいるのだと。守り、逃げているだけでは通用しないのだ。
「強者になったつもり? 強者に揉まれて、自分も強くなったっていう錯覚に襲われているのかなぁ? まぁ、あるあるだよね。周りが強いと、自分もそう見えてくる。可哀相に。でも、情けないな。僕でありながら……本当に。まぁ、同じ僕としてのよしみで目を覚まさせてあげるさ。どっちが正しいかって分かるはずさ」
「そういう君は、いつまで眠っているつもりだ? うじうじうじうじと……本当、恥ずかしい。まぁ、少し前までの僕なんだけど!」
(やったことのある戦術だからこそ分かる。弱点が)
弱点はいくつかある。主だったものは後手に回ってしまうことと、攻撃を受けとめてばかりの剣に負担がかかってしまうことだ。
「偉そうに……君には、何も――」
「それは、やってみなきゃ分からない。そうだろう!?」
確かな自信をもって、僕は力いっぱいに剣を振り下ろした。彼が、受けとめることは分かりきっている。だから、叩きつけるイメージで。すると――。
「っ!? な、僕の剣が……」
蓄積されたダメージが爆発し、彼の剣の刃は砕け散ったのだった。




