僕らの関係
―ダイニング 夜―
「――知らなかった! まさか、二人が知り合いだったなんて!」
僕の隣に座るリアムは、クロエが用意したステーキをナイフとフォークで切りながらそう言った。あまり慣れていないようで、皿の上で肉が暴れている。
「そりゃそうでしょ。知ってたら、逆に怖いっていうか」
机を挟んでリアムの前にいるクロエは、片肘をついてそんな彼を見つめている。
「それもそうか! タミ、俺はもっともっともーっと! 君に興味を持ったよ」
「なんで? それ、嫌だな……」
同性に興味を持たれても、僕は嬉しいとは思わない。それに、リアムに今以上の興味を持たれてしまったら僕の未来が余計危うくなる。
「こんなお城みたいに大きなお家に綺麗な部屋、広ーい庭に門番! 豪華な食事を作ってくれる少女……でも、家族じゃないよね? 顔は全然に似てないし」
「えぇ」
「だとしたら、二人は一体どういう関係なの? 二人は一体何者なの?」
リアムは、興奮気味にそうまくし立てる。
「え? えっと……」
僕らの関係は口外すべきものではない。守る者と守られる者、故の同居関係。僕らは出会うまで、お互いの存在を知らなかった赤の他人。
それでも、僕はクロエを信用していた。一昨日までは。何かが怪しい。部屋に入った時に感じた匂いや赤い飲み物が忽然と消えたことを、不自然に嘘をついて隠すなんて。
すると、クロエは不自然に目線を逸らした。そう、それはまるであの日のように。
「私はね、タミ君の――使用人なの」
「使用人?」
「うん。私の家……貧しいから働かないと。でも、学校にも行きたくて……そうしたら、タミ君がここで住んで僕の身の回りの世話をしてくれたら、代わりに学費を出してくれるって」
「なるほど……つまり、二人は主従関係ってことかぁ」
「う、うん」
よくもまぁ、こんな嘘を考えたものだ。不自然な目線の動き以外は、完璧であるように思える。リアムがそれに気付いていない所を見ると、大丈夫そうだ。
「で……そんな主従関係の二人は普段は一緒に帰る関係でもあるって訳だね?」
「同じ学校に通ってるし。帰る時間は、毎日ほとんど一緒なの」
そう、不自然なくらい一致している。待ち合わせている訳でもないのに、僕が一人で帰る時は校門前にいる。そうでない時は、こっそりと後をつける。
しかし、今回は人がいるのに姿を見せた。僕が嘘をつけずに困っていた時に。彼女は、守る者としての使命を果たした。
「こう言っちゃあ、あれだけど……主従関係ぽくないよね。堅苦しくないっていうか、友達みたいな感じで。タミ、君がそうしているのかい?」
「そ、そうだね。跪かれたりしたらたまったもんじゃないからさ……アハハ。そ、そうなんだよ!」
事実、僕は跪かれるのは嫌いだ。好きだった頃もあるが、それは僕の本来の意思じゃない。
「そっかぁ〜! 奥が深い関係だね! なるほどなぁ、だからかぁ!」
リアムは、持っていたナイフとフォークを机に置いた。
(なんだ!? 今度は一体!)
次なる衝撃に備える為、僕は身構えた。




